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【時事】第3回ペンギン先生の違和感教室 第5回目

【第5回目以降について】

第3回の第4回目で、問題の違和感を書いた話としては一度、完結しています。

そのため、第3回の第5回目以降は、内容の性質が変わります。

問題そのものは、すでに前の話で出揃っています。

この先は、答えを探す話ではありません。

「考えてしまったあと」を見ていく試みです。

ペンギン先生は、第3回ではもう問題の話をしません。

問題の話は終わっても、考えることは、まだ終わっていないからです。

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見るって、何が変わるんだろう

教室。朝。

一般人ちびが窓の外を見つめたまま、動かない。

昨日の会話が、まだ頭の中でぐるぐる回っている。

痛みは、値札のように、誰かに貼りついています

私たちは、その値札を見ないまま、レジを通ります

一般人ちび
「……見る、か」

ペンギン先生
「…何か、考えていますか」

一般人ちびが、ゆっくりと振り返る。

一般人ちび
「先生…見たら、何か変わるの?」

ペンギン先生が、お茶を啜る。

ペンギン先生
「見る、ですか」

一般人ちび
「うん。痛みを見たら、何が変わるの?」

沈黙。

ペンギン先生は、すぐには答えない。

その時、教室のドアが開いた。

制度くん
「見ることは大事です!」

制度くんが、いつもの明るさで入ってくる。

一般人ちび
「制度くん!」

制度くん
「問題を知ることが第一歩なんです!」

一般人ちびが、少し前のめりになる。

一般人ちび
「知ることが?」

制度くん
「はい! 知らなければ、何も始まりません!」

制度くんが、ホワイトボードに向かう。

制度くん
「見ることで、意識が変わります! 意識が変われば、行動が変わります!」

一般人ちびの表情が、少し明るくなる。

一般人ちび
「じゃあ、見ればいいんだ!」

制度くんが、力強く頷く。

制度くん
「そうです! まずは見ることからです!」

ペンギン先生
「…そうですか」

ペンギン先生の静かな声が、教室に落ちる。

制度くんと一般人ちびが、同時に振り返る。

ペンギン先生
「見たら、何が変わりますか」

制度くん
「え…」

ペンギン先生
「見ても、何も変わらないかもしれません」

一般人ちびが、固まる。

一般人ちび
「…え」

ペンギン先生が、お茶を置く。

その音だけが、教室に響く。

【空気が止まる】

一般人ちびが、声を上げた。

一般人ちび
「見たら、意識が変わるんでしょ!?」

制度くん
「はい! 問題を知ることで、考えるようになります!」

ペンギン先生
「考えるようになる、とは?」

制度くんが、少し戸惑う。

制度くん
「えっと…問題だと思うようになる、とか…」

ペンギン先生
「思っても、何も変わりませんか」

一般人ちび
「…え」

制度くん
「いや、でも、意識が変われば…」

ペンギン先生
「意識が変わると、何が変わりますか」

【沈黙】

制度くんが、言葉に詰まる。

一般人ちびも、黙り込む。

ペンギン先生が、窓の外を見る。

ペンギン先生
「意識が変わっても、レジの向こうは変わりませんね」

一般人ちび
「…」

一般人ちびが、小さく呟く。

一般人ちび
「でも、見ても私には何もできないし…」

ペンギン先生
「そうですか」

一般人ちびが、顔を上げる。

一般人ちび
「え…そうですかって…」

ペンギン先生
「見ても、何もできませんか」

一般人ちび
「だって、私一人が何かしても…」

ペンギン先生が、静かに問いかける。

ペンギン先生
「では、見ないことは?」

一般人ちび
「…見ないこと?」

ペンギン先生
「見なければ、何もしなくてよい、ということですか」

一般人ちびの手が、止まる。

一般人ちび
「…」

制度くんも、うつむく。

沈黙が、教室を満たす。

制度くんが、勢いよく顔を上げた。

制度くん
「でも、知らないよりは知ってる方がいいですよね!?」

ペンギン先生
「知る、ですか」

制度くん
「はい! 見ることは、知ることです!」

ペンギン先生
「見ることと、知ることは同じですか」

制度くん
「え…」

ペンギン先生が、一般人ちびに視線を向ける。

ペンギン先生
「あなたは、レジの向こうを見ていましたか」

一般人ちびが、小さく頷く。

一般人ちび
「…見てた」

ペンギン先生
「知っていましたか」

一般人ちびが、首を横に振る。

一般人ちび
「…知らなかった」

ペンギン先生
「では、見ることと知ることは」

一般人ちび
「…違う」

制度くんが、ぽつりと呟く。

制度くん
「見ても、知らない…」

ペンギン先生が、お茶を啜る。

ペンギン先生
「そうですね。見ていても、見えていないことがあります」

