私のときめきを返してえ! ~溺愛されていると思ったのに~
#20250905-578
2025年9月5日(金)
台風15号の影響により、朝から雨が降っている。
曜日問わず5時起床なのに、スマートフォンのアラームを切り、二度寝してしまった。お昼寝ならともかく、私は朝の二度寝は滅多にしない。
5時49分起床。
手首にフィットネストラッカーのFitbitをつけているので、分単位で就寝と起床時刻がわかる。
ノコ(娘小6)の起床時刻はまだだ。
気圧のせいだろうか、瞼も頭も重い。目は開かないし、頭が枕から離れない。
5時半にはじまるオンライン・ヨガにリアルタイム参加できなかったのが痛手といえば痛手だが、だれも困らないので寝坊と呼ぶほどの寝坊ではない。
なんとか身を起こし、もぬけの殻の隣のベッドにぼんやりと目を向ける。
階下に人の気配がない。
早朝出勤のむーくん(夫)は、とうに起きて出社したところか。雨で今日は自転車通勤ができない。電車通勤だと時間がかかるため、5時半には家を出たはずだ。
——あれ。
うっすらと頭にやわらかな感触がよみがえった。
——ん。
寝ているあいだに、頭をなでられた気がする。
ごくたまに、夢見が悪くてうなされることがある。叫びたいのにうまく叫べなくて、息が詰まり、胸が苦しくなり、絶叫とはほど遠い中途半端な声が飛び出る。
そんなとき、寝ていてもむーくんは気付き、頭をなでてくれる。夢はまだリアルで、説明できそうなのに、言葉にしようとすると夢ならではの矛盾にあふれ、どういえばいいかわからなくなる。
波のようにむーくんの手は私の頭を往復し、私はいつも簡単に眠りに落ちる。
やかんのお湯が沸くのを待ちながら、むーくんにLINEを送る。
昨夜、うなされていたか。頭をなでられた記憶がある、と。
すぐに返信が届いた。
うなされてはいなかったけどね。
なでなではした。
——うなされていないのに、寝ている私の頭をなでていた!
たまらなく、くすぐったくて、私は身をよじりながら、ペンギンが照れてハートを飛ばすスタンプを送った。既読がつかない。仕事がはじまったのだろう。
——むーくんったら。
窓の向こうでは突然雨足が強くなり、雨音がひときわ大きくなった。私はひとり照れまくる。
それとも、閉経を告げられた夜だったから、なんともないようで私の様子が違ったのだろうか。なにはともあれ、うなされていないのに、妻の頭をなでる夫の「愛」に顔がにやけてしまう。
ふふふ。
今日の勤務時間は長く、むーくんが帰宅したのは21時過ぎだった。
まだ起きているノコに早く寝るよう声を掛けながら、むーくんの夕飯の用意をする。
むーくんはTVのリモコンを手に、ノコを見たまま静止している。ここでTVをつけると、ノコが画面に没頭してしまい、動かなくなるので、居間のドアが閉まるまでリモコンのスイッチを押せないのだ。
「そうだ」
TVがつけられないのもあってか、むーくんがやおら口を開いた。
「頭、なでたのはね」
ノコが身体を揺らして歌いながら、「おやすみ」と居間のドアを閉めた。
私は今朝のやりとりを思い出し、むーくんの手の感触を思い出し、胸がときめいた。
「はっちゃんがイビキかいていたから。どうやったら止まるかなぁって試してみた」
——はああああ??
私の知らないところでのむーくんの溺愛のようなふるまいに少女漫画よろしく心をたかならせていたのに、イビキだああああああ!
照れくささがひっくり返った。
「ドキドキ」が「ぎゃああああ」という絶叫に。
私はそうイビキをかくほうではない(らしい)。ただアレルギー性の鼻炎持ちなので、薬は飲んでいても時折鼻の調子が悪くなる。鼻の通りが悪いと、さすがにどうしようもない。
——お願い、私のときめきを返して。
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