モーリー・ロバートソンさんが教えてくれたこと
自分をアップデートし続ける精神
先日、タレント、ジャーナリスト、ミュージシャンでもあるモーリー・ロバートソンさんが63歳の若さでお亡くなりになった。僕がこの世界の知らない事を自分なりに知ろうと心がけるようになったのは彼のラジオを聴き始めた事がきっかけだった。
僕は彼がテレビ業界に主な活動の拠点を映す直前に力を注いでいた「アイモーリー」の熱烈なリスナーであった。自分の知らない事を調べて、時にそれが自分にとって都合が悪い事であっても自分をアップデートしようとする姿勢はこの人から学んだところが大きい。それでも尚、自分という偏りからは抜けられないでいるが。
今日はモーリーさんへの追悼の思いを込めて、僕が彼から学んだ中で特に印象に残っている事をまとめたいと思う。以降、アイモーリー時代のリスナーとしての愛着を込めて「モーリー」と呼ぶことにする。
モーリーは日米ハーフの広島育ち、アメリカ人として初の東大現役合格、中退後にハーバード大学に入学。在学中にオカルトにどっぷりとハマり、魔術師に弟子入りしたり、大本教に興味を持ったり、生長の家に入信したりとかなり極端な人生を送った。その後もそうだ。
オカルトには見切りをつけて、ラジオパーソナリティーになったかと思えば国際ジャーナリストになったり、まだYoutubeがない時代にチベットやウイグルからストリーミング配信をし、やがては自分がさんざん批判していたテレビ業界が終の住処となった。
モーリー自身も語っていたことだが、「右から左、極端から対の極端」を行ったり来たりしながらその中間点を探し当てるような人生を送っていたのだと思う。
興味のない事柄も勉強するモーリー
モーリーには敵が多い。誤解される物言いをあえてするからだ。テレビに活動の主を移して以降の活動はあまり知らない。でもXで彼の発言がたまに反感を買っているのは見かけた。
当たり前だ。議論をしても意味がなさそうな凝り固まった層を怒らせるような皮肉を意図的に投下していたんだもの。それが彼なりのブラックジョーク(もの凄くキツめではある)なのに、全くもってその意図が理解できない人達を敢えてターゲットにそういう事をやっていた。
でもアイモーリーリスナーの僕としてはそれが彼なりの世論マッサージなんだろうと遠目に見て笑っていた。ある一定の人たちにとってはそれは激痛を伴うツボ押しだったと思うし、余裕のない状態では笑えるものにはならないだろうと僕も大人になって思うようになった。
しかしながら僕がモーリーを人として尊敬したのは、彼が自分自身は全くもって興味のない事柄なのにも関わらず、それを人一倍勉強しようとする姿勢だ。
例えば彼はドラッグとスポーツには興味がなかった。ドラッグもアルコールも経験はあるが本人は弱いし好きじゃなかった。にも関わらず、旅先の配信上で一人で居酒屋で泥酔して半寝の自分を晒したり、学生時代にアメリカで大麻を友人に勧められた時に「カチンコチン」のストーンド状態になった失敗談を晒しつつ日本の大麻取締法のおかしさについて講義をしていた。
そしてスポーツには興味がないと前置きをし、「ヒクソングレイシーは一番弱い筋肉から鍛えるらしい」などという事を言って笑っていた。
グルーヴの正体
僕自身がモーリーの熱烈なファンだったのは、2008-2013年あたりまでの5年ぐらいの話だ。その期間には「アーリーモーリーバード」だの「Elan Vital」などの彼のそれ以前のラジオもネット上で聴けるものはだいたい聴いたし、若い頃の著作「よくひとりぼっちだった」も読んだ。
特に印象に残っているのは、彼が2011年の東日本大震災の直後に始めた「グルーヴジャパン」というプロジェクトだ。震災直後の東北を回って現地の人たちと触れ合ったり、講演会をしたり、DJをしたりという様子を生配信をするというものだった。当時はYoutubeには広告もなく、収益化の機能も備わっていなかった。今は亡きUstream(ユーストリーム)というプラットフォームでほぼ自腹でそれをやっていた。彼のXのアカウント名はgjmorleyなのだが、これは当時そのGrooveJapanのために作ったサブアカだったのだ。以降はすっかりこちらがメインになり、プロジェクト発足当時に既に数万人のフォロワーがいたメインだったアカウントはやがて削除されたようだ。