一般人ちびが、机を叩いた。

一般人ちび
「じゃあ見ても意味ないじゃん!」

ペンギン先生
「意味がない、ですか」

一般人ちび
「だって、何も変わらないんでしょ!?」

ペンギン先生
「何も変わらない、とは?」

一般人ちびの声が、震える。

一般人ちび
「見ても、痛みは消えないし、私には何もできないし…」

ペンギン先生
「そうですね。見ても、痛みは消えません」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生が、静かに続ける。

ペンギン先生
「では、見ないことは」

一般人ちび
「…見ないこと?」

ペンギン先生
「見えていない痛みは、ありますか」

一般人ちびが、小さく答える。

一般人ちび
「…ある」

ペンギン先生
「あなたにとって、ありますか」

一般人ちびの息が、止まる。

一般人ちび
「…」

ペンギン先生が、窓の外を見る。

遠くに、コンビニの看板が見える。

ペンギン先生
「見えていないものは、あなたにとって『ある』のでしょうか」

一般人ちび
「…ない」

その言葉が、空気に溶ける。

制度くんも、何も言えない。

一般人ちびが、小さく震える声で問う。

一般人ちび
「見たら…痛くなるの?」

ペンギン先生
「痛くなる、ですか」

一般人ちび
「見たくないものを見たら、嫌な気持ちになるじゃん」

ペンギン先生
「そうですね」

一般人ちびが、自分の手を見つめる。

一般人ちび
「だから、見ない方がいいんじゃ…」

ペンギン先生が、静かに問いかける。

ペンギン先生
「では、あなたが見ない間、痛みは?」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生
「あなたが痛くならないために、見ないことは」

一般人ちびが、うつむく。

一般人ちび
「…誰かが痛んでる」

【沈黙】

窓の外から、風の音だけが聞こえる。

制度くんが、小さく身体を震わせている。

一般人ちびが、制度くんに向き直る。

一般人ちび
「制度くんは見たら意味あるって言ったじゃん!」

制度くん
「それは…えっと…」

一般人ちび
「見たら何が変わるの!?」

制度くんが、小さくうつむく。

制度くん
「ボクも…わかりません」

一般人ちび
「え…」

制度くん
「見ても、何が変わるのか…」

制度くんの声が、震えている。

制度くん
「でも、見ないままでいいのかも…」

ペンギン先生が、静かに頷く。

ペンギン先生
「そうですか」

【誰も答えを持たない空気】

三人とも、黙り込む。

教室に、重い沈黙が落ちる。

一般人ちびが、最後の力を振り絞るように問いかける。

一般人ちび
「先生は!? 見たら何が変わると思うの!?」

ペンギン先生が、お茶を置く。

ペンギン先生
「…わかりません」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生
「ただ、一つだけ気になるのは」

一般人ちびが、息を呑む。

一般人ちび
「何?」

ペンギン先生が、窓の外を見たまま答える。

ペンギン先生
「見えていない痛みは、あなたにとって『ある』のでしょうか」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生
「それとも、『ない』のでしょうか」

一般人ちびが、何も言えない。

制度くんも、黙っている。

夕陽が、教室を橙色に染め始めている。

教室。夕暮れ。

一般人ちびが、小さく呟く。

一般人ちび
「…先生、見ても何も変わらないなら」

ペンギン先生
「ええ」

一般人ちび
「見ない方が楽だよね」

ペンギン先生
「そうですか」

一般人ちびが、窓の外を見る。

一般人ちび
「でも…」

ペンギン先生
「でも?」

一般人ちび
「見ないままでいいの?」

ペンギン先生が、お茶を啜る。

ペンギン先生
「さあ。わかりません」

【沈黙、ペンギン先生が窓の外を見る】

遠くに、コンビニの明かりが見える。

レジの前に、人が並んでいる。

ペンギン先生
「見えていない痛みは」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生
「あなたにとって、『ある』のでしょうか」

一般人ちびが、小さく首を振る。

一般人ちび
「…わかんない」

制度くんも、ペンギン先生も、何も言わない。

夕陽が沈んでいく。

教室が、静かに暗くなっていく。

【暗転】

(画面外から、小さな声で)

「見ても、何も変わらないかもしれません」

(間)

「でも、見ないことは、確実に何かを隠します」

(間)

「見えていないものは、あなたにとって『ない』のです」


【第5回終】

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