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(18禁)太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第66話 皮膚呼吸


静かな時間の中で深く繋がっている。身体の一部が触れ合い、音もなく汗の温度が伝わってくる。
でも、不思議なほど優雅とは言えないこの空気がどこか正しい居場所のようにも思えてくる。

浅荷の髪が胸元から流れて肩によせられていた。俺は指でゆっくり髪の毛をすくい上げる。毛先が、肌に触れてそっと揺れる。ほんのわずかな動きだけど胸の奥が震えた。

「……虫、すごいよね」

浅荷が囁くようでありながら熱を帯びた小さな声でつぶやいた。視線はまだ遠くにある。俺に髪を触られているのに、それに触れられないことが意味不明に俺を興奮させた。まるで俺が永遠に浅荷の髪を触ることが許可されたみたいだった。

そう思うと浅荷の中で自分が物理的に大きくなるのを感じた。

「んっ」

おそらく自分の中に入っているものが急に質量を変えたことに対して、浅荷が反応した。もちろん俺はもっと興奮することになり、逆に落ち着かないといけないと思った。

浅荷の言う通り、虫の声と風で草がザザッと揺れる音、俺の足や腰が浅荷のそこに必死に打ち付けられる音が混じっていて、全体が公園のBGMだった。

「うん」

俺はつぶやき返した。何か話す勇気はなかった。気が利いたことを返すなんてそんなベテランじゃないんだから……と
むしろ沈黙と音の堤を崩したくなかった。

「こんなことしてるのに……
……誰にも見られてないのかもって思うと、
……ちょっと……変な感じ」

その言葉も、ひとつひとつを病気の子どもが一生懸命紡ぐように出したような小さな吐息みたいだった。

「見られたくはないなぁ……」
変な返事しかできなかった。
目をつぶって、ふたりで重なったままの姿勢を続けた。草の匂い、潮の気配、暑さが夜に変わっていく空気がある。

「うん。誰にも……言えない」
浅荷が呟く。
声には恥ずかしさはあるんだろうけど、不思議な平静も混ざっていた。

「俺も」
俺は短く返した。
言葉は重ねず、混ぜず、ただその場に静かに置いたまま。

「ねえ」
浅荷が、わずかに身を寄せる。
腕が、ゆっくり俺の背中へ滑り込んでくる。
指先が、骨のあたりを探るように触れていた。

風は変わらず、薄暗い空気を揺らしている。
もはや月も星も見えない。けどその暗がりが、むしろ輪郭を浮き立たせていた。

沈黙が長く続いた。
言葉なく、呼吸や心拍、衣擦れの音や草の匂いだけがふたりを包み込んで漏れ出る。

視線は互いではなく、遠くの空もしくは地面に向いていた。俺は浅荷のジャージの縫い目ばかり見ていた気がする。
でも互いの存在は肌で、温度で、肌理きめの揺れで、確かに感じ取れている。

突然、草の上を這う小さな虫の羽音が響いた。
風の音と混ざって、すごく大きな音に感じられた。
俺はほんの一呼吸だけ停止し、その後指先で浅荷の背中を軽くなぞった。
指の圧はごくわずかだった。

浅荷の呼吸が、わずかに整う。そして彼女の声がひそやかに漏れた。

「なんだか、時間が止まってるみたい……」

俺も言いかけたが、飲み込んだ。足先が芝の上に触れている。
その感覚を確かめるように俺は体重をわずかに移した。
浅荷も何かを感じ取るように、肩を少しだけずらした。
それでも身体は離れず、じっとそのままだった。

浅荷が俺の前へ頭を少し移動させた。
その動きだけで世界がほんの数ミリ広がったような気がした。
目をつぶっている。顔の向きもかわらない。

俺はそっと呼吸を合わせて身を委ねた。ただその場にいるだけでいい、と思うような感覚だった。

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