#447[雑記]完璧じゃない優しさを、あなたへ
鏡に映った顔は、無精髭と痩けた頬に、
夜の孤独がそのまま刻まれていた。
空のカップを前にしたとき、
胸の奥に「コトリ」と小さな石が転がるのを感じた。
その冷たい感覚は、器と温もりを失う恐怖が言葉よりも先に身体を支配する。未来の選択肢が、一緒に朝を迎える可能性さえも消していく気がした。
──夜更けに目が覚めた僕は、白いカップへ白湯を注ぎ、もう一度ポットに湯を沸かす。立ち上る湯気を眺めていると、心の迷いまで一緒に引き上げられていくようで、しばらくその揺れに見入ってしまった──。
「真央。カップとお湯はあるけれど紅茶がないのよ」
その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた糸が緩み、少しだけ息をするのが楽になった。その瞬間、湯気がそっと、柔らかに広がっていった。
完璧ではないと認めるその言葉が、むしろ嘘をつかない証拠に思えた。
ティーカップは僕、お湯は君。
茶葉は、誰もが簡単には持てない『無条件の愛』
──それでも器と温もりがあれば十分だ。
胸の中のざわめきは、少しだけ静かになった。
欠けた優しさでも、それを受け取ってもらえること。
それが、僕にとっての救いになる。
僕が本当に怖かったのは、君が突然、カップもお湯も持って消えてしまうことだった。
隣に座っていてくれるだけで、不安は半分以上消えていく。
「茶葉がない」という言葉は、欠陥ではなく、むしろ「疲れているんだ」と伝えるサインだったのかもしれない。そう思えば、「じゃあ今日は僕が注ぐ番だ」と自然と言える気がする。
──ふいに、空のカップを前に湯気も立たない夜を想像した。
完璧な愛を差し出すことよりも、
互いに温め合うことの方がずっと大切だ。
白い湯気は、心の迷いを少しずつ溶かしていく。
器と温もりがあれば、茶葉がなくても夜は静かに満ちていく。
優しさは、完璧である必要はない。
欠けたままでも、そこにあれば十分だ。
けれど僕はまだ、
器と温もりを失う恐怖から抜け出せそうにない。
だからこそ、欠けた優しさでも渡したいと思う。
もし君がそれを受け取ってくれるなら、
僕はようやく「ここにいていい」と信じられそうだけれど……。
恐れは消えないまま、夜に溶けていく。
そして僕の手には、欠けた優しさだけが残っている──。

<了, 約 890 字, 全文 約 1,100 字>
今日のお話と以降はこの小説の原稿を掲載予定です。
歌作品はこちらです⇨ Akari_Records
おまけ
今日は歌を出そうと思いましたが、語尾が決まらずボサノバにならなくて(昭和歌謡曲か、普通のバラード😣)できた、かな?🙂
シリーズ作品
煮詰まったり、揺れたりしながら書いています。
◼️11/1に書いた記事が気に入って、続きを書いています。
▼「B面」「桜まで待ってる」と同時期に生まれた、もうひとつの物語
傷つくことよりも、愛を失うほうが怖かった──。
🎼 バックナンバー 🎹

それではまた、次の記事でお会いしましょう🌟
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