長年の願いがかなった3月だったと気づいたーーー「二人三番叟・MANSAIボレロ」レポート
皆様、今日もお疲れ様ですm(__)m
午前中は曇天で雨もパラパラ降りましたが、午後からはお天気になった千葉県松戸市です。
さて、先週の金曜日、つまり3月20日の午後、千葉県文化会館で開催された「二人三番叟・MANSAIボレロ」を聴いて(観て)きました。そのレポートをしようと思います。
**********************************
「な、なんですとぉぉぉ??!!!」
1月の下旬、偶然Twitterを観ていて、私は叫んでしまった。千葉交響楽団のツイートにびっくりしたためだ。そこには、3月20に千葉県文化会館で、午後2時から狂言師・野村萬斎さんがご子息をはじめとした一団を率いて、公演をなさるという情報があった。もちろんこれだけなら、たいして驚きはしない。けれど、ここに最愛のマエストロ・山下一史率いる千葉交響楽団が共演するとあっては、放ってはおけない。しかもこういう公演の料金は、結構なお値段がするのが常だけれど、今回は¥3,000だという。千葉県からの補助金が出ているらしい。行くことを即決した私である。
今回は前半が、萬斎さんのご子息の狂言師・野村裕基さんと、歌舞伎俳優の中村鷹之資さんの「二人三番叟」と長唄素演奏「勧進帳」。後半が山下&千葉響の演奏で、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」と「マ・メール・ロワ」の2曲の演奏。そうしてメインの「MANSAIボレロ」では、萬斎さんが山下&千葉響の演奏で「ボレロ」を踊るという構成だった。
私はかつて、夢枕獏の小説「陰陽師」のファンだった。この作品を映画にした際、主役の安倍晴明役を演じられたのが、萬斎さん。演技も原作の清明がそのまま表れたかのような見事なものだったけれど、今でも私の記憶に鮮明に残っているのは、エンドロールでの萬斎さんの妖艶な舞だった。音楽に合わせて即興で舞われた、と後で知ったが、その美しさにすっかり魅了されてしまった。能・狂言には全く疎い私だけれど、それ以来萬斎さんの舞をライヴで観たい! と、願っても来たのだった。今回その願いが、山下&千葉響との共演という、私には最高の形で実現したのだ。
前半が邦楽の演奏だということで、舞台が能・狂言のそれになっていた。山下&千葉響の演奏会でしかこのホールに来たことがない私には、なかなか新鮮でもあった。
演奏会のMCは、萬斎さんがお勤めになった。ラジオでDJもなさっているので、話しぶりもユーモアもあって達者だったし、後半冒頭での山下さんとのクロストークも、山下さんから話を引き出すのもお上手だったし、山下&千葉響への敬意も感じられて、小気味よかった。なかなかの聞き上手でもいらっしゃる。過不足ないMCというものを、久しぶりに聴いた気がする。
いろいろ思うことはあったけれど、今回の眼目はやはり「MANSAIボレロ」。この演目は、萬斎さんが15年前、東日本大震災発災に伴って、被災された方々への鎮魂と慰藉を願って振り付けられたものだそうな。千葉県も15年前津波が発生して、亡くなった方もいらっしゃるし今も行方の分からない方々もおられる被災地だ。この公演を企画されたのは邦楽の囃子方で大鼓を担当された望月太左乃さん。彼女は千葉県のご出身で、東京藝術大学・大学院を通じて萬斎さんの教えを受けたご縁があるのだそうで、「ぜひ、萬斎先生の”ボレロ”を千葉で!」と願って、萬斎さんに依頼されたのだそうだ。千葉県の被災された方々への鎮魂と復興を願って。加えて、千葉県には千葉響があるのだから、と。
冒頭、青く照らされた萬斎さんがしゃがみこんでいて動かない。これはどうやら震災で亡くなられた方々を表現しているのらしい。「ボレロ」そのものが、スネアドラム(小太鼓)の小さな音から始まるのだけれど、命の再生を表現するために、まずは”死”から出発する趣向のようだ。
「ボレロ」はだんだんに楽器が演奏に加わって、ラストでは爆発する大きなうねりになるが、萬斎さんの舞もそうした演奏に呼応して、次第に所作が大きく激しくなってゆく。舞台いっぱい使って踊っていらっしゃるその様から目が離せない。その様は生命の謳歌のようでもあり、エネルギーの噴出でもある。鮮やかな装束をまとい、体重を感じさせないその舞と動きにひたすら見入るばかりだ。萬斎さんお一人で、舞台を席巻していたのだった。
後半の舞台には、サーキットトレーニングに使いそうな、三角形の高さがある台が置かれていた。何に使うのかな、と思っていたけれど、萬斎さんはラストのシーンで急峻な角度がある台を駆け上ったかと思うと、演奏の終了直前で、台から飛び降りたのだった!
客席から「えええええ??!!!」と声が上がる。私も上げた一人ではあったけれど、ひょいと客席の左側に目をやると、スタンディングオベーションをなさっている方々が、少なくなかった。私は感動が大きいと、腰を抜かしてその場に座り込んでしまうタイプだけれど、じっとしていられなくて、立ち上がる方たちもおられるのでしょうね。
この「MANSAIボレロ」は言ってみれば、オペラのような感じでもあって、山下&千葉響には照明が当たらない。オペラのオーケストラピットで使われる、ライトが付いた譜面台を使っての演奏だった。かなり演奏は大変だったと想像するが、そんな不自由を感じさせない見事な演奏だった。コンサートマスターが神谷未穂さんだったことも大きいかもしれない。神谷さんはオペラのご経験も豊富な方なので(山下さんもですけれどね)。
萬斎さんに集中しながら、黒子と化した山下&千葉響にも時々眼を向ける。このコンビでの「ボレロ」も何度も聴いたけれど、安定の名演だったなぁと思う。そうして、今回の状況を楽々と乗り越えて、演奏しきった両者の姿に、私は確信したのだった。
「山下&千葉響でオペラが観られる日は、そう遠くない!」
それくらい成長したんだと、実感したのだった。ファンとして幸せな実感でもあった。
終演後、帰途につきながらふと思った。
「3月は、念願のかなった月になったなぁ」
3月7日の仙台での、大竹しのぶさんの歌。そうして今回の野村萬斎さんの「ボレロ」。大竹さんも萬斎さんも、長い間ライヴで接したいと願ってきた方たち。その方々の公演を、最愛のマエストロの指揮で聴く・観ることができた私は相当な幸せ者だと、心地よい疲労に包まれつつ帰りの電車に揺られた私である。
ここまでお付き合いくださったあなたに、心から感謝いたします。
ありがとうございますm(__)m❤💛
寒暖差の大きな折です。くれぐれもご自愛くださいませm(__)m
