【心震える本】静かなる傑作、東野圭吾『むかし僕が死んだ家』ーー君は謎を解いてこの館から脱出できるか🔑好き過ぎて私は20回は読んでます!
【はじめに】
東野圭吾さんがお亡くなりになりました。私はいちファンではありますが、とても悲しく、まだ気持ちの整理がついておりません。そういう方は多いと思います。実は、以下の記事を書いている途中の訃報でした。楽しげな雰囲気の記事をこのまま出すべきか、書き直すべきか、悩みましたが、直さず投稿することに決めました。作者が世を去っても、作品は作品として何も変わらず、「あ~面白かった!」と笑顔で読了したいのです。そしてそのことで感謝を伝えたい。このような、何度読んでも楽しめる作品を数多く残してくださった東野圭吾さん。ありがとうございました。これからもずっと、読み続けます。
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今日は小さな読書会。
久しぶりに大好きなミステリの世界にどっぷり浸かります🔍
興味のある方はよろしくおつきあいください!

※作家名は敬称略とさせていただきます
※作品について核心的なネタバレは避けますが、後半までの内容に触れますので、未読の方はご注意ください
〈本データ〉
『むかし僕が死んだ家』(著者 東野圭吾)
・単行本発売日:1994年5月
・文庫発売日:1997年5月
※手元にあるのは文庫です(講談社文庫/税別533円)
※文庫 全313ページ
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🔍あまり有名じゃないのかも?
さて今日私が持ってきたのは東野圭吾の知られざる名作『むかし僕が死んだ家』。
知られざる、なんてベストセラー作家に失礼かもしれないけれど、実際、「東野圭吾の個人的ベスト10は?」みたいな話を誰かとしても、なかなか出てこないなぁ、というのが私の印象🤔
理由ははっきりしてるんです。ガリレオシリーズでも、加賀恭一郎シリーズでもない。単発の作品でも映像化されてるものは多いけど、これはされてない。古いし、かなり特徴的な話なので、好みも分かれそう。
将来的に映像化される可能性も(他の作品に比べると)低いかも・・・と個人的には思うのですが、その理由は後で話します。
ーーいや、いや、内容的にはとんでもなく面白いんですよ!
濃密な謎解きに次ぐ謎解きで、ミステリ好きのツボを押しまくり。逆に言えば「比較的有名じゃない方の作品」なのにこのレベルっていうのが、東野作品どんだけ凄いのって話なんです😂
そろそろ本題に行け?
🔍まずはあらすじ
主人公の男性(たぶん30歳くらい)は、かつての恋人・沙也加から思いも寄らない頼まれごとをします。それは、「あたしと一緒にこの地図の場所へ行ってほしい」というもの。
彼女が見せたのは、亡き父の遺品から出てきたという、手書きの地図と真鍮の鍵でした🔑
なんと彼女、自分には幼い頃の記憶がないと言うのです。付き合っていた頃も、そんな葛藤をひとりで抱えていた沙也加。
だから、ここに行けば何かわかるかもしれないーーと。
そうして2人を迎えたその家は、一見ふつうで、あまりに奇妙な場所でした。

そこまでは書いてあったので、あとは地図を頼りに車で森へ入り、
「その家」を探し当てました
(※写真はすべてイメージです)
🔍この謎を解いてみろーー魅力的な手がかり満載
2人がたどりついた場所は、家族がそのまま暮らせるような、暮らしていたような、家財道具一式が揃った家でした。でも電気も水道も通ってない。なんか変。
けれど謎解きという視点で見るともう、手がかりというか「アイテム」が満載なわけです。それは
🔘古い鍵と手書きの地図(これは最初に沙也加が持ってきたやつ)
🔘同じ時間で止まったままの時計たち
🔘学習机やランドセル
🔘古い写真
🔘謎めいた日記
🔘謎めいた手紙
🔘不自然な年代の本が並ぶ本棚
🔘隠されていた金庫
ーーなどなど。そして、何やら悲劇の匂いがする沙也加には悪いのですが、言ってしまえばミステリ的には、
🔘記憶をなくしたヒロイン
も読者をゾクゾクさせるアイテムーーと言えるわけです(ひとでなし)。
2人はその家であらゆるものを手に取り、情報を得ようとします。ちりばめられた違和感はある真実を浮き彫りにする、すべてがパズルのピースだからです。

