【DAY2】その発信、いつ読んでも同じ味になっていませんか
スーパーに行けば、一年中トマトが買えます。
冬でも夏でも、同じ赤、同じ大きさで棚に並んでいます。 便利です。困りません。
でも、その棚の前で「おっ」と足が止まることは、たぶんありません。
同じ食材なのに、旬のトマトと一年中あるトマトでは、なぜか心の動き方がまるで違います。
今日はその「旬」と、発信の話をします。
発信が刺さらないのは、旬がないからです
Day1では「出汁」の話をしました。
一次体験という出汁が入っていない文章は、どんなに構成が良くても薄くなります。
今日はその次の問題です。
出汁は入っている。体験も書いている。 なのに、なぜか読まれません。
その原因のひとつが、旬の欠落です。
AIは膨大なデータから文章を組み立てます。 でもそのデータは、過去に書かれたものの集まりです。 だからAIが出してくるのは「過去の平均」になります。
去年も言えますし、来年も言えます。 いつ読んでも同じように正しいです。 でも、いつ読んでも同じということは、今読む理由がないということでもあります。
正直、僕も昔は、いつでも言えることばかり並べていました。 一度30万インプレッションが出たのに、フォロワーは19人しか増えませんでした。
今日の結論はひとつです。 発信に必要なのは、うまさよりも「旬」、つまり「なぜ今これを言うのか」という理由です。
旬のない厨房に、牡蠣だけが季節を運んでくる
この牡蠣は、一年中は入ってきません。
その期間を逃せば、次に出せるのは一年後です。
だからこそ、その時期にしか出せない一皿には、旬が宿ります。
なぜ「今しかない」は心を動かすのか
なぜ「今しかない」という事実が、読み手の心を動かすのでしょうか。
その説明になるのが、希少性の原理です。
社会心理学者のチャルディーニが『影響力の武器』で挙げた原理のひとつで、手に入りにくいものほど価値が高く見える、というはたらきを指します。
これを裏づける有名な研究があります。 通称「クッキー瓶実験」です(ウォーチェルら、1975年)。
結果はこうでした。
たくさんあるクッキーよりも、数の少ないクッキーのほうが、高く評価されました。 同じクッキーなのにです。
さらに、最初は豊富で後から少なくなったクッキーのほうが、ずっと少なかったクッキーよりも高く評価されました。
希少性が効く理由は、シンプルです。
手に入りにくいものを、人は「良いものの目印」として無意識に受け取ります。 そのうえ、手に入らなくなりそうだと感じると、それを取り戻したくなります。
希少性には、いくつかの形があります。 数量の限定、時間の限定、そして競争です。
このうち発信に直結するのが、時間の限定です。
「今だけ」「その時しか言えない」という事実が、そのまま読み手にとっての価値になります。
牡蠣が秋冬にしか入らないように、現場で今日起きた出来事も、今日しか書けません。
帰宅後15分でできる、旬の仕込み
帰宅後の15分でできることを、3つに絞ります。
①「なぜ今か」を一文で言えるか、自分に問い直します
投稿を出す前に、「これをなぜ今日言うのか」と一度問い直してみてください。 一文で答えられないなら、それは旬のないネタかもしれません。 一文で言い切れること自体が、時間の希少性の証明になります。
②過去ログの使い回しを点検します
「前にも書いたことを、少し言葉を変えて出していないか」を見返してみてください。 下書きや過去の投稿を、「これは今日の話か、それとも焼き直しか」で仕分けます。 焼き直しが悪いわけではありません。でもそればかりだと、旬が消えて行きます。
③今日の現場で起きた「旬ネタ」を起点にします
本業の現場は、旬ネタの宝庫です。 今日その場であった小さな出来事を起点に、一本だけ書いてみてください。 うまくまとめなくて大丈夫です。「今日あった」という事実そのものが、価値になります。
旬を届けられるのは、現場にいる自分だけ
発信の価値は、うまさよりも「旬」で決まります。
僕の厨房は、ほとんどが「いつでも同じ」です。 安全のために、そう作っています。
でも、だからこそ分かります。 旬のない料理がどれだけ心に引っかからないか、僕は痛いほど知っています。
そして、それは発信でもまったく同じです。
今日の現場には、今日しか出せない味があります。 それを、その日のうちに言葉にします。 たったそれだけで、その発信はAIには書けないものになります。
僕も、書く前にいつも確かめます。 これは今日の話か、それとも、いつでも出せる平均か。
最後に、ひとつだけ問いかけて終わります。
それ、いつでも出せる過去の平均=シーズニング(AI)任せになっていませんか?
Day3は「引き算」の話をします。
良かれと思って全部乗せにすると、なぜか響かなくなります。 発信を「削る」ことと、選択肢が多いほど人は選べなくなる心理について書きます。
このシリーズでは、調理師歴15年の経験をもとに「和食の技法」と「AIっぽさの正体」を重ねて書いています。
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