見出し画像

トレーナーとデニムの女、写真スタジオへ行く



——と、マンガで顛末はだいたいバレてしまった。オチまで描いてしまった。でも、まだ言い足りないことがあるので、ここからは文章でゆっくりやらせてほしい。

世の中には、簡単そうに見えて、実はとてつもなくハードルの高いことがある。私にとってそれは「写真スタジオで撮影してもらう」だった。

きっかけは単純で、プロフィール写真がどうしても必要になったのだ

ところが私という人間は、普段から部屋にこもって作業ばかりしている。メイクはほぼなし。服はシャツにデニム。「楽が一番」を人生の信条として生きてきた女である。そんな人間にとって、スタジオで撮影、というのは、ちょっとした遠征に近い。

まず予約までに、一ヶ月以上かかった。

ホームページを開いては「どうしよう」と思って閉じる。これを二週間。次に公式LINEに登録だけして、ただ眺める。これで一週間。さらにLINEからHPに飛んでまた戻る、という謎の往復運動を一週間以上くり返し、ようやく申し込んだ。我ながら、何をやっているのだろうか。

しかも、だ。カメラマンの方が、イケメンすぎる。

これがまた緊張に拍車をかけた。申し込みボタンを押すだけで、変な汗が出た。

申し込んでしまえば、あとは早かった。数日前にはLINEで服装の打ち合わせを丁寧にしていただき、ヘアメイクもお願いして、いざ当日。

直前には「場所が分からなければ迎えに行きます」という、これ以上ないほど丁寧なLINEまで届いた。最初のやり取りのときから、なんてきちんとした方だろう、と感じていたが、その印象は最後まで変わらなかった。

スタジオに入ると、ずらりと並んだメイク用品に圧倒された。あんなにたくさんの道具を、人の顔に使うのか。プロのヘアメイクさんに整えていただき、いよいよ本番である。

ところが、顔がこわばって、まったく笑えない。

笑おうとすればするほど、笑顔というものが一体どういう仕組みで作られるのか、急に思い出せなくなる。困った。でも、やわらかいお声がけと雰囲気に、だんだん緊張がほぐれていった。優しい人たちというのは、こういうとき本当にありがたい。

撮影が終わると、レタッチ用の写真を一緒に選んでいただいた。そして仕上がった一枚を見て、私は思わず固まった。

別人がいる。

娘も「すごい!さすがプロの写真」と絶賛していた。たしかに、すごい。シャツとデニムの女は、どこにもいなかった。

——という訳で、私は今、密かに企んでいることがある。

実は今ダイエット中なのだが、これが成功したあかつきには、ご褒美にもう一度あのスタジオで撮ってもらおうと思っているのだ。つまり、痩せる動機が「健康」でも「服」でもなく、「また別人になりたいから」である。

人間、頑張る理由なんて、そのくらいでちょうどいい気がする。

*マンガは新宇佐美式で描きました。

#エッセイ #プロフィール写真 #写真スタジオ #撮影 #ダイエット #日常エッセイ #note

いいなと思ったら応援しよう!