【地銀は黙ってる】固定金利4%超えより家主が焦るべき数字
あなた、固定金利が4%を超えたというニュースだけ見て、ほっとしていませんか。損してませんか、と聞かれたら「はい」かもしれません。今すぐ見るべき数字は金利ではなく、地銀の稟議に載る「返済比率」、つまりDSCR1.35倍です。
若先生から、月曜の朝いちばんにLINEが来ました。
「先生、すみません。今朝のニュースで三井住友信託銀行が住宅ローンの固定31年を4.15%に上げたと見ました。僕はアパートローンのほうなんですが、担当から『金利、すこし厳しくなるかもしれません』とだけ言われて、くわしい話を教えてもらえません。2棟目の相談が来週月曜にあるんですが、この状況で行っていいんでしょうか」
診断から言います。行くこと自体はまったく問題ありません。ただし、あなたが本当に見るべき数字は4.15%という固定金利ではないんです。地銀の稟議台帳に載る「返済比率」、正確にはDSCR。これが1.3倍を切っているかどうか。金利の見出しに怯えて、この数字を見ないまま次の面談に行くと、通るはずの融資まで落とします。2026年8月時点の情報です。
【この記事でわかること】
・固定金利4.15%がアパートローン審査金利にどう連動するか
・地銀と信金、稟議書の"見る順番"のちがい
・DSCR(返済比率)の実際の計算式と地銀の合格ライン
・支店長決裁を通した私自身の症例数字
・借入バランスを今すぐ見直す処方箋
・金利上昇局面で警戒すべき予後シグナル
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💰 固定金利4.15%が動かした審査金利
三井住友信託銀行が2026年7月末、住宅ローンの固定31年を4.15%に引き上げました。みずほ、三菱UFJ、りそな、三井住友の主要行もあとに続き、4%超えが横ならびで定着しています。
ここで見立てをまちがえやすいのが、「住宅ローンの話だから、アパートローンには関係ない」という思いこみです。じつは直結します。銀行がお金を貸せるかどうかを判断するとき使うのは、いま出回っている実勢金利ではありません。内部でこっそり厳しめに設定した「審査金利」という別の数字を使います。この基準が上がると、同じ物件でも借りられる額そのものが小さくなります。
私が普段つきあいのある地銀数行に聞いてみたところ、アパートローンの審査金利は2025年末の2.8%くらいから、2026年8月時点で3.2%くらいまで上がっています。この0.4%の差、借入1億円ならざっくり年間40万円の開きになります。あなたの担当が「少し厳しくなる」と言葉をにごしたのは、この数字を言いたくなかっただけです。
今すぐ確認してほしいのは、あなたの担当がいう「審査金利」がいくつなのか、はっきり数字で聞き出すことです。
なぜ実勢金利ではなく審査金利を使うのか、理由はシンプルです。銀行は25年後、35年後の金利まで正確には読めません。だから将来の金利上昇分をあらかじめ上乗せして、返済が苦しくならない範囲でしか貸さないようにしています。この保守的な姿勢そのものは悪いことではありません。問題は、この数字を大家側にはっきり教えてくれない銀行が多いということです。

🏦 地銀と信金、稟議に出る温度差
ここは診察室でしか言わない話です。メガバンクの担当者は、あなたの年収や勤務先といった「属性」を稟議のいちばん上に置きます。ところが地銀・信金の融資課はちがいます。稟議書の一枚目にくるのは、物件が生む「返済比率」、DSCRです。
年収1,700万円の勤務医でも、DSCRが1.2倍を切れば地銀の支店長決裁はおりません。逆に年収800万円のサラリーマンでも、DSCRが1.4倍あれば信金は前のめりで動きます。地銀の担当者は「属性より物件を見ています」とは絶対に言いませんが、稟議書のならび順を見れば一目りょうぜんです。
かんたんに整理すると、こうなります。
・メガバンク → 年収や勤務先などの属性を最優先で見る
・地銀 → 属性も見るが、DSCRが基準に届かないと支店長決裁が止まる
・信金 → DSCRと物件の立地を重視し、属性はあとまわしになりやすい
実際に、私の取引地銀の融資課長にたずねたときの答えがこうでした。「正直に言うと、稟議書の1ページ目はDSCRの数字です。属性はその後ろに添える程度です」。この一言で、稟議の順番がどうなっているか、すべて説明がつきました。
属性のいい人ほど、この「良い負債・悪い負債」の分かれ目を教わっていません。かつての私もそうでした。融資の基礎として今も読みかえす一冊に『金持ち父さん 貧乏父さん』(Amazon)があります。属性ではなくキャッシュフローで負債の質を判断する、その見方はDSCRの考え方とほぼ同じです。1棟目を検討する前に読んでおくと、地銀の稟議書がなぜあの順番で組まれているのか、腹落ちが早くなります。

