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【DAY3】その発信、盛れば盛るほど伝わらなくなっていませんか──和食に学ぶ「引き算」の話

良かれと思って、つい全部乗せてしまうことがあります。

伝えたいこと、役立つ情報、気の利いた一言。 あれもこれもと盛り込むほど、親切な気がしてきます。

でも、盛れば盛るほど、なぜか伝わらなくなります。

料理でも、同じです。 彩りも品数も多い大皿は、たしかに豪華に見えます。 ところが食べ終えたあと、どの一品も思い出せないのです。

今日は、その「引き算」と発信の話をします。

全部盛ってしまうのは、AIがいちばん得意なことだからです

Day1では「出汁」、Day2では「旬」の話をしました。 一次体験という出汁が入っていて、今しか言えない旬もある。 それでも読まれないとき、もうひとつ疑うべきことがあります。

引き算が、できていないことです。

ここで、AIの話をします。 AIに下書きを任せると、文章はどんどん長くなります。 あれも書ける、これも足せる、と要素が増えていきます。

これは偶然ではありません。 AIは、抜け漏れなく、当たり障りなく答えるように作られています。 だから「全部入れる」方向に、自然と進みます。 あれもこれも触れて、どの可能性も拾って、念のための注釈まで付けます。

逆に、AIがいちばん苦手なのが、引き算です。 「これは要らない」と切り捨てる判断。「一番大事なのはこれだ」と言い切ること。 何かを捨てれば、何かを拾えなくなります。 網羅と安全で動くAIには、その思い切りが出せません。

足すのは、AIでもできます。 でも削るのは、何を一番伝えたいかを決めた人間にしかできません。

今日の結論はひとつです。 発信に必要なのは、足すことではなく、削る勇気です。 1つの投稿に、主題は1つで足ります。

そしてこれは、僕自身がさんざん失敗して気づいたことです。

言いたいことを全部のせて、滑り続けた頃

発信を始めたころ、僕は1つの投稿に、伝えたいことを全部詰め込んでいました。

あれも言いたい、これも残したい。 気づけば、1つの投稿が全部乗せの状態でした。 今思えば、何を一番伝えたいのか、自分でも決めていませんでした。

でも、思ったような反応は返ってきませんでした。 あとから自分で読み返しても、結局何が言いたいのか分かりませんでした。

試しに、一番伝えたい一つだけを残して、あとは思い切って削りました。

すると、反応が返ってくるようになったのです。

減らしたほうが、届く。 やってみて、初めて分かりました。

なぜ「多い」と、人は選べなくなるのか

なぜ、情報が多いほど伝わらなくなるのでしょうか。

その説明になるのが、選択過多という心理です。 通称「ジャムの法則」と呼ばれます。

心理学者のシーナ・アイエンガーらが2000年に発表した、有名な実験があります。

あるスーパーの試食コーナーで、並べるジャムの数を変えて比べました。 一方は24種類、もう一方は6種類です。

まず、足を止めた人の割合です。 24種類には6割、6種類には4割の人が立ち寄りました。 たくさん並んでいるほうが、人目は引いたわけです。

ところが、実際に買った人の割合は、逆でした。 24種類では、試食した人の3%しか買いませんでした。 6種類では、30%が買いました。 およそ10倍の差です。

人目は引くのに、行動にはつながらない。 ここが、いちばん大事なところです。

選択肢が多すぎると、人は選びきれなくなります。 「どれがいいんだろう」と迷っているうちに面倒になり、何も選ばずに離れていくのです。

ここで、さきほどのAIの話とつながります。 全部盛った文章は、24種類のジャムを並べているのと同じです。 読む人に「どれでも好きに選んでください」と、判断を丸投げしている状態です。 AIが全部入れたがるのは、まさにこの「選べない棚」を作ってしまうことなのです。

表示は伸びても、保存やフォローには、なかなかつながりません。 読む人は「結局どれ?」となり、何も持ち帰らないまま画面を閉じます。

ひとつ、正直に付け加えておきます。 この法則は、いつでも同じように効くわけではありません。 後の大きな研究では、効果が出ない場合もあると報告されました。 ただ、選ぶ基準があいまいなときほど、人は多さに迷いやすくなります。 発信を読む人の多くは、まだ書き手のことを知りません。 だからこそ、こちらから一つに絞ってあげたほうが、ずっと届きやすいのです。

帰宅後15分でできる、引き算の仕込み

帰宅後の15分でできることを、3つに絞ります。

①一番伝えたい一つを決めます

投稿を出す前に、「今日、本当に言いたいのはどれか」を一つだけ選んでみてください。 3つ浮かんだら、2つは別の日に回します。 「削る」ではなく「移す」と考えると、気が楽になります。 ネタが3回分に増えたと思えば、むしろお得です。

②結論を2つ以上入れないようにします

「これも大事、あれも大事」と結論が並ぶと、どちらも弱くなります。 両方を立てるのをやめて、一番を一つだけ言い切ってみてください。

③飾りを一つずつ外してみてください

強調、絵文字、補足、ハッシュタグ。 「なくても意味が通じるもの」から、順番に外していきます。 飾りを引くほど、肝心の一文が立ってきます。

この3つに共通するのは、「足す前に、引けないか」と考えることです。 AIは、放っておくと全部足してきます。 だからこそ、最後に削るところだけは、自分の手でやる価値があります。

削る勇気を持てるのは、伝えたいことがある自分だけ

発信の価値は、情報の多さでは決まりません。 何を残し、何を削ったか、で決まります。

足すのは、AIでもできます。 当たり障りなく、全部乗せにするのは、むしろAIの得意技です。 でも、何を一番伝えたいかを決めて、あとを捨てる。 その思い切りだけは、現場で「これを伝えたい」と思った人間にしか出せません。

引き算には、勇気がいります。 せっかく考えたことを削るのは、もったいなく感じます。 でも、引いたぶんだけ、残った一つが強くなります。

最後に、ひとつだけ問いかけて終わります。

その“全部乗せ”、何が主役か決めないまま、シーズニング(AI)任せの味になっていませんか?

削る勇気こそ、現場に立つ自分にしか出せない味です。

Day4は「余白」の話をします。 説明しすぎると、なぜか記憶に残りません。 あえて言い切らずに残す「間」と、未完のほうが心に残る心理について書きます。

このシリーズでは、調理師歴15年の経験をもとに「和食の技法」と「AIっぽさの正体」を重ねて書いています。 更新を追いたい方は、noteのフォローで通知が届きます。

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