#519_手紙_大人になった娘を叱る
──あなたが見つめる天井は、今、どんな模様ですか。
ことちゃん。今日はどうしていますか。
あれから8年。どうしているかと思っていました。
──あなたのお誕生が、どれほど震えるような救いだったか。
深夜に帰宅してドアを開けた瞬間、
風に舞った一枚のハガキが、命の芽を知らせてくれました。
お母さんと出会った時、可憐な姿と勇敢な生き方に惹かれました。
不登校、受験、そして彼、お父さんのこと。
誰にも言えない重さを抱えていたことを、打ち明けてくれました。
──そして、あなたが産まれた日。
それからたった3年と、あなたが成人してから気づきました。
モノクロ1色で描かれた大樹のイラストに、新婚の2人の名前。
そして、あなたの名前が添えてありました。
その絵を見て、あなたの名前の由来を想像したのです。
どんな子かな。
長期出張先で初めて会った日。
もっと早くに抱きたいと悔いました。
2歳のあなたに差しあげたビーズの飾りをずっと持っていてくれたこと。
お母さんの真似をしてボールペンで顔にたくさん線を描いたこと。
名前の由来はそれほど深くなかったこと。
お母さんと3人で大笑いましたね。
あなたも、あの若さで抱えていた重さを思い出します。
もし今、静かな暗闇の中にいるのだとしたら。
期待の重圧を一身に背負って、力尽きてしまってはいないか。
目の眩むような光の中にいるように見えてしまうあなた。
晴れ晴れとした本当の笑顔を、ずっと待っていました。
このお手紙は、いつか、どこかで、疲れ果てたとき。
あなたの魂が、ここに辿り着いてくれることを願っています。
この春に医学部を卒業するのでしょうか。
どこで何をしていても、
あなたが私の「娘」であることは変わりません。
また気軽にお手紙してくださいね。
あなたの心にも、そっと手を当てて、木の鼓動を感じたら、
降りてきて、あなたの心が喜ぶ何かを一緒に探しにいこうね。
<了, 約 740 字>

あとがき
ルノルマンカード『木』を物語にしました🙂
誰かを思い出しながら読んでいただけたなら、それだけでうれしいです。
(ご参考)
エッセイ、日記の中間から雑記、小説へ。
連載の習慣の原点となった月でした。
作詞を通して五感に集中、小説、エッセイ、詩、歌詞など。
・・・
手紙
海の色の優しさ

▶ほかの記事をお探しですか?(記事検索)
すべての記事:人気、急上昇、新着、定番など
いいなと思ったら応援しよう!
スキ、コメントが1番うれしいです。私の記事を元にあなたの記事を書いてもらうのも大歓迎!心が動く言葉はありましたか?ご感想お待ちしています😊