📊 返済比率という数字の正体
DSCRの計算式はシンプルです。年間家賃収入 ÷ 年間元利返済額。1.0倍を下まわれば、家賃だけでは返済しきれない赤字構造という診断になります。
地銀の内規は長らく1.2〜1.3倍が目安でした。しかし2026年8月現在、固定金利の上昇をうけて、私が取引する地銀のうち3行が合格ラインを1.35倍まで引き上げています。ここで私の症例です。2019年、1棟目のRC18戸を買ったとき、最初に出したDSCRは1.18倍で落ちました。自己資金を700万円積み増して借入額を圧縮し、DSCR1.32倍で出しなおして、そこでようやく通りました。
あなたの物件のDSCR、今すぐ計算したことはありますか。コメント欄で教えてください。金利という表面の数字ではなく、この比率をにぎっているかどうかで、次の面談の結果は変わります。
DSCRが基準を割ると、担当者は稟議書をいったん引っこめます。多くの場合、理由は「検討します」とだけ伝えられ、本当の否決理由は最後まで教えてもらえません。ここが、金利のニュースだけを気にしている大家がいちばん損をするポイントです。
似たような相談は、別の大家さんからも先週届きました。年収900万円、地方の木造アパートを検討していた方です。DSCRは1.29倍で、地銀の基準にわずかに届きませんでした。ところが物件のある信金に相談先を変えたところ、立地の評価が加点され、DSCR1.29倍のまま承認がおりました。金融機関によって見るポイントがちがう、というのはこういうことです。1行に断られても、それで終わりではありません。
面談の前に、次の3つだけでも確認しておいてください。
・いまの家賃収入(空室ぶんを差し引いた実効額)
・年間の元利返済額(ボーナス払いがあれば合算)
・上の2つを割ったときの数字が1.35を超えているか
この3行を紙に書いて面談にもっていくだけで、担当者の態度が変わります。準備してきた大家だと、相手にも伝わるからです。
若先生には、そのまま返信しました。「来週の面談は行っていい。ただし、着く前にこの3行を紙に書いて持っていってください」と。既読がついてから3分もしないうちに、「今晩中にやります」と返ってきました。数字さえ準備しておけば、金利のニュースに振りまわされずに面談を進められます。
💎 この続き(有料パート・限定公開)で手に入るもの
✅ 借入額・家賃収入別のDSCR早見表(コピペで自分の物件にあてはめられる)
✅ 支店長決裁が通ったPL・BSの実際の項目と数値
✅ 固定と変動、借入バランスを今すぐ見直す処方箋
✅ 金利上昇局面で私が実際に警戒している予後シグナル
ここから先で、地銀の稟議書に実際にのる数字と、私が支店長決裁を通したときの具体的な内訳を全部見せます。これを知らないまま次の面談に行くのは、正直かなりもったいないです。

🩺 支店長が見るPLとBS、実際の稟議数字
処方箋を出します。まず、あなたの物件の年間家賃収入と年間元利返済額を、次の早見表にあてはめてください。これは私が実際の融資案件で使っている、かんたん早見表です。

見てのとおり、借入1億円なら年間家賃収入780万円が地銀の合格ラインです。表面利回りだけで「8%取れています」と喜んでいても、空室率や修繕費を差し引いた実効家賃がこのラインを割りこめば、稟議は支店長の机で止まります。
私が実際に稟議を通した2棟目は、木造アパート24戸、借入1億2,000万円です。家賃収入は1,020万円でした。経費(管理費・修繕積立・固定資産税)を差し引いた実質家賃収入は880万円。年間返済額は651万円で、DSCRは1.35倍です。地銀の担当者はこのPLと、私の自己資本比率がのったBSをセットで支店長に上げます。BS側で見られているのは2点だけです。自己資本比率が20%を割っていないか、他行からの短期借入が積みあがっていないか。ここが薄いと、DSCRが基準を満たしていても稟議は止まります。
自己資本比率のかんたんな計算式もはさんでおきます。自己資本(現金+不動産評価額-負債) ÷ 総資産。この数字が20%を切ると、DSCRがどれだけよくても地銀は渋い顔をします。今すぐ手元の資産と負債を紙に書き出して、割り算してみてください。

