いつか大人になって――石川セリ『遠い海の記憶』
ずっと「秘密」という言葉の響きに惹かれてきた。
そして、石川セリの『遠い海の記憶』を聴くたび、私はいまでも「秘密」という言葉を思い出す。
子どもの頃から、大好きな「秘密」はいつも近くにあった。
バーネットの小説、『秘密の花園』。荒れ果てた庭が少しずつ甦ってゆく様子を、私は文章を追いながら夢中で思い描いたものだ。
古代エジプト文字の秘密について書かれた本を、小学校の図書室で読んだこともあった。タイトルはもう思い出せない。けれど、読めなかった文字が解読されてゆく話に胸を躍らせていたことだけは覚えている。
気がつけば、これまで私がnoteに書いてきたものの中にも「秘密」が出てきていた。
NHK少年ドラマシリーズの『秘密の白い石』。
ティン・パン・アレーとアグネス・チャンの『ポケットいっぱいの秘密』。
そういえば、「ナスカの地上絵」にもずいぶん心惹かれた。もっとも、これは「秘密」というより「謎」という言葉がしっくりくるのかもしれない。生きているうちにこの「謎」は解き明かされるのだろうか、そうだといいなと、今でもふと思う。
私の中で「秘密」と「謎」の境目は少し曖昧だ。
ただ、音楽になるとやはり「謎」より「秘密」のほうが似合う気がする。一方で、ドラマで見た『なぞの転校生』なんかは、やはり「謎」でなければならないと思う。「秘密の転校生」では収まりが悪い。
『つぶやき岩の秘密』も、そんな「秘密」や「謎」を扱うNHK少年ドラマシリーズ作品の一つだ。
正直に言えば、内容はまったくと言っていいほど覚えていない。あとになってあらすじを読んでみても「ああ、そうだった!」とはならなかった。本当に不思議なくらい、きれいさっぱり忘れてしまっている。
それなのに、主題歌のことだけはずっと記憶に残っているのだ。
石川セリ『遠い海の記憶』。
いつか思い出すだろう
おとなに なった時に
あの輝く 青い海と
通り過ぎた冷たい風を
この歌詞が好きだった。
「大人になる」ということがどういうことなのか、その頃の私はもちろん何もわかっていなかった。そして、それがどれほど遠い未来なのかも。なんとなく、もう何年かたてば「大人」というものになるんだなあ。働いているのかな。結婚しているのかな。子どもは産むのかな。せいぜいそれくらいだ。
けれど、大人になったときに思い出すという、「青い海」や「冷たい風」という言葉の響きはひどくロマンチックに思えた。
そして本当に大人になった今、こうしてまた『遠い海の記憶』を思い出している。
「大人になる」という、当時からすれば「遠い未来」に、こうして私はたどり着いた。「大人になる」どころか、そこからずっと「大人」を続けてきて、もう人生の冬の時期に入ってしまっている。
けれど、だからといって、何かがわかるわけではなかった。
そもそもこんな年まで生きるとも思っていなかったし、子どもの頃に漠然とイメージした未来と、実際にたどり着いた未来はずいぶん違っていた。いいことも、悪いことも、本当にいろいろなことが。
わからないものを知りたくて、人は「秘密」や「謎」に惹かれるのだろうか。でも未来にたどりついても、「秘密」や「謎」が解けるわけではない。
そして『遠い海の記憶』もまた、答えを教えてはくれない。
歌はこう締めくくられる。
君は ふと気づくだろう
あの輝く 青い海が
教えてくれたものは
なんだったのだろうと
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