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なぜ大学職員は経営人材になりにくいのか ー 経営企画は大学で最も謙虚さが必要なポジション ー

大学職員として働いていると、「経営視点が必要だ」「経営感覚を持たなければならない」と言われることがあります。

私自身、学生支援、学部運営、学部再編、経営企画、行政との連携などに携わる中で、以前よりも経営について考える機会が増えました。

その中で感じるのは、経営人材は簡単には育たないということです。

経営企画とは企画書を作る仕事ではありません。

データを分析するだけの仕事でもありません。

大学という複雑な組織の未来を考え、人と組織に伴走しながら変化を実装し、組織を学習させ続ける仕事です。

だからこそ私は、経営企画を大学の中で最も骨を折る仕事の一つだと思っています。

経営企画は「優秀な人」が行く部署ではない

経営企画というと、将来の幹部候補や優秀な職員が集まる部署というイメージがあります。

しかし、実際に必要なのは優秀さそのものではありません。

必要なのは、

大学全体を理解しようとする力

です。

学生支援しか知らない。

教務しか知らない。

入試しか知らない。

財務しか知らない。

それぞれの領域では優秀でも、その視点だけでは大学全体は見えません。

経営企画に必要なのは、

自分の専門を語る力ではなく、自分の専門外を理解する力

です。

大学全体の最適解を考えるためには、多様な立場や価値観を理解しなければなりません。

経営企画を担うなら最低4領域は経験したい

私は一つの仮説を持っています。

経営企画を担うのであれば、最低でも4領域程度の経験は必要ではないか。

例えば、

  • 学生支援やキャリア支援などの現場領域

  • 教務や学部運営などの教育運営領域

  • 人事や財務などの管理部門領域

  • 入試・広報・IRなどの戦略領域

です。

経営企画が扱うテーマは、必ず複数部署にまたがります。

学生募集を考えれば教育の質が関係します。

教育改革を考えれば財務が関係します。

新規事業を考えれば人員配置や施設整備が関係します。

一つの部署から見える景色だけでは判断できません。

経営企画に必要なのは、

個別最適を超えて全体最適を考える視点

です。

そのためには、多様な現場を経験し、異なる立場を理解することが不可欠だと思います。

経営企画は大学の司令塔ではない

「経営企画が方針を出せば組織は動く」

と思っていました。

しかし現実は違いました。

大学には、

  • 学生

  • 教員

  • 職員

  • 執行部

  • 理事会

  • 行政

  • 地域社会

など多様な関係者がいます。

それぞれに正義があります。

それぞれに事情があります。

だから改革は命令では進みません。

どれだけ立派な中期計画を作っても、現場が納得しなければ実現しません。

経営企画の役割は、

組織を動かすことではなく、組織が動ける環境を整えること

だと思っています。

本当に必要なのは伴走力

経営企画に必要なのは分析力だけではありません。

企画力だけでもありません。

私が最も重要だと思うのは、

伴走力

です。

現場を理解する。

教員の不安に耳を傾ける。

職員の悩みを理解する。

対話を続ける。

調整を続ける。

改革を押し付けるのではなく、改革に挑戦する人たちを支える。

経営企画とは管理する部署ではなく、

人と組織の変化に伴走する部署

なのだと思います。

学び続けられない人は向かない

経営企画に必要なのは知識量ではありません。

学び続ける力です。

少子化。

DX。

生成AI。

高等教育政策。

社会構造の変化。

大学を取り巻く環境は絶えず変化しています。

その中で過去の成功体験だけに頼ることはできません。

重要なのは、

「知っていること」

ではなく、

「学び続けること」

です。

経営企画の仕事は、常に変化と向き合う仕事だからです。

インプットだけでは価値にならない

一方で、学ぶだけでも足りません。

本を読む。

研修に参加する。

他大学を視察する。

企業の事例を調べる。

それだけでは経営は変わりません。

必要なのは、

インプットをアウトプットへ変換する力

です。

学んだことを施策に落とし込む。

組織に伝える。

実行する。

成果につなげる。

インプットのないアウトプットは思いつきです。

アウトプットのないインプットは自己満足です。

両者を循環させる力が求められます。

実装力がなければ大学は変わらない

大学では議論が長くなりがちです。

慎重さは重要です。

しかし、どれだけ議論しても実際にやってみなければ分からないことがあります。

だから経営企画には、

実装力

が必要です。

考えるだけではなく動く。

調べるだけではなく試す。

企画するだけではなく実現する。

経営企画とは、未来を構想する部署であると同時に、未来を実装する部署でもあります。

小さく始め、トライアンドエラーを回す

優れた経営企画担当者は完璧を待ちません。

まず小さく試します。

一部の学部で試す。

少人数で試す。

限定的に導入する。

結果を検証する。

改善する。

再挑戦する。

このサイクルを回します。

重要なのは失敗しないことではありません。

小さく失敗し、小さく学び、大きく育てること

です。

組織変革は一度の施策で実現するものではありません。

仮説と検証の積み重ねによって実現するものです。

マネタイズ視点を持てるか

経営企画にはもう一つ重要な視点があります。

それは、

マネタイズ視点

です。

大学職員は教育的価値を考えることに慣れています。

しかし経営企画は、

  • 財源はあるのか

  • 継続できるのか

  • 投資対効果はあるのか

  • 人員を確保できるのか

も考えなければなりません。

教育的に良いだけでは続きません。

収益性だけでも大学の存在意義は失われます。

経営企画に必要なのは、

教育価値と経営価値を両立させる視点

です。

静的な経営管理をスパイラルアップへ変える

多くの大学の経営管理は静的です。

計画する。

実行する。

評価する。

そして終わる。ほとんどが評価もできないでそのままの場合も多いです。

しかし、本当に必要なのは、

計画する。

実行する。

評価する。

学習する。

改善する。

再実装する。

この循環です。

つまり、

管理から学習へ。

評価から改善へ。

維持から進化へ。

変えていくことです。

経営企画の本質は、

組織が学び続ける仕組みを作ることにあります。

私はこれを、

大学経営のスパイラルアップ

だと考えています。

小さな挑戦を行う。

結果を検証する。

知見を蓄積する。

改善する。

再挑戦する。

組織全体がこの循環を回せるようになったとき、大学は初めて持続的に成長できるのだと思います。

経営企画に最も必要なのは謙虚さである

そして最後に、私が最も重要だと思うことがあります。

それは、

謙虚さです。

経営企画は万能ではありません。

大学には多くの専門家がいます。

現場のことは現場が知っています。

財務のことは財務が知っています。

教務のことは教務が知っています。

経営企画だから何でも分かるわけではありません。

むしろ、

「分からないことは分からない」

と認められる人の方が強い。

各部署の声に耳を傾ける。

現場から学ぶ。

質問する。

対話する。

答えを持つことよりも、答えを探し続けること。

それが経営企画には必要です。

おわりに

私は経営企画を花形部署だとは思っていません。

経営企画とは、

  • 最低4領域以上の経験を持ち

  • 大学全体を理解しようと努め

  • 学び続け

  • インプットとアウトプットを循環させ

  • 小さく実装し

  • トライアンドエラーを回し

  • 教育価値と経営価値を両立させ

  • 組織学習を促進し

  • 人と組織に伴走する

仕事です。

そして何より、

分からないことを認め、現場の知恵に学びながら、大学の未来のために誰よりも骨を折る仕事です。

経営企画とは大学を管理する仕事ではありません。

大学が学び続け、挑戦し続け、進化し続けるためのスパイラルを設計する仕事。

だからこそ私は、経営企画こそ大学における真の経営人材が試される場所だと考えています。

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