💊 借入バランスの見直し処方箋
固定金利4%超えのこの局面で、あなたが今週やるべきことは3つです。
1つ目。いま持っている物件ぜんぶのDSCRを、上の早見表の計算式で今すぐ出してください。1.35倍を割っている物件があれば、それは次の融資の足を引っぱる「持病」です。
2つ目。固定と変動の借入バランスを確認してください。私の場合、法人14社のポートフォリオぜんたいで固定比率を6割に保っています。固定金利がここまで上がった局面では、新規の借入は変動に寄せる判断も選択肢に入ります。ただし変動一辺倒は次のセクションで話す「予後」のリスクを背負います。
3つ目。自己資金の積み増しでDSCRを底上げできないか、次の面談前に試算してください。私の1棟目の症例のように、700万円の積み増しでDSCR1.18倍から1.32倍まで押し上げられれば、それだけで稟議の通過確率は大きく変わります。頭金を厚くする判断は、目先の利回りを下げますが、通らない融資よりはるかにましです。
固定と変動、どちらに寄せるべきか迷ったときの目安も置いておきます。


🔬 予後、金利上昇局面のリスク管理
予後の話をします。固定金利4%超えが定着したこの局面で私がいちばん警戒しているのは、変動金利で組んだ物件の「デッドクロス」の前倒しです。減価償却が終わる前に金利上昇で手残りが細り、黒字倒産に近い資金ぐりにおちいる大家を、私は何人も見てきました。
レントゲンとおなじです。表面のPLが黒字でも、返済比率という骨格が細っていれば、次の金利上昇局面でかならず折れます。いまDSCRに余裕がある物件でも、半年ごとに計算しなおす習慣をつけてください。地銀の合格ラインは今後さらに引き上がる可能性があります。今この記事を閉じて計算を先のばしにすれば、次にあなたが地銀の窓口に立つ2026年秋、合格ラインはもう1.4倍に上がっているかもしれません。

❓ よくある質問
Q. すでに変動金利で借りている物件は、いま固定に借り換えるべきですか。
A. DSCRに余裕があるなら急ぐ必要はありません。借り換えには手数料と時間がかかります。まずは半年ごとの再計算を優先してください。DSCRが1.3倍を割りこんできたときが、借り換えを検討するタイミングです。
Q. 複数の地銀に同時に申し込んでもいいですか。
A. 私はおすすめしません。地銀どうしは横のつながりがあり、同時申込は「本気度が低い」と受けとられることがあります。1行にしぼってDSCRの数字をきちんと固めてから申し込むほうが、通過率は上がります。
Q. DSCRの計算に自信がありません。誰に相談すればいいですか。
A. まずは自分で早見表にあてはめて、ざっくりでいいので数字を出してみてください。そのうえで担当税理士や、取引のある地銀の融資担当に「この数字であっていますか」と聞くのが早いです。自分で一度計算しておくと、相手の説明のどこが省略されているか見抜けるようになります。
🗣 面談で実際に使えるセリフ
処方箋のしめくくりに、面談当日にそのまま使えるセリフを置いておきます。
・「うちのDSCRはいくつになりますか、いま出せますか」
・「審査金利は何%で計算していますか」
・「自己資本比率は何%を目安にしていますか」
この3つを順番に聞くだけで、担当者が数字で答えるか、あいまいにぼかすかがはっきりわかります。数字で即答できる担当者なら、あなたの案件をきちんと見てくれている証拠です。
まとめ、あなたが今夜やるべきこと
固定金利は4.15%まで上がりました。でも本当に見るべき数字はDSCR、1.35倍です。私の1棟目は1.18倍で落ち、700万円の積み増しで1.32倍まで押し上げて通りました。借入1億円なら必要な年間家賃収入は約780万円。この早見表を、あなたの物件に今夜あてはめてください。
あなたの物件のDSCRは、地銀の合格ラインを超えていますか。それとも、私の1棟目とおなじ「落ちる数字」ですか。コメント欄で教えてください。
今夜のうちに、手元の物件ぜんぶのDSCRを計算してください。来週の面談で担当者に「うちのDSCRはいくつですか」とだけ聞いてください。それだけで、相手の答えの質が変わります。これを知らないまま面談に行けば、金利の話ばかりで終わって、ほんとうの落ちる理由を最後まで教えてもらえません。
※本記事は筆者の投資記録と見解の共有であり、投資勧誘・助言ではありません。投資判断はご自身の責任でおこなってください。
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質問はコメント欄へ。すべてには返せませんが、多い質問は次の講義でとりあげます。
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【出典一覧】
・各行公表の住宅ローン金利改定資料(2026年7月)
・筆者の取引地銀・信金へのヒアリング記録(2026年8月時点)
・筆者の融資稟議記録(2019年〜2026年)
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