「もうここを使う気はないのかしら」
「そんな感じに見えるね。水だって止まっているし」(p64より)

家族が住んでいたような雰囲気も感じられました
🔍30年前の小説なのに「脱出ゲーム」みたい
これ1994年の小説なんですよね。ざっくり30年前。ちなみに『白夜行』が1999年、『容疑者Xの献身』が直木賞を受賞して話題となったのが2005年。
でも「ここ数年の作品」と言われても私はほとんど違和感ありません。固定電話で連絡をとっていたり、ある親子問題(社会問題)に対する世間の認識が今より低い以外はーーうん、大丈夫。
なぜかというと、限られた空間で自分の頭だけを頼りに謎解きしていく話だからなんです!
スマホもパソコンも使えない場所に放り込まれたら、素のままの自分でどこまで勝負できるでしょう( 私はまったく自信がないよ💦)。
そんなわけで、初めて読んだ時は「謎解きは凄いけど悲しい話・・・」と感じたものの、ここ数年で読み返してみたら印象がガラッと変わったんです。
なんかこれリアル脱出ゲームみたいじゃない!?ーー と(いや私の心が汚れてしまっただけかもしれないけどね😅)。

ちなみに私は過去に4~5回行って全敗です!
ムズいって💦時間がないと焦るのよ(笑)
🔍書かれたのはどんな時代?
ちなみに1994年頃は私の知る限り、一般の人が気軽に参加する「リアル脱出ゲーム」というものは(日本には?)ありませんでした🚪謎解きブ-ムもマダミスもまだまだ先の話。住んでいた街(地方都市)で年に一度有名ホテルが1泊2日のミステリーナイトを開催してたけど、それも3年程でなくなっちゃったんですよね🏨(バイト代をはたいて行きました)。
だからほんと、東野圭吾ってむかしからいろんなタイプのミステリのツボを押しまくった作品書いてるよね😆って思うんです。
きっと才能もアイデアも溢れつつ、サ-ビス精神旺盛で研究熱心だったのでしょうね✒️
🔍解明するまで出たくない、帰れない
もちろん館や屋敷が舞台のミステリは国内外にたくさんあるし、閉ざされた山荘や孤島ものはミステリの古典🕵 でも『むかし僕が死んだ家』がそれらの有名作品と違うのは、
🔘「家一軒がまるごと手がかり。そこであれこれ手に取ってひたすら謎を解く」
🔘「現在進行形で事件が起こってるわけじゃなく、犯人に襲われる心配はとりあえずない」
ーーという点なんです。登場人物も少なくて、解く側(現在)と、解かれる側(過去)という構造も極めてシンプル。だから読み手も主人公と同じ目線で謎解きに集中できる。そこが特徴的というか、やっぱり脱出ゲームっぽいんです🚪
もちろん小説内で2人が訪れるこの家は、物理的な出入りは自由です。閉じ込められてるわけじゃない。でも解明するまで出たくない、帰れないーーという点ではまさに!