このグルーヴジャパンのプロジェクトでは、佐々木誠さんという映画監督を起用して幾つかのとても興味深いインタビュー映像を無料で配信していた。そこでモーリー自身も最終的にインタビューを受け、音楽のグルーヴ(踊れる感じ)の正体について自分なりの考察をしていたのが強く印象に残っている。
映像の中で彼は様々な機材を使って制作した音楽の録音をしていたのだが、それらのMidiファイルをMac上のソフトに「形式に合わせてペースト」し、「グルーヴを抽出」という操作をした。
「それまではメトロノームのリズムからズレなく配置されていたファイルがグルーヴを抽出した事で何が起きているか?この画面を拡大してみるとわかるのだけど、みると頭から微妙にずれているんだよね。このズレがどうやらグルーヴというやつの正体らしい。」
映像は踊り狂うモーリーをフェードアウトしながら彼が
「みんなー待ってるよー!先に行ってるよー!」
とかなんとか言って終わったと記憶している。
個人的にこの映像は物凄い示唆に富んでいるとその当時感じたものだ。
艮という字の中に込められた意味
またモーリーはその当時から陰謀論やオカルトの類に関しては非常に手厳しい態度をとっていた。しかしながら、それらは彼がオカルトにどっぷりと浸かっていた過去がある事を知っているか知らないでいるかでその味わいが全く変わる。
モーリーは事あるごとに一時期ハマっていた大本教の出口王仁三郎の話をしてくれた。特に印象に残っているのは艮の金神についての話だった。
艮の金神は大本教の開祖である<出口なお>に憑依したとされる神で、その実態は神道における国常立尊(くにとこたちのみこと)であるとも言われている。艮という字は良い悪いの「良」という字のなべぶたを取ったもので、一般的にはあまり馴染みの無い漢字だが、これは鬼門である東北の方角を表すのに古来から使われている。
モーリーは、
「大本教では<東北>というのはエネルギーが強く、たくさんの災いが入ってくる方角だが、同時に根源的なものでもある。これに蓋をすることによって<良>とすると考えているらしい。」
という趣旨の事を嬉々として語っていた。
僕はこの時、<良い人>だとか<良い子>などと聞いた時に感じるなんとも言えない息苦しさについての違和感への説明をもらったような、霧が晴れたみたいな気持ちでいた。
モーリーは多分加速主義
僕はモーリー・ロバートソンの政治観などには反対な事もままある。にもかかわらず、彼の活動に興味を持っていたのは、彼が自分と同じようにヒッピー的な生き方への憧れを根本に持っていたからだ。
モーリーは「多様性」という言葉が日本のメディアで出る何年も前からこの言葉を使っていた。彼は学歴エリートではあったけれど単なるグローバリストだとか勝ち組負け組みたいな拝金主義とは一線を隠すタイプだった。むしろ彼は一貫して勝ち組負け組みたいな思想を批判していたし、ドラッグはやらないのに<ぶっ飛ぶ>事を目指していた。先に挙げたGroove Japanプロジェクトもそんな感じで初めて、最後はお金が尽きてパートナーの池田有希子さんに配信上で説教をされていた。人に頭を下げてお金を借りて回った時の惨めな心境をカメラの前で語って笑っていた。コメント欄のみんなも笑っていた。
その後、恐らく自分なりに経済的な折り合いをつける形でそれまで拒んでいたテレビに出演するようになったのだと思う。しかしながら、その中でも彼は多くの人にとって<都合の悪い真実>の議論を提示する事を最後までやめなかった。
そしてモーリー自身、一貫してウィリアム・バロウズやジャック・ケルアックのような言ってみればヒッピーの始祖、ビートニクを尊敬する人としてあげていた事を強く強調しておきたい。
モーリーはモーリーなりにヒッピーを貫いた人として、僕なりの最上級の敬意と追悼の思いをここに表したい。
モーリー、本当に沢山のことを教えてくれてありがとう。ゆっくり休んでください。
