子宮頸がん検診・初級編〜産婦人科医が教える痛くない・怖くない受け方のコツ〜
こんにちは。産婦人科医・産業医の里井映利(さとい えり)です。
子宮頸がんの検査、何をされるかわからずに怖そうと避けてしまい、月日が過ぎてしまっている方もいると思います。今日は子宮頸がん検査が初めての方にもわかりやすく、初級編としてお話ししたいと思います。
1. 「怖い」と思うことは当たり前のこと
まずお伝えしたいのは、検診を怖いと感じるのは、あなたが自分の体をとても大切にしており、誰でも感じる感情であるということです。
外来では内診台に上がることに不安なこと・怖がってしまったことを謝られる患者様がいらっしゃいます。
知らない場所に身を置き、大切な場所を診察されるのですから、不安で怖くて緊張するのは当たり前。私自身でさえ、いまだに信頼している産婦人科医に定期的な婦人科検診をしてもらうときは緊張します。決してあなたが弱かったり、大げさだというわけではありません。
だからこそ、不安に思われている方、緊張されている方の場合は診察室で私はこのように声をかけるように決めています。
「無理だと思ったら、いつでもお伝えください。そうしたら、今日はそこでやめておきましょう」
検診は、私たちが無理やり行うものではありません。あなたの心と体の準備が整ってからで大丈夫です。まずは「相談」に行くくらいの気持ちで、ドアを叩いてほしいのです。
2. 検診の痛みを和らげる工夫(クスコのサイズ調整とゼリー)
「あの、膣を広げる道具が痛そう……」 そう不安に思う方も多いと思います。実は、診察で使う「クスコ」という器具には、皆さんが思っている以上にサイズ展開もあり、私たちの手で動かすため細かな工夫ができます。
サイズは豊富にあります: クスコには、実はSSSサイズからLLサイズまで、さまざまな大きさがあります。初めての方や、以前痛い思いをした方には、一番小さなサイズをリクエストして、慎重に進めることができます。
潤滑ゼリーを使うこともできます: 滑りを良くするためのゼリーを使用することで、挿入時の違和感や摩擦による痛みを最小限に抑えることができます。
カーテンは開けてもOK: 診察台の目隠しカーテンが、逆に「何をされているかわからなくて怖い」、「閉塞感が嫌だ」感じる方もいます。外国では目の前のカーテンがないことが多く、医師とアイコンタクトを取りながら診察を進めることが多いです。私の場合は緊張されている方の時に「カーテン開けておきましょうか?」とお声かけするようにしています。カーテンを開けて私の顔が見える状態で受けることで気持ちが和らぐ場合もあると思います。

診察中、力が入ってしまっている患者様には、カーテン越しにこう声をかけます。
「足の力を、ふぅーっと抜いてみてくださいね。抜いた方が、痛みを感じにくくなりますよ。」
もし不安なら、事前に「初めてなので、一番小さいサイズでお願いします」と伝えてみてください。診察する産婦人科医、介助に入る看護師はあなたの「安心」を第一に考えます。
3. 産業医として伝えたい「1分の投資」
私は産業医として、企業で働く女性たちの健康相談にも乗っています。バリバリと働き、プロジェクトを回し、プライベートも充実している。そんな輝いている女性たちが、ふとした拍子に立ち止まってしまう瞬間を何度も見てきました。
「仕事が忙しいから、検診は来年でいいや」
「今は体調も悪くないし、大丈夫」
「予約取りづらいから、とりあえずまた今度にしよう」
「自分の身体より、いまは仕事と子育ての両立で精一杯」
そう言って検診を後回しにしてしまう気持ち、痛いほどわかります。でも、産業医の視点から言わせてください。
あなたの積み上げてきたキャリアや未来を守るために、最も効率的な投資は、この「5分の検診」を受けることなのです。
子宮頸がんは、早期に発見できれば、子宮を残すことも、将来赤ちゃんを授かる可能性を残すこともできます。数年後のあなたの笑顔を守るのは、今日のこの一歩が必要です。
4. 私が忘れられない、ある患者様のこと
産婦人科医として、私には忘れられない患者様がいます。
ずっと検診を受けずに過ごされ、不正性器出血が続いてやっと来院され、来院時にはすでに進行したがんだったという方がいらっしゃいました。
人前に出るお仕事をされている方でした。
お腹に傷が残ることも、将来子供が授かれなくなることも伝えなければなりませんでした。「子宮を取る手術しか選択肢がない。」と告げられる過酷さ。中には、その事実を受け入れられず、民間療法を選び、最終的に緩和ケアへと転院された若い患者様もいらっしゃいました。
診察室で涙をする姿を患者様を今でも思い出します。
「もし、2年前に一度でも検診を受けてくれていたら」
「子宮頸がんのことを少しでも知っていれば」
と私は今でも心の底から思います。
だから私は、しつこいくらいに「婦人科検診に行こう」と言い続けます。
ピルの処方でしか定期的に来ることがない患者様にも伝えています。
5. エビデンスが語る「安心の理由」
最後に、科学的な事実(エビデンス)もお伝えします。
現在、日本産科婦人科学会のガイドラインでは、
20歳以上の方に2年に1回の細胞診(またはHPV検査を組み合わせた検診)
を推奨しています。
子宮頸がんは、正常な細胞が「がん」になるまで、通常数年という時間をかけてゆっくり進みます。つまり、2年に一度、正しく検診を受けていれば、がんになる手前の「前がん状態」で見つけることが十分に可能だということです。
「数年に一度、たった5分」。
この習慣が、あなたの人生を大きく守ってくれます。
結びに: 産婦人科はあなたの味方です
初めては誰にだって不安です。初めてでなくても自分の大切な身体に触れられて行う検査は不安に感じます。でも、その不安を一人で抱える必要はありません。
「まずは、お話からでも大丈夫です。」「行ってみて、ダメならまた心の準備ができてからにしましょうか。」 私はそのようにお伝えして、いつでもできるように診察室でお待ちしています。
本日の記事が頑張る女性の健やかさのためになりますように。
よくある質問集
Q1. 子宮頸がん検診は痛いですか?
A1. 個人差はありますが、多くの場合性交渉を経験している方であれば、「一瞬、違和感がある」程度で終わります。痛みに弱い場合は最も小さいサイズの器具(クスコ)を用意し、潤滑ゼリーを使用するなど、痛みを最小限に抑える工夫をしています。「痛いのが苦手」と事前にリクエストしてみてください。
Q2. 検査の途中で「やっぱり無理」と思ったら、やめられますか?
A2. はい、もちろんです。診察の途中であっても、不安や苦痛を感じたらいつでもご自身の意志で検査を中断することができます。今日は相談だけで終わりにすることも可能です。あなたの気持ちが一番大切です。
Q3. 忙しくて時間が取れません。検診はどれくらい時間がかかりますか?A3. 実際の検診自体は長くても5分程度で終わります。
2年に一度、このわずかな時間を確保していただくことが、将来の長いキャリアと健康を守ることにつながります。産業医の視点からも、お忙しい方にこそ「最短の健康投資」としておすすめです。
参考文献
日本産科婦人科学会:産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023
国立がん研究センター:がん情報サービス 子宮頸がん検診
厚生労働省:がん検診推進事業について
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