(18禁)太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第62話 息をしてくれ
芝生の上、夕暮れの空がまだ僅かに橙を残している。ふたりの間は言葉よりも世界の静寂が支配していた。
浅荷の手が俺の胸から少し離れて背中へ滑った。
布越しの感触が揺らぎながらもそこに自身がいることを伝えてくる。
「……ごめん、言ってもいい?」
驚いたのは俺だった。浅荷の声はいつもより少し低かった。
静かな祈りのようにも感じられた。
「もちろん。なにを?」
「触ってもいい?ここだけ」
そう言って浅荷は俺の背中をそっと押した。
その瞬間、俺は迷わず彼女の腰を抱いた。
柔らかく、でもぎこちなくない。
布の向こうの肌には触れていない。けどその輪郭をはっきり感じている。
「……大丈夫?」
「うん」
「怖いならやめていいよ」
「……怖いかな……気もする……けど……」
間を置いて言葉が戻ってきた。
「普通逆なんだろうな~~~……と思った」
ふたりは動かずにもどる。浅荷は、はは、そうだなみたいなことを言った気がするんだけど……きちんと覚えていないのはこの暑さのせいか。今は夏だっけ。俺達は上着をきて待ち合わせして、モールに出かけたんじゃなかったか……
そして俺はまだ浅荷の上着の上に腰を下ろしているのではなかったか……
浅荷の指が俺の肩を通り、布越しに静かに撫でた。
そこに、淡く込められた問いかけがあった。
「……あたしの……いい?」
「うん」
少しの間を置いて俺は首を返した。
その視線は浅荷の目と合った。
胸の奥が、軽く突き上げられるようだった。
浅荷は上体を少し起こして俺の腰に片手をかけた。
距離は変わらない。
「次は……あたし、もっと触ってみたい」
「…俺も触ってみたい」
そこでふたりの身体は微かに近づいた。
手はまだ服の上だったが、胸のあたり、腕の内側、腰へと触れが広がる。
肌と布を隔てたままでも、互いに息づかいが変わるのがわかった。
触れられているのか触れているのか、境界がきらきらした感覚に思えた。
「……もっと行っていい?」
埋め込まれるような、こわばった声だった。でもそこには覚悟が見えた。
俺は息を深く吸って浅荷の腰へそっと力を込めた。
言葉を紡ぐ代わりに指先で伝える。
「……うん」
その一言だけでこれから何が起こるかははっきりしていた。
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