【モンゴル】住所がないゲルに向かって草原を4時間走った
ガイドさんがスマホで電話している。「川が見えた?じゃあその近くの轍を通って」。……いや、それで着けるの?
モンゴル旅行3日目。この日から2泊3日で、草原の遊牧民のゲルにホームステイしてきました。
ウランバートルから南西に約270km。目的地には住所がない。Googleマップで検索しても出てこない。「本当にたどり着けるのか?」という不安を抱えたまま、草原に向かって走り出した朝の話です。
遊牧民のゲルに泊まりたかった
今回参加したのは、SHINE ZUUCH TRAVELという現地旅行会社の「遊牧民ホームステイ・ゲル2泊3日間」というツアーです。
このツアーを選んだ理由はシンプルで、遊牧民のゲルに泊まって、彼らの暮らしを実際に体験してみたかったから。動物と触れ合いたかったし、草原のど真ん中で寝てみたかった。
出発前にネットでいろいろ調べたんですが、SHINE ZUUCH TRAVELは評価が良さそうだった。とはいえ、他の会社も含めて日本語の口コミがほとんどないので、正直賭けでした。行ってみないとわからない。
ひとつ助かったのは、日本円で銀行振込ができたこと。海外の旅行会社に送金するのってハードル高いんですが、日本の銀行口座に振り込めばOKだったので楽でした。料金は1名70,000円(現在は85,000円に値上げ)。日本語ガイドが3日間ずっと一緒についてくれます。
ちなみにこのツアー、申し込む前に知りたかったこと(料金の内訳、持ち物、正直微妙だったところまで)を別の記事に全部まとめています。検討中の人はこちらもどうぞ。
朝9時、ガイドがホテルに迎えに来た
ツアー当日の朝。Corporate Hotelのロビーで待っていると、日本語が話せるモンゴル人のガイドさんが迎えに来てくれました。
個人で申し込んだので、参加者は僕ひとり。ガイドさんが運転も兼ねていて、2人旅です。
車に乗り込んで、ウランバートルを出発。ここからブルドという地域にある遊牧民のゲルまで、約270km。所要時間は約4時間。
4時間。東京から名古屋くらいの距離を、草原の中を走り続けるわけです。
4時間、景色が変わらない
最初のうちはウランバートル郊外の道路を走っていて、まだ普通のドライブっぽかった。でも30分もすると、窓の外が草原しかなくなる。

すごい景色なんですよ。でも、すごい景色が4時間ずっと続くと、だんだん感覚がおかしくなってくる。「さっきもこの景色見たな」「いま進んでるのかな」みたいな気持ちになる。

ガイドさんは慣れたもので、車内でモンゴルの歴史とか遊牧民の暮らしについていろいろ話してくれました。日本語がとても上手で、聞き取りやすい。この3日間ずっと一緒なので、移動中も退屈しなかったのはありがたかった。
「川が見えたら、その近くの轍を通って来い」
4時間ほど走ったあたりで、ガイドさんがスマホを取り出して電話を始めました。モンゴル語なので何を話してるかはわからない。
電話を切ったガイドさんが言う。「もうすぐです。川が見えたら、その近くの轍を通ってくださいって言ってます」。
……轍(わだち)?
そう、目的地の遊牧民のゲルには住所がない。当たり前ですよね。草原のど真ん中に住んでるんだから、「○○市○○町○丁目」みたいな住所があるわけがない。ナビに入力する住所自体が存在しない。
だから、近くまで来たら電話して、「あのへんの轍を通って来い」という口頭の道案内で最後の数kmを進む。これがモンゴルの草原での「道案内」です。
しかも、窓の外を見ても景色が全部同じ。草原。草原。草原。どこに川があるのかもわからないし、轍なんてそこら中にある。本当にたどり着けるのかめちゃくちゃ不安でした。
でもガイドさんは黙々と運転して、「大丈夫ですよ」と笑っている。この人にとっては日常なんだろうな。
草原の中に、白い点が見えた
しばらく走ると、遠くに白い点がいくつか見えてきました。

あれだ。あれが今日から2泊する遊牧民の家。
近づくにつれてゲルの形がはっきりしてきて、その周りに柵や小屋があるのも見えてくる。車、ソーラーパネル、家畜の囲い。「暮らし」がそこにある感じがした。

ゲルが、思ったよりちゃんとしている
到着。車を降りると、風の音しか聞こえない。本当に静か。

中に入って驚きました。広い。そしてきれい。

正直に言うと、もっとサバイバルな環境を想像してました。テントみたいなやつに寝袋で寝るのかなと。全然違った。
ソファがあって、装飾されたタンスがあって、絨毯が敷いてある。日本の下手なグランピング施設より広いし、ちゃんと「家」として機能してる。ここで家族が暮らしてるんだから、当然といえば当然なんですけどね。

鏡の横に家族の写真がずらっと貼ってあるのが印象的でした。ここは観光施設じゃなくて、誰かの家なんだ。その家にお邪魔している。そう思うと、ちょっと背筋が伸びる。
ミルクティーとチーズで歓迎された
ゲルに入ると、遊牧民の家族が出迎えてくれました。お父さんがいて、おばあちゃんがいて、小さい女の子もいる。
ガイドさんが家族を紹介してくれて、まず出されたのがモンゴルのミルクティー。

日本のミルクティーを想像して飲むと「ん?」ってなります。甘くない。ほんのり塩味。最初は不思議な味だなと思ったけど、慣れるとこれがけっこうおいしい。身体が温まる。
テーブルにはチーズとパンも出してくれました。


これがモンゴル流の「ようこそ」なんですね。言葉は通じないけど、食べ物を出して迎えてくれるあたたかさは伝わる。ガイドさんが間に入って通訳してくれるので、「日本から来ました」「ゲルに泊まるのが楽しみでした」くらいの会話はできました。
夕食はマトンとじゃがいものご飯
この日の夕食は、遊牧民の家で作ってもらったマトン肉とじゃがいもの煮込みをご飯にかけたもの。

味付けはシンプルで、塩がベース。マトンの旨味とじゃがいもの甘さがいい感じに合ってます。モンゴル料理は基本的にマトン+塩なんですが、このシンプルさが草原の暮らしにはしっくりくる。
量もたっぷりで、おなかいっぱいになりました。
草原の夜は、静かすぎて怖い
食事の後、外に出てみました。
日が沈みかけていて、草原がオレンジ色に染まっている。360度、人工物がほとんど見えない。聞こえるのは風の音と、遠くの家畜の鳴き声だけ。
東京では絶対に味わえない静けさ。きれいだな、と思うと同時に、ちょっと怖い。この静けさの中で2泊するのか、と。シャワーもないし、トイレも遠い。スマホの電波はソーラーパネルのおかげで充電はできるけど、Wi-Fiはもちろんない。
でも、不思議と「来てよかった」と思いました。こういう場所に身を置く機会って、なかなかない。明日から遊牧民の暮らしを体験できると思うと、不安よりもワクワクのほうが大きかった。
次回は、遊牧民の暮らしに密着した話です。iPhoneを持っている遊牧民、ドローンで羊を探すお父さん、そして300匹の子羊と子山羊。モンゴルの遊牧は「昔の暮らし」じゃなかった。
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モンゴル旅行を考えている人へ。
ツアーの正直なレビューと、飛行機・お金・持ち物まで全部まとめた攻略ノートも書いています。僕が出発前に読みたかったやつです。