私は真っ先にあれこれ手に取って調べちゃいます📚
🔍安楽椅子探偵好きの皆さん、お待たせしました!
さらにしつこく、熱くこの作品の魅力を紐解いていきましょう📖
より魅力的な理由ーーそれは「これって安楽椅子探偵ものじゃない?」とも思うから(好きな方多いですよね😊)。
リアルタイムで事件を追いかけたり、容疑者から直接話を聞いたりせず、提示された資料や関係者からの話で、真相をズバッと解明するのが安楽椅子探偵の基本形🔍
でも「特にそういうジャンルとして分類されてないけど、これそうだよね?」という名作もあるわけです。
私の好みで言うと、島田荘司の御手洗潔シリーズ『占星術殺人事件』とか『ロシア幽霊軍艦事件』とか、高木彬光の『成吉思汗の秘密』とかいいですね(興奮)! (『成吉思汗の秘密』は直球で安楽椅子探偵ものなのかな? まぁ今はちょっと置いといて・・・)
だ、脱線してすみません💦
つまり安楽椅子探偵が解くのは、出来事としてはすっかり終わっている過去の事件でもいいわけです。なんなら事件じゃなくても、「あの時あの人こうだったんじゃないか」みたいなのでも。
犯人逮捕だけでなく、関係者の心を救うために真実が必要なことがあるからです!
この作品でも、主人公はこの家にある日記や手紙から推測します。「書かれてる人たちの関係性」をーー。そしてちりばめられた〝アイテム〟が、その説をより強固なものにしていくわけです🕰️

その字はかなり幼稚だが、あの算数のノートの字に似ていた。(p93より)
🔍映像化に向かない理由
これ、いわゆる「2人劇」なんですよね。ほぼひとつの舞台で2人がずっと会話しているような話。だから映画やドラマにした場合、人気の役者さんはほぼ2人しか使えない(私が心配することじゃないけど・笑)。
さらに、うまくハマると「めっちゃすごい謎解き!」みたいに話題になるかもしれないけれど、ずっと同じ家という舞台設定も映像的には地味かもです(逆にめちゃめちゃ舞台向きですよね)。
それに加えて真相の切なさよーー。
ネタバレはしたくありませんが、全体の雰囲気からしてハッピーな話じゃないことはお伝えしてもいいと思います。
おそらく映像化した場合、この悲劇性はより受け手に突き刺さるのではないでしょうか。それを考えてもハードルが高い。
いや、めっちゃ見てみたいけど🎥
主役の2人は誰がいいかな~なんて、ずっと妄想しています(若い頃の佐藤浩市さんと木村多江さんが私のベストイメージです)。

日記と手紙を合わせて出来事を推測し、
家全体にちりばめられた違和感を解明していくのですが・・・
🔍この読書体験に向かない人
あとですね、この本を読むことをあまりオススメできない人がいるのでご注意ください🙇
🔘家族病理、子どもの不幸を扱ったものが(物語であっても)苦手な人
🔘登場人物が辛い目に遭うと、謎解きの面白さを超えてそっちに気持ちが持ってかれちゃう人
逆にこういう方にはオススメします!
🔘東野圭吾が好き、未読の作品で面白そうなのを探してる人
🔘叙述トリックとか、頭を使う系の謎解きが好きな人
🔘〝館もの〟みたいな建物ミステリが好きな人
🔘面白い謎解きを読めるなら悲劇も受け入れられる人(もちろん私もフィクションと割り切ったうえで楽しんでいるんですよ💦)
🔍最後の謎は本人しかわからない
さて、「リアル脱出ゲームみたい」という話をさんざんしてきましたが、もしこれが現代風の脱出ゲームだった場合、そこにあるアイテムだけで謎解きしても「失敗」という結果になる可能性が高いのです(9割まではいけるかも)。
なぜなら最後の大謎は、ヒロイン沙也加の頭のなかにあるからです。
2人は「こうだったのではないか」という推測まではたどり着きますが、あとは沙也加の記憶次第です。
果たしてーー。
この家はなんなのか。
むかし何が起きたのか。
なぜ沙也加は記憶を失ったのか。
そして2人は、どんな気持ちでこの家を出ていくのでしょうか。
これがゲームと小説の違いです📖
この、簡単には割り切れない小説的な終わり方が、悲しいけれど、私はとても好きなのです。ラスト数行の余韻がまたなんとも言えなくて。

