* interview Pasquale Grasso『Pasquale Plays Duke』: デューク・エリントンの曲はミステリアスなほど僕のギターにハマるんだ(7,800字)
アート・テイタムやバド・パウエルのピアノのようにギターを弾きたいというアイデアを独自の奏法と発想で可能にしてしまった異端のギタリストのパスクァーレ・グラッソはデビュー以降、着々とストリーミングで音源をリリースしている。
アルバムとしては『Solo Masterpieces』、『Solo Ballad』、『Solo Standard』、『Solo Bud Powell』、EPだと『Solo Monk EP』、『Solo Bird EP』からクリスマス・ミニアルバムの『Solo Holiday EP』まで、すでにかなりの数の作品をリリースしてきた。ただ、なぜかそれらは全てソロギターだった。そろそろ彼が誰かと共演する音源を聴きたいと思っていたのは僕だけではないはずだ。その証拠にパスクァーレが全面的に参加したヴォーカリストのサマラ・ジョイのデビュー作『Samara Joy』は大きな話題になった。気鋭のヴォーカリストの圧倒的な歌唱に伴奏をするパスクァーレのギターがあまりに素晴らしかったこともこのアルバムの評価を高めたのは間違いなかった。
パスクァーレがバンドでの作品をリリースするのをリスナーが待ち望んでいる中で発表されたのがデューク・エリントン曲集『Pasquale plays Duke』だった。これはドラムとベースとのトリオ、ベースとのデュオ、更にはヴォーカリストを迎えた歌ものまで、パスクァーレによるスタジオ・セッション音源だ。セッションで見せるソロとは異なるクリエイティヴィティ―にはこれまで同様、世界中のリスナーが驚くはずだ。
そして、本作はデューク・エリントンに対する視点や楽曲の解釈の面でも実にフレッシュだ。そして、ここでのパスクァーレの視点はこれまで興味がありつつもなかなか入り込めなかった人も少なくないであろうデューク・エリントンの音楽への入門にも繋がるものだと僕は考えている。
なので、今回のインタビューでは事前に柳樂が『Pasquale plays Duke』でパスクァーレが“参照した”もしくは“近い部分がある”と思われる曲を予測して、それをもとに質問をしながら、パスクァーレに彼の視点でデューク・エリントンの曲について語ってもらうことにした。柳樂が予測した『Pasquale plays Duke』の元ネタと思われる楽曲を集めたプレイリストをここに貼っておくので、パスクァーレの演奏とそれらを比較しながら読んでもらえるとより伝わりやすいと思う。
取材・執筆・編集:柳樂光隆 通訳:染谷和美 協力:ソニー・ミュージック
◎僕にとってデュークの曲はギターですごく弾きやすいんだ
――『Pasquale plays Duke』をつくるきっかけを聞かせてください。
そもそもソロの曲「Prelude to a Kiss」「In a Sentimental Mood」「Day Dream」「Reflections in D」は数年前にレコーディングしたもので、僕がリリースしているEPのシリーズの中に入っている。僕のプロデューサーのマット・ピアソンから既に4曲あるんだったら、あと5曲くらいバンドで録音して、まとめてアルバムにしようよって提案があって、デュークの曲だったら6歳の頃からずっと聴いてきているし、大好きだから、ぜひやろうってことになった。今回は10年来一緒にやっているアリ・ローランドとキース・バラとのトリオで録音できたのも良かったね。
――今までソロでずっとリリースしてきましたが、今回はついにトリオの演奏が中心になっています。
トリオでの録音はずっとやりたいことだった。僕はドラム&ベースとのトリオの演奏が一番好きだからね。ソロの演奏の方が多かったから、トリオの録音がなかなか実現しなかったんだけど、マット・ピアソンは僕に対して、「次は何がやりたい?」「最近はどんなことを考えてる?」っていつも声をかけてくれる人。彼と話している中でトリオでの録音が実現に至ったんだ。しかも、初めてのトリオ・レコーディングにサマラ・ジョイだけじゃなくて、シーラ・ジョーダンも加わってくれることになった。シーラは僕にとってのアイドルのひとりで、今、93歳。あの年齢で、僕の企画に参加してくれて本当にうれしかった。
――では、まず、このアルバムのテーマでもあるデューク・エリントンの音楽のどんなところが好きのかを聞かせてください。
デュークは天才。いとも簡単にいい曲を書いてしまう。メロディーはシンプルなんだけど、そこにスウィング感と様々なフィーリングが相まっている。そして、僕にとってデュークの曲はギターですごく弾きやすいんだ。メロディーも、トーンも、キーもギターって楽器にすごくハマる曲を書いている人だなと思う。実際にバンドでやってみると、そこにハーモニーが加わってきて、それによりメロディーが引き立つ。僕らの録音はすごくいい演奏になったと思うよ。
――エリントンの曲ってギタリストが演奏している録音がそんなに多くないので、ギターで弾きやすいってイメージがないんですよね。エリントンを弾いてるギタリストで好きな録音ってありますか?
バーニー・ケッセルやケニー・バレルはデュークの曲をいくつか演奏している。ケニー・バレルは僕もやった「Warm Valley」を取り上げているよね。でも、全曲デュークの曲でアルバムを作ったギタリストはなかなかいないかも。とはいえ、優れたギタリストが演奏しているバージョンは探せば色々あると思うよ。さっきギターで弾きやすい、ギターにハマると言ったのはあくまでも“僕にとって”ということ。それは僕の育ち方とも関係があるし、僕の奏法とも関係があると思う。ともかく僕はデュークの曲が大好きなので、毎日でも弾いていたいと思うよね。そういう意味では僕のギターにとってハマるってことだね。
――エリントンの曲といえば、大きな編成でアンサンブル、もしくはエリントン自身もピアニストだったので楽曲もピアノ向きなのかなと思っていました。なので、ギターで弾きやすいという発想は興味深いと思ったんですよね。
デュークの曲はなぜか僕のギターにハマるんだよね。ミステリアスだと思う。メロディーもキーも全てハマるんだよね。少なくとも僕にとってはそうで、それは僕がデュークのことが好きすぎるからかもね。
◎滅多に演奏されない曲も少なくない独特な選曲
――ここでは有名な曲もいっぱいやってるんですけど、滅多に演奏されない曲をやっているのもこのアルバムの特徴だと思うんですよ。「Blue Rose」なんて、カヴァーしてる人は他にいないんじゃないかと思うんです。この曲を選んだ理由を聞かせてください。
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