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体育会系合気道㉒ー占い系合気道ー

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 わたしは、多趣味であちこちの世界をお邪魔してきた人間だ。
 二十歳のころから、いまに至るまで、わたしの細々とつづいている趣味がある。

 占いだ。

 ここで、なぜ、占いの話が出てくるかというと、わたしたちの教室の先生が、「覇王線(国々の王となるもの)」を持っているのを偶然みてしまったからだった。
 僭越ながら、わたしにも、うっすい覇王線があって、ときどき現れたり消えたりするのだが、そんな偉い線は、女の子であるわたしには必要ない、と思う。
 女の子は、にこにこ笑っていて素直であればいい、と思っている。
 前向きで、建設的で、にこにこ笑っていれば、女の子(でも誰でも)はそこそこしあわせになれるものだ。くよくよ眉間にしわが寄り勝ちだと、たぶん、誰も寄ってこない。

 先生の「覇王線」は、わたしと違ってしっかりくっきり、右手にあった。
 ‶自分自身の努力で、覇王となる識見と実力を得たもの〟たるエンブレムだった。
 先生は、柔和にみえる。
 「外柔内剛」のタイプなのだろう。
 闘ったら、手ごわいタイプ……と、みられる。(そんな、畏れ多いことはいたしません)。

 先生は、わたしが、以前に「警察関係で、武道のご指導をされていたのですか?」
と、訊いたとき、
「いえ、わたしは、警察に追われていたほうですよ」
と、にっこり笑って語っていたので、そうとうヤンチャをされていたのだと思う。
 おもわず鬼ごっこされている、先生と警察屋さんを想像してしまったが面白くもある。

 障害を持っているらしい赤井さんにも、じつにうっすい「覇王線」があった。
 赤井さんは、人相も、頭領の器、そしてやさしく、面倒見がいい人相だった。
 赤井さんは、たぶん、その‶恵まれすぎている自分の素質に潰された〟のだと思う。
 頼られ過ぎて潰れる人間はいる。人相もほかの占いでも、恵まれすぎていると却ってそれが仇になる。大きすぎる刀は、扱いが難しい。

 わたしと仲が悪い上川さんのところへは、赤井さんは、しょっちゅう声を掛けにいって、皆んなとの仲をとりもとうと努力している。赤井さんは、後輩の私たちの面倒もよくみてくれる。
 ただ、赤井さんは、食事会などの集まりで、常識をしらない、と注意されることがあって、教室の先生には向いていないのだろう。

 いっぽう、女性のベテラン、美人の味川さんは、技も冴えている。集まりでの常識も知っている。あたまも良い。このひとが、あとを継ぐのかと思うが、いまいちおしゃべりが苦手そうなのだ。わたしは、頼まれないと相手の占いはしないのだが、ただ、味川さんの名前の下のほうは、わたしが暗記してしまっている名前で、「姉後肌の男勝り」の相だった。

 様子をみていると、そのへんのごろつきみたいなひとは、やはり居ない。チャラチャラしていそうな藤川さんでさえ、障害があるとみられる赤井さんにもやさしい。武道という、木枯らしが吹きそうな世界でも、ここは、上に行くほど腰が低く、柔和なひとが多い世界だった。


*人名は、すべて仮名です。

  
              つづく

©️2026.8.13.山田えみこ


 

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