Fable 5が消えた日 政府が商用AIを店頭から下ろした
6月12日17時21分、Anthropicに商務省からの書簡が届いた。Fable 5とMythos 5を、外国籍ユーザー全員に対して停止せよ。輸出管理指令だった。
前回、僕はFable 5とOpus 4.8に同じ構成案を渡す比較実験を始め、数週間かけて書き味を見ると予告した。その観測期間の途中で、被験者の片方が外的要因で消えた。観測対象が観測中に消滅する。珍しい事態だ。
一般公開された商用AIモデルを、政府が事後的に店頭から下ろさせた。報道の知る限り、初めてのことだ。
何が起きたか
書簡の差出人は商務長官ルトニック。宛先はCEOのダリオ・アモデイ。内容は、Fable 5とMythos 5を米国外のあらゆる場所、および国内の全外国人に対して輸出管理の対象とする、というものだった。
外国籍だけを実時間で選別する手段がない。だからAnthropicは全顧客向けに両モデルを落とした。日本にいる僕も、その巻き添えで使えなくなっている。他のモデルは影響を受けない。新規セッションはOpus 4.8が引き継ぐ。
問題のFable 5は、API価格が入力100万トークン10ドル、出力50ドル。前回触れたとおり、Mythosクラス先行提供時の半額以下まで下げたばかりだった。値下げで商業展開のアクセルを踏んだ直後の、急停止になる。
政府が示した根拠は、Fable 5のジェイルブレイク手法を把握したという認識だけ。書簡に具体的な詳細はなかった。
証拠は口頭だけ
Anthropicの反論が鋭い。政府が提示したのは、特定のコードベースを読ませてソフトの欠陥を修正させる、という手法の口頭証言のみ。業界中で日常的に使われている用途だ。Mythos固有の危険性を与えるものではない、と同社は主張する。
ここで皮肉が刺さる。コードベースを読ませて欠陥を直させる。これはまさにコーディング用途で、僕がブログ運用で控えている「過去記事アーカイブを丸ごと読ませる実験」と同じ穴から出ている。僕のアーカイブは2,800本を超えた。連載の続きを書くとき、過去回と矛盾していないか確認する作業が一番重い。長い文脈を落とさず読み切る力。それが国家安全保障の名で止められる武器にもなり、ブログの連載管理にもなる。
きっかけも判明している。別の企業が「Mythosをジェイルブレイクできた」と主張した。それを受けて商務省が動いた。当局者がAxiosにそう語っている。
ただし、その「別の企業」が誰かは明かされていない。競合潰しの意図か、善意の脆弱性報告か。外形からは区別できない。狭いジェイルブレイク一件で、数億人に展開済みの商用モデルを回収する。この基準が業界全体に適用されれば、全フロンティア企業の新規展開が事実上止まる。Anthropicはそう警告している。
これは単発ではない
ここからが本題だ。今回の停止を一個の事件として読むと、像を見誤る。
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