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アカネサス構想シリーズ|第97回【テラスクラブ 68室のホテル】──「言われる前に動く」工場をつくる

こんにちは、株式会社アカネサス代表の北條竜太郎です。

本シリーズも最終回です。

前回は、
沖縄の「テラスクラブ」で
私が体験した6つのサービスと、

それを可能にする
「観察・共有・判断」の3つの能力について
お話ししました。

【68室のホテルが教える「先読み」の技術】──なぜ68室のホテルが世界ブランドに勝てるのか

今日は、
この構造が日本の旅館と共通していること、
そして食品製造業への応用についてお伝えします。



◆ 日本の旅館と同じ構造

実はこの構造、
どこかで見たことがないでしょうか。

日本の旅館です。

女将が客の顔を覚え、
好みを把握し、
言われる前に動く。

部屋に通されたとき、
前回苦手だと言った食材が
すでに外されている。

リッツやフォーシーズンズは
「システム」でサービスを作ります。

マニュアルや研修があり、
チェックリストがある。

テラスクラブは
「人」の連携で
サービスを作っているのです。

これは旅館の女将と同じです。

68室という規模も、
高級旅館の客室数に近い。

世界の5つ星ホテルのランキングには
載っていません。

でも日本の旅館のフレームで見ると、
テラスクラブの異常なサービスの品質は
当然のことだと言えます。

世界が「システム」で追いかけているものを、
日本は「人」でやってきた。

テラスクラブは、
日本の強みをリゾートホテルの形に移し替えた
稀有な存在だと思います。


◆ これはホテルだけの話なのか

さて、
ここまでホテルの話をしてきましたが、

果たしてこれは
ホテルだけの話でしょうか?

私たち食品メーカーの現場にも、
同じ構造がないでしょうか。


◆ 食品メーカーにとっての「お客様」

テラスクラブのスタッフは
「お客様が何を必要としているか」を
言われる前に察知して動きます。

では、
食品メーカーにとっての
「お客様」は誰でしょうか。

・納品先のバイヤー

・消費者

・取引先の工場

そして、
社内の次工程の人間です。

ホテルと同じ
「言われる前に動く」を
どう実装していくのか。

具体的に見ていきましょう。


◆ 【1. 観察】現場で何が起きているかを見る

テラスクラブでは、
スタッフがお客の行動を見ていました。

食品工場ではどうでしょうか。

・ラインの温度変化

・原料ロットが変わったときの微妙な色や粘度の違い

・納品先の発注パターンの変化

多くの工場では、
「数値が基準を超えたらアラート」
という管理をしています。

それは
「メガネを忘れました、と言われてから届ける」
のと同じです。

基準を超える前に
「何かおかしい」と気づく力。

これが現場における観察です。


◆ 【2. 共有】気づいたことをリアルタイムで流す

テラスクラブでは、
フロントが知った情報を
プール担当が知っていました。

食品工場ではどうでしょうか。

製造現場が気づいた原料の異変を、
品管はいつ知るか。

営業が聞いた納品先の不満を、
製造現場はいつ知るか。

「月曜の朝礼で報告」
では遅いのです。

テラスクラブのスタッフはプールまで
走って報告しに来ました。

気づいてから共有までの
時間差をゼロにする。

これが共有です。


◆ 【3. 判断】現場が自分で動ける

ここが一番重要です。

テラスクラブでは、
お茶とブランケットを
上司に確認せずに用意しました。

さらにエクスペディアの件では、

夜11時のスタッフが、
正規料金より安い金額を飲んで
直予約に切り替えました。

売上を減らす判断を、
現場がやっているのです。

食品工場に置き換えます。

ラインで異常を感じたとき、
作業員が自分の判断で
ラインを止められるでしょうか。

「工場長に確認します」と
10分待っている間に、
不良品が100個流れていないでしょうか。

多くの工場では、
止める権限は工場長にあり、
パートさんにはありません。

理由はわかります。

止めれば生産が遅れ、
出荷に間に合わなくなるかもしれない。

止めた判断が間違っていたら
責任問題になる。

だから「上に確認」になる。

でも品質事故が起きたとき、
本当に高くつくのはどちらでしょうか。

「10分ラインを止めること」と、
「不良品が納品先に届くこと」。

テラスクラブは
夜11時のスタッフに
売上を減らす判断を任せています。

数千円の差額を飲む権限を渡している。

それでホテルは潰れていません。

むしろリピーターだけで
68室が埋まっている。

現場に判断を任せることは、
短期的にはコストに見えます。

でも長期的には、
最も安い投資なのです。


◆ 食品工場も3つで品質を作れる

観察、共有、判断。

テラスクラブは
この3つでサービスを作っています。

食品工場も
この3つで品質を作れます。

そして──
重要なことを
もう一つ書きます。

テラスクラブがこれを実現できるのは、
68室だからです。

大きくなれば
観察は難しくなる。

共有は遅くなる。

判断は現場から離れる。

食品メーカーも同じです。

規模が大きくなるほど、
現場の「あれ?」という声は
経営者の耳に届かなくなります。

だからこそ、
「小さい」ことは武器になります。


◆ 68室で360室に勝てる理由

「うちは中小だから大手に勝てない」

そう思っている方が
いらっしゃるかもしれません。

しかしテラスクラブは68室で、
360室のハレクラニに
サービスで勝っています。

勝てる理由は、
「小さい」からです。

・全員の顔が見える。

・情報が一瞬で流れる。

・現場が自分で動ける。

大手には絶対にできないことが、
中小にはできる。

皆さんの工場には、
テラスクラブと同じ最強の武器が
すでにあるはずです。

全員の顔が見える距離。

声が届く現場。

一人ひとりの判断が、
品質に直結する規模。

それは決して弱さではありません。

外観はマンションのようでもいい。

名前は知られていなくてもいい。

規模の小ささを活かし、
中身で勝てばいいのです。


構造的ポイント

・世界が「システム」で追いかけるものを
 日本は「人」でやってきた

・食品工場でも観察・共有・判断の
 3つで品質を作れる

・現場に判断を任せることは
 長期的には最も安い投資

・「小さい」ことは武器になる


全2回にわたりお読みいただき
ありがとうございました。

── 北條竜太郎


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