🔍探偵役の心の傷のつくり方が上手いよね
さて、もうひとつ着目したいことがありまして。
それは探偵役の主人公(確か名前は出てこない)にもある「心の傷」なんですね。
この人がこの謎を解くから、物語全体の雰囲気が切なさに満ちていく。
逆に、この人でなければこの謎を解いてはいけない感じがします。これ、宮部みゆきの名作『火車』を読んだ時にも感じたんですよね。探偵役、この人だからいいんだよなって・・・。そのあたりの人物造形の説得力も、人気作家のゆえんなのでしょう。
物語をつくる時、柱となるアイデアは重要ですが、それだけでは読み手の心に永く残る作品にはならないのだと思います。

🔍何度も読み返してしまう理由
それにしても、私はこの小説をたぶん20回は読んでます。もうアホみたいに好き。
今日読むものがないなとか、なんか暇だな、眠れないなぁ、みたいな時のお供です📗
手にしてしまう最大の理由は、「どのページを開いても、たいてい謎解きしている」のが嬉しいからで(推理オタク最大のご馳走・笑)。
この手がかり前半に出てきてたんだ!とか、この一文の書き方凄いなぁとか、読むたびに発見がある。
あ、決して安眠を誘う種類の物語ではありませんので、その点はご注意ください・・・(でも読み慣れた本は寝る前によいそうですよ🌙)

もし自分がこの館(あえて館と言わせてください)に放り込まれたとして、
何日いても脱出(解決)できる気がしないです💦
🔍それにしても東野圭吾が凄すぎる
では、本日のまとめに入ります📋
家一軒という舞台を存分に活かした仕掛けの数々🏡
日記や手紙という「第三者に読まれることを想定していない文章」が放つスリルと、読解への挑戦📔
東野先生、少しくらい他の作品に取っておけばいいのに・・・と要らぬ心配をしちゃうくらい(笑)これでもかとばかりにアイデアを詰め込んだ、謎解き好きにとってこの上なく贅沢な作品がコレなんです!
脱出ゲーム的な世界観が好きな方、一緒にこの世界に埋没しませんか?
***************🔑🕰️📜
最後に余談ですが、数年前に初めて「リアル脱出ゲーム」の会場に行き、謎解きに挑んだ私は60分後、スタッフの方にこう言われました。
「残念ながら失敗です。あなたはこの部屋に永遠に閉じ込められ、そのまま命を落とすことになるでしょう・・・」
いやちゃんと帰してもらいましたけど。
でも今も行くたびに思うんですよね。
ああここはーー「むかし私が死んだ家」って。
変なオチつけてすみません(しょうもない)。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
さて次はなんの本、持ってこようかな🤔📚

ちょっと怖いけど、浸れます

後味も悪くないし、映像化に向いてそう🎞
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
素晴らしい読書体験がたくさんの人に訪れますように✨
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【おわりにーー東野圭吾さんの訃報を受けて感じたこと】
この小説、実写化するなら役者さんは誰がいいだろう、と何年も楽しく想像してきました。でも今は、真相を解明する主人公の男性に、若き日の東野圭吾さんが重なります。東野さん、ご自身が生み出した数々の名探偵とイメージが重なる、精悍な方でしたよね。この作品でも主人公は、知識と思考力をフル回転させたものの、悲劇的な真相が見えてからは、沙也加に伝えるべきか葛藤します。そんな人間臭さがまた魅力です。
真実は時に人を傷つけますが、向き合うことで前に進めるというのは東野作品共通のメッセージに思えます。だからこそ私はラストに救いを感じ、決してハッピーエンドとは言えないこの作品を何度も読み返してしまうのかもしれません。
理系の精緻な構造と、人の心の温かさ。その絶妙な同居と相乗効果で多くの読者を獲得した偉大な作家・東野圭吾さん。今はただ惜しい。悲しい。けれども読み続けることで感謝を伝えたいと思います。
何度も救われました。
心から、ありがとうございました。
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🕵分けあいたい、ミステリの面白さ!(マガジン)
🔍ミステリ愛好家です。ミステリについて書いた記事をまとめています。主に小説、少し映像作品についても。
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