国連の財政破綻と日本の分担金〜払い損で終わらせないために〜
国連のグテレス事務総長が、加盟国に書簡を送った。2026年1月30日。「差し迫った財政崩壊の危機にある」「7月までに資金が枯渇する可能性がある」。国際機関のトップが「うちは潰れるかもしれない」と言っている。
数字
2025年末時点で、加盟国の未払い分担金は15.6億ドル(約2400億円)。前年の倍以上。国連の年間通常予算が約37億ドルだから、4割以上が回収できていない。
この未払いの95%以上が米国だ。
通常予算だけで約22億ドル。PKO予算の滞納を足すと約40億ドル。2025年分はまるまる払わず、2026年分も未納。2月になってようやく約1.6億ドルが振り込まれたが、40億ドルに対して4%。
トランプ大統領は「国連は可能性を発揮していない」「簡単に解決できる」と言った。いつ、いくら払うかは言わなかった。国務省の高官は「職員への高すぎる給与、年間3.4億ドルの会議費。アメリカの税金をそんな無駄遣いに使う気はない」と切り捨てた。
そして2026年1月7日、トランプ大統領はWHOを含む31の国連機関と35の非国連組織、合計66の国際機関からの脱退を指示する大統領令に署名している。分担金を払わないどころか、国連システムそのものから離れようとしている。
国連側の問題
とはいえ、米国だけを責めても仕方がない。国連の構造には、払う側の不満を生む土壌がある。
安保理の常任理事国は1945年の戦勝5カ国が80年そのまま座り続けている。拒否権つきで。ウクライナ侵攻でもガザ情勢でも、ロシアと中国が拒否権を使って安保理は止まった。改革しようにも、その改革を止める権限が既得権側にある。詰んでいる。
組織の肥大化もある。国連システム全体で30以上の専門機関や基金が存在し、年間支出は640億ドル規模。それぞれにポストがあり、「このトップはアフリカ」「この次長はアジア」という暗黙の割り振りがある。統廃合すれば誰かのポストが消える。リストラの議決権をリストラされる側が持っている組織で、スリム化が進むわけがない。
もう一つ、会計ルールの問題がある。
国連には「年度末に使い残した分担金を、翌年度の各国の分担金から差し引いて返還する」という規則がある。予算を組んだが、入金が遅れて使えなかった。その「使えなかった分」は帳簿上「未使用」として扱われ、翌年各国に返す。ここまでは分かる。
問題は、そもそも入金されていない分担金まで「未使用」にカウントされる点だ。米国が8億ドル払わなかった。国連はその8億ドルを使えなかった。すると帳簿上は「8億ドル未使用」となり、翌年、各国の分担金からその分が差し引かれる。受け取っていない金を返す義務が発生する。
グテレス自身がこれを「カフカ的なサイクル」と呼んだ。2026年は約3億ドル、2027年には約6億ドルがこのルールで消える見通しだと言っている。「破産へのレース」という表現も使った。
国連のジュネーブ事務局長もこの規則を「奇妙だ」と公言し、改革を求めてきたが、何年も実現していない。
100年前の既視感
この構図には見覚えがある。
1920年に設立された国際連盟は、提唱国である米国が議会の反対で参加しなかった。大国不在のまま運営を続け、日本やドイツ、イタリアが次々と脱退し、機能不全に陥り、第二次世界大戦を防げずに消滅した。
国連は国際連盟の失敗を踏まえて、米国やソ連を最初から組み込んで作られた。その米国が分担金を払わず、31もの国連機関から脱退を宣言している。100年前とまったく同じとは言わないが、最大の出資者が抜けていく構図は重なる。
中国の立ち回り
米国が空けた椅子を、じっと見ている国がある。
中国の国連通常予算分担率は、1990年代には1%以下だった。それが2025〜2027年には20%まで上がり、米国の22%に肉薄している。PKO予算でも米国に次ぐ第2位。分担金は期限内にきちんと払っている。
影響力も着実に広げている。国連の専門機関15のうち、FAO(食糧農業機関)、ITU(国際電気通信連合)、UNIDO(工業開発機関)のトップポストを中国人が占めてきた。WHOのテドロス事務局長は中国人ではないが、中国との関係の深さが繰り返し指摘されている。
米国が金を出さず、機関から抜けていく。その空白を中国が埋める。国連の意思決定に中国の意向がさらに反映されやすくなる。日本にとって、これは「国連が潰れるかどうか」より切実な問題かもしれない。
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