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製薬マネー「透明化」の逆説〜ルールを守った医師が標的になる構造〜

東大大学院教授が性風俗接待で逮捕された後である。

慶應大学医学部の製薬マネーを「隠れCOI(利益相反)の闇」と断じるインフォグラフィックが拡散した。29万インプレッション。英語版まで作られ、海外にも流れていった。

二つの事案は、中身がまったく違う。片方は贈収賄が疑われる違法行為。もう片方は制度に従って開示された適法な講演料である。


公開済みデータを「隠れ」と呼ぶ矛盾

投稿が根拠にしているのは、医療ガバナンス研究所が運営する「YEN FOR DOCS」というデータベース。製薬会社が医師個人に支払った講演料・コンサル料・原稿料が、誰でも検索できる形で掲載されている。

元をたどれば2011年、日本製薬工業協会が策定した透明性ガイドライン。2014年以降、加盟製薬会社は支払い情報を毎年公開することが義務づけられている。「隠れ」ているどころか、制度として開示を求められている情報だ。

日本の制度は個人名と金額まで開示する点で、国際的にも踏み込んだ設計と言われる。米国のSunshine Actや欧州のEFPIAコードと比較しても、日本は1円単位で個人名・会社名・件数まで全公開する。それを「隠れ」と呼ぶ倒錯は、制度の経緯を知らないか、知っていて無視しているかのどちらかだ。

投稿は「情報開示されているか?透明性の確保が重要です」と自ら書きながら、その開示されたデータを使って「隠れCOI」と呼ぶ。自家撞着である。

リウマチ領域でKOLに集中するのは構造的必然

慶應大学リウマチ・膠原病内科の金子祐子教授は2022年、23社・179件・約2100万円を受け取り、C項目(医師個人への謝礼)ランキングで断トツの1位。

この数字だけ見れば「多い」と映るのはわかる。ただ、背景を外して数字を並べれば事実は歪む。

リウマチ・膠原病領域は、生物学的製剤の登場以降、競合薬が乱立している分野だ。国内承認されている生物学的製剤は現在10種類以上。各社が自社薬の使い分けを学会で訴求しなければ売上に直結しないため、講演会が頻繁に開かれる。そこで最も講演を依頼されるのが、慶應教授かつ副病院長かつ学会幹部というポジションの医師。KOL(キー・オピニオン・リーダー)への集中は、市場構造から来る必然であって、個人の問題ではない。

179件を12ヶ月で割れば月15件。外来・病棟・研究・学会運営と並行してこなす密度である。空き時間に原稿を書き、移動中にスライドを直す。多忙ではある。違法ではない。

写真付きで実名投稿される理由がない

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