万病の元「ストレス」を解剖する(前編)〜忙しさだけじゃない「暇」という要因〜
「〇〇の不調にはこの養生」と発信しつつ、漢方薬剤師が薄々気づいていること。それは、あらゆる不調の要因のひとつに「ストレス」があるという事実だ。そしてそのストレスを生み出すのは、忙しさや人間関係とは限らない。
漢方ライターが薄々気づいていること
私は現在、漢方関連の情報発信の仕事をしている。「頭痛にはこのツボ」「胃腸の疲れにはこの食材」といった具合に、日々さまざまな不調に対する養生法を発信している。
しかし、そんな発信を続けながら、私自身が薄々気づいている真実がある。 それは、どんな症状や不調を辿っていっても、その根本的な要因には必ずと言っていいほど「ストレス」が潜んでいるということだ。どれほど食事に気を遣い、睡眠をとっていても、強烈なストレスの前では養生術などいとも簡単に吹き飛んでしまうのではないか。(そもそも、強烈なストレスの前では、食事も睡眠もままならないか…)
気血の巡りを止める、目に見えない万病の元
中医学では、ストレスは体内の「気(エネルギー)」の巡りを滞らせると考える。これを「気滞(きたい)」と呼ぶ。
気は、血液や水分を体中に運ぶエンジンのような役割を果たしている。そのため、ストレスによって気が滞れば、連動して血の巡りも悪くなり(瘀血:おけつ)、肩こり、頭痛、冷え、生理痛など、ありとあらゆる不調や病気を招くことになる。 まさにストレスは、目に見えない万病の元なのだ。
「時間がありすぎる」というストレスもある
ここで多くの人が想像する「ストレス」とは、仕事の重圧であったり、煩わしい人間関係であったりするだろう。確かにそれらは気を滞らせる大きな要因だ。
しかし、仕事をしておらず、人間関係に悩むほどの交流がなかったとしても、人はストレスを感じる。「時間がありすぎる」というのも、実は非常に厄介なストレス源なのだ。 中医学には「思慮過度(しりょかど)」という言葉がある。時間があり余っていると、人はどうしても過去を悔やんだり、まだ起きていない未来を不安に思ったりと、余計なことを考えすぎてしまう。この「考えすぎ」は胃腸(脾)を激しく消耗させ、気の巡りをピタリと止めてしまうのだ。
自分の「許容度」を知るという究極の養生
忙しすぎても、暇すぎても、人はストレスを感じて不調になる。 結局のところ、何がストレスになるかは、その人の持って生まれた性格や、キャパシティ(許容度)によって全く異なるのだ。
万人に効く漢方薬がないように、万人に当てはまるストレス解消法もない。 「自分は忙しすぎるとダメになるのか」「それとも、暇すぎると余計なことを考えて落ち込むのか」。自分の心の許容度やクセを冷静に把握し、その真ん中の「ちょうどいいバランス」を保つこと。それこそが、最も難しく、最も効果的な究極の養生なのだと思う。
