見出し画像

辺野古沖転覆事故、特別委は開いたが〜可決から一週間の記録〜 辺野古転覆事故・第41稿

器のまわりで

七月十三日、沖縄県議会が特別委員会の設置を全会一致で可決した。第40稿でそう記録した。百二十日目に、公の調べる場所が一つ増えた、と。

その日から一週間のあいだに、器のまわりで三つのことが起きた。中身の調査は、まだ始まっていない。始まる前の一週間を、順に置く。


同じ日の朝

可決の数時間前、七月十三日の午前、玉城知事は県庁で記者団にこう述べていた。ああいう映像が外部に出るというのは、そもそもどうなのか。産経新聞の記者が真意を問うと、あれは捜査の証拠資料であり、映像は確認したがコメントは差し控える、と答えた。

七月三日に産経新聞が公開した、港の防犯カメラ映像のことである。

この映像の公開をめぐっては、立場の表明が四つ出揃った。移設に反対する地元団体は、チラシで、市民のプライバシーが危ない、誰が流出させたのか、と反発した。作家の目取真俊氏は、ブログで、遺族は望んでいたのだろうか、と疑問を書いた。そして知事が、外部に出るのはそもそもどうなのか、と述べた。

遺族は、どう言っているか。父親は公開前に、編集前の全編映像を確認している。母親は産経の取材に、公開され事実が明らかになった社会的意義は大きく、問題があるとは考えていない、と答えていた。

並べると、形が見える。公開を疑問視した三者は、いずれも遺族の外側にいて、遺族への配慮や手続きを理由に挙げた。当の遺族は、公開を肯定している。誰のための疑問なのかを、僕は判定しない。配置だけを記録する。第35稿でこの映像の存在を書いたとき、僕自身は映像を見ないまま、報道の記述だけを頼りに書いた。見るか見ないかの選択は、書く側にもある。知事は確認した上で疑問視し、父親は確認した上で公開に問題はないとした。同じ「確認した」から、逆の言葉が出ている。

映像が何を明らかにしたのかは、遺族の七月十日の投稿が具体で示している。三月十七日の校長会見では、出航後は状況がつかめず、救急車や警察車両が来ることで事実がすべて分かった、と説明されていた。映像と産経の報道は、十時三十八分に引率教員が警察と立ち話をする姿を示した。学校が最初に連絡を受けたとされる十一時三分より、前である。遺族はこの食い違いを挙げ、再度の説明が必要だと書いた。疑問視されている映像は、現に、説明と記録の突き合わせを一つ可能にしていた。

もう一つ。捜査の証拠資料、という知事の言葉。第39稿と第40稿で、捜査中という言葉の働き方を三つ数えた。議会が調べない理由。関係者が答えない理由。付帯決議に入って、調査の条件。今回、四つ目が現れた。映像の公開を疑問視する理由、という働き方である。

同じ日の午後、議会は全会一致で器を開けた。朝、県の最高責任者は、開かれた映像を疑問視していた。開く方向と閉じる方向が、同じ日に並んだ。

遺族の返答

可決の日、遺族は投稿を更新した。特別委員会の設置が全会一致で可決されました、会派を超えたご判断に、遺族として心より感謝申し上げます、と。そして、こう続けた。今できることから速やかに進み、二度と同じ事故が起こらない仕組みにつながることを願っています。

速やかに、の一語に、七月十日の投稿が響いている。時間の経過とともに記憶は薄れ、資料は失われ、風化だけが進んでいく。あの認識からの、速やかに、である。報道によれば、委員会の本格的な議論は九月からと見込まれている。九月十三日には知事選がある。器が置かれてから中身が入るまでの二カ月足らずの空白を、遺族はこの一語で先回りして埋めようとしたのだと、僕は読んだ。

ここから先は

1,950字
この記事のみ ¥ 280
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

メンバーシップは医療マガジン、有料日記を全部読めます。 僕を応援してください!お願いいたします! 毎…

ちょっと応援プラン(全部プラン②)

¥2,000 / 月
あと16人募集中

もっと応援プラン(全部プラン③)

¥3,000 / 月
あと31人募集中

どんと応援プラン(全部プラン④)

¥9,999 / 月

全部プラン

募集終了

よろしければ応援お願いします!チップはnote更新用のPC購入費用に当てる予定です。よろしく!