いきなり告げられた「閉経」に戸惑っているような、いないような。
#20250904-577
2025年9月4日(木)
ここ3年、私は婦人科の薬で、生理を止めていた。
長いこと、重い生理痛とそれにともなう不調に悩んでいた。
生理期間中はもちろん、排卵日あたりから生理周期の終わりまでの約半月も身体が痛み、鎮痛剤が手離せなかった。
個人病院の婦人科から総合病院の婦人科まで、受診したが、子宮内膜症の可能性が高いという診断がおりたものの、最終的には「生理を止める」以外選択肢がなかった。
特に右肩が痛み、息をするのも苦しく、鎮痛剤が切れると寝ていても痛みで飛び起きるほどだった。月経随伴性気胸の疑いもあったが、一番痛い時期に検査をしないとわからないらしく、痛みで動けず病院にたどりつけなかった。
生理を止める決心がつかなかったのは、子どもがほしかったのもある。
またその薬を飲むことで楽になればいいが、体質に合う/合わないがあると聞くと、未知の不調より馴染みの不調のほうが対処しやすく感じられた。
だが、不妊治療をやめ、里親となり、委託された里子との生活がはじまると、この不調を抱えたまま子育てすることが厳しくなった。
幼稚園年長児で我が家にきたノコは、施設で育ったため「体調の悪い大人」を見たことがなかった。職員や保育士は具合が悪ければ欠勤できるのだ。
寝ていたくてもノコは3分ももたず、「ママママ、つまんない」「ママママ、○○したい」がはじまり、しまいには「私のお世話はだれがするのよッ!」となる。
高熱が出たときにはレスパイト制度を利用したが、毎月やってくる生理の度にノコを預けることは難しかった。
そして、なにより私自身が月の半分も痛いことに我慢ができなくなった。
なんたる時間の損失!
この不調がなければ、もっとやりたいことができるのに!
もっとできることがあるのに!
生活の質を向上させるぞ!
その第一歩が諦めていた婦人科通いの復活だった。
医学も数年経てば変わる。違う結果が出るかもしれない。そして、長年渋っていた生理を止めることも医師に提案されたら挑戦することにした。
診察結果、やはり生理周期と関連して痛みがあるため、生理を止めてみるのが問題解決への近道であるとのこと。それで痛みがなくなるのであれば——右肩および右半身の痛みの原因はやはりわからなかったが——生活が改善されるのではないか、といわれた。
生理を止めるには、種類はあれど低用量ピル一択だと思っていた。
ところが40歳を過ぎるとピルは使えず、ジエノゲスト(ディナゲスト)を処方された。
ジエノゲストは医師からの説明があった通り、不正出血という副作用はあったが、ナプキンは使うものの少量であったし、なにより痛みが消えた。
人生の半分以上つきあっていたあの痛みがなくなったのは、驚きだった。
常に1日2回服用せねばならないという煩わしさはあったが、痛みのない生活を思えば手間に入らなかった。
痛みのない生活のなんて素晴らしいことか!
生理周期を気にしてスケジュールを組む必要もなくなった。
なんでもっと早く服用しなかったのだろうと悔やんだが、妊娠を諦めることができなかったのだから仕方がない。
薬の処方箋を出してもらうため、2ヶ月ごと通院する。
定期的に血液検査をし、あるホルモン数値になったら服用をやめる。それは閉経を意味する。
今日は血液検査の日だった。
呼ばれて診察室に入ると、医師が私の閉経を告げた。
こんなに突然訪れるのかと驚いた。今、私はどの段階にいて、ジエノゲストの服用をやめたら更年期障害が訪れるのか心配になった。
医師は、絶対ではないが、ジエノゲストを服用している患者は更年期障害が軽いように感じるといった。あくまで医師の経験と肌感覚によるが、おそらくホルモン数値が上がったり下がったりと波にならず、おだやかに閉経の数値までいくからかもしれない。
「もう飲まなくていいですよ。更年期障害が出たら、またいらしてください」
朝晩、朝晩と欠かさず飲んでいた薬を飲まなくていい。スマートフォンのアラーム機能を利用していたが、飲み忘れたらいけないという緊張感から解放される。
定期的に都心までの通院がなくなる。その時間と交通費がかからなくなる。
ジェネリック薬品を使っていたとはいえ、薬代もなくなる。
精神面、時間、金銭面、どれをとっても負担が減り、いいことばかりなのに、ぽっかりと胸に大きな大きな穴があいたようだ。
——閉経しちゃった。
昨日が今日になっただけで、年が明け、大晦日だのお正月だのいうくらい、私自身の「なに」が変わったわけでもないが、衝撃的であり、同時に衝撃的でなかった。
本来ならホルモン値が波となり、さまざまな変化が心身のあちこちに現れた先にたどりつく「閉経」がジエノゲストのおかげか、あまりにもあっさりと着いてしまった。
いや、これから、服用をストップしてからこそが「変化」かもしれない。
まだ自分の身体の様子がわからない私は、すっきりしたとも淋しいとも嬉しいとも、なんともいえない中途半端ななかにいる。
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