「オスカー・ワイルド」600字のコラム
We are all in the gutter, but some of us are looking at the stars.
"Lady Windermere's Fan" by Oscar Wilde
「ぼくらはみな溝にはまっているようなものだが、なかには夜空の星を見上げている者だっているのだよ」
「ウィンダミア卿夫人の扇」 オスカー・ワイルド
オスカー・ワイルドはアイルランド生まれの文筆家。詩、童話、小説、戯曲、随筆、評論と文字を使って書き記すものはなんでも手がけたが、生前はとくに戯曲家として成功を収めた。それもそのはず、ワイルドの芝居には役者の口からでたとたん、気の利いた警句として通用しそうな名台詞がふんだんにちりばめられている。
辞書による警句の定義は「奇抜で巧みに鋭く心理をつかんだ簡潔な語句」。それなら同作の I can resist anything but temptation.(「ぼくは誘惑以外のものには決して屈しない」)の方がそれらしいかもしれないが、口にするとさっそく友人に「おやまあ、今夜はずいぶんとロマンチックな気分らしいね」とまぜっかえされる今回の一言にこそ、逆説と皮肉の名手と謳われた作家の素顔が窺えるのではないか。ワイルドは『サロメ』、『ドリアン・グレイの肖像』、『獄中記』ばかりでなく、『幸福な王子』の作者でもあった。
警句集も何種類か刊行されているので、英語の会話で話題に不自由したらワイルドを引用して感想、意見を求めるのも妙案。Most people are other people. Their thoughts are someone else's opinions, their lives a mimicry, their passions a quotation.では重すぎるかもしれないが、Fashion is a form of ugliness so intolerable that we have to alter it every six months. ともちかければ、気の利いた返事が期待できそうだ。
朝日ウィークリー 2007年2月4日
