資金繰りに詰まって、5,000万円の仕事を無理やり取った。粗利は、ほとんど残らなかった
5,000万円規模、4ヶ月取り組んだ仕事で、粗利がほとんど残らなかった。
特注家具・内装の世界で、これは"事故"に近い。
でも、本当の問題は、その数字じゃなかった。
前回、「全部話す」と書いてしまった。
だから、いちばん痛いところから話そうと思う。
表面の話
去年の冬から春にかけて、4ヶ月かかった案件があった。規模は、5,000万円ほど。
長期の案件だったから、最初に、着金として半金を入れてもらった。
ところが、その半金の根拠になった概算見積もりが、あとで見れば、すでにかなりの指値を食らった状態で通っていた。自分も、ざっと目は通していたつもりではいたが、結果的に気づけなかった。
本来なら、仕入れの段階でしっかりと原価を詰めるべきだ。追加の変更が出るたびに、「この変更には、これだけかかります。進めていいですか」と顧客に確認し、金額を出す。仕様が決まっているのに、設計から降りてくる変更を、ただ受け続けてはいけない。
その当たり前が、組織として、回っていなかった。いろんなことが、少しずつ、噛み合わなかった。
決算が近づき今期の案件台帳を、改めて見直していた時、その案件の粗利の欄をみてため息が溢れた、何度見直しても、数字は変わらなかった。
「安く受けたんだろう?」いや、半分は、当たり
正直に書く。あの案件、短期的に受けたい事情があった。
資金繰りだ。
あのお客さんとは、長い付き合いで、こちらの懐具合まで察してくれる関係性。相談しておけば半金を先に入れてくれる。だから、まとまったお金が早く入るという算段が、立っていた。
売上が欲しかったのはもちろんだが、むしろ一時のキャッシュが必要だった。
だから自分は、担当に指示を出していた。「先方の希望金額でまず受けろ」と。
その値段でも、自分ならちゃんと粗利を残せる。そういう、根拠のある自信があったからだ。
でも。
その自信は、所詮自分のものでしかなかった。
同じ値段で受けて、同じように粗利を残す。それは、自分の頭の中にだけあった芸当で、部下には伝わっていなかった。いや、彼らの手が届く範囲を遥かに超えていた。
そこに気づかないまま、「受けろ」とだけ、言ってしまった。
いちばん、まずかったのは、たぶんそこだ。
だからといって、担当者は悪くない
案件を担当した人間は、たぶんこう思っている。
「自分なりに、精一杯やった。粗利は減ったけど、これだけ残せたんだから、いいじゃないか」。
その人を、責めることはできない。
うちには、粗利を残しても残せなくても、本人の処遇が、何ひとつ変わらない仕組みしかなかったからだ。
結果に、責任が伴わない。
人は、有益性のバランスで動く生きものだ。
だったら「これだけ残ればいい」と考えるのは、むしろ、自然なことだ。
そう考えるのが当たり前の会社に自分が、してしまっていた。
本当のことを言うと、報告を受けたとき、最初に腹が立った相手は、彼じゃなかった。自分にだった。
核心は、教育と制度
今回のことは、ひとつの案件の失敗、というだけの話じゃない。
自分にできて、部下にできなかった。その差を、渡す仕組みつまり、教育。
結果が、処遇に結びつかない。それを、結びつける仕組みつまり、制度。
そのどちらも、20年やってきて、自分は、まだ作れていなかった。
最初は正直、「自分がやっていれば、こうはならなかった」と思った。それは、たぶん、本当だ。でもそれを口にしている時点で、もう負けている。
自分にしかできない芸当の上に会社を立てているうちは、その会社は、自分の背丈より、大きくはならない。
たぶん、あなたも、知っている
もし、あなたも経営者なら、わかると思う。
「自分がやれば、早いし、確実」。
その通りだ。でも、全部を自分で抱えていたら、会社は、いつまでも自分の体力の分のままだ。自分任せにやれば、崩れる、自分の背丈以上には成長しない。しかし人に任せるのは怖い。
この出口のない板挟みが、いちばん苦しい。
だから、「仕組み」を変える
正直に言うと、こういうことが起きたのは、一度じゃない。何度か、起きていた。
見て見ぬふりをしていた、と言われれば、その通りだと思う。もっと早く、手を打つべきだった。
人は、有益性のバランスで動く。ルールが曖昧なままだと、どこに力を入れればいいのか、迷ってしまう。
だったら、自分がやることは、はっきりしている。
本人が、特に意識しなくても「粗利を残すこと」に自然と向かっていって、それが、ちゃんと本人の喜びや手取りになる。そういう仕組みを、作ること。
これこそが、経営者の、本当の仕事なんだと思う。
目標を決めて、約束する。結果を見定めて、目標との差異を計測する。
達成すれば、処遇が変わる。届かなければ、上がらない。
そういう仕組みを、ようやく、作りあげた。
来月、社内で発表する。
いまAIと一緒に、自社を丸裸にしている
ちょうど今、自社の数字を、一円単位で分解している。どの案件の、どの費目で、粗利が、どこへ溶けていったのか。
その相棒が、AIだ。〔この"実況"は、また別の回で〕
人ひとりなら何日もかかる作業が、対話しながら、数時間で終わる。
そして見たくなかった現実も、ちゃんと、目の前に出てくる。
個人技から組織へ
20年、ほとんど個人技でやってきた。
でもあの仕事の傷が、はっきりと教えてくれた。
これからは、組織で勝つ。
粗利を追うのは、お金のためじゃない。
必ず近い将来、一緒に働くメンバーに、
ちゃんと還元できる会社にするためだ。
うまくいくイメージは湧いている。
いつまでかかるかはまだわからない。
でも、もう自分ひとりで、抱える時代じゃない。
DW
*次回予告:AIと一緒に、自社の数字を丸裸にした話*
