低用量ピルvs超低用量ピル 〜自分に合う種類の選び方〜
はじめに
ピル選びは「ライフスタイル」選び
現代の女性にとってのピルは単なる避妊薬ではなく、生理に伴うトラブルを解消し、QOL(生活の質)を最大化するためのパートナーともいえます。
なぜ比較が必要か
多くの種類がある中で、自分に最適なものを選ぶことが、副作用を抑え、メリットを最大限享受できる近道になります。
この記事の目的
産婦人科医の視点で、低用量ピルと超低用量ピルの違いを詳しく解説します。
そもそもピルとは
「ピル」という言葉はわたしが産婦人科医になりたての頃より随分と身近になりました。
でも、具体的に体の中で何が起きているのか、正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
ピル(経口避妊薬)を一言で表現するなら、「2種類の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が配合されたお薬」。
このお薬を毎日決まった時間に1錠ずつ内服することで、体内の女性ホルモン量を鎮め、一定に保ちます。すると、脳が「あ、今は自分たちでホルモンを出さなくていいんだな」と判断し、生理も最小限、卵巣からの排卵もお休みさせる仕組みになります。
排卵がお休みすることで、大きく分けて3つの変化が体に起こります。
1. 確実な避妊
排卵を止めることで、妊娠を希望しない時期を自分自身でコントロールできます。
2. 子宮内膜を厚くしすぎない
生理の出血のもとになる「子宮内膜」が厚くなるのを抑えるため、経血量が減り、ひどい生理痛(月経困難症)もだいぶ改善されます。
3. ホルモンの変動を穏やかにする月経周期に伴う急激なホルモン変化がなくなるため、PMS(月経前症候群)やニキビなどの肌荒れが落ち着きやすくなります。
つまりピルは、単なる「避妊の薬」ではなく、「ホルモンの波に振り回されている状態から、自分の本来の姿を取り戻すツール」となります。
そして本日の本題でありますが、現代の産婦人科医療において、ピルは低用量・超低用量ピルと進化を遂げ、副作用のリスクを最小限に抑えつつ、女性のQOL(生活の質)を守ることを実現してきました。
徹底比較: 低用量ピルと超低用量ピル
4つのポイント
① 「エストロゲン量」の違い
ピルの種類を決める最大の基準は、含まれている「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の量です。
• 低用量ピル
エチニルエストラジオール含有量が30〜35μg
• 超低用量ピル
エチニルエストラビオール含有量が20μg以下
この「わずかな差」が、体への負担や効果の現れ方に大きく関わります。一般的に、ホルモン量が少ない超低用量の方が、体への影響を最小限に抑えるよう設計されています。
② 「効果」の違い
どちらも改善効果がありますが、ホルモン量の違いゆえ効果も異なります。
• 低用量ピル
ホルモン量が安定しているため、生理に関連した不調がより抑えられやすいことと、「より確実な避妊」を希望する方に適しています。また、生理日をずらすなどの「周期コントロール」がしやすいのも特徴です。
• 超低用量ピル: 生理に関連した不調をもちろん治療できますが、低容量ピルよりホルモン量が少ないため、効果がマイルドになります。
③ 「血栓症リスク」の違い
ピル服用で最も注意すべき副作用が「血栓症(血管に血の塊が詰まる病気)」です。
• リスクの比較
どちらのピルも、適切に使用すれば過度に恐れる必要はありません。
しかし、エストロゲン量が多いほど血栓リスクはわずかに高まるため、超低用量ピルの方がそのリスクは低減されると考えられています。
• 重要なこと
どちらを飲むにせよ、医師の判断に従い、ガイドラインに基づいた血圧・体重測定など事前検査が大切になります。
④ 実際にかかる「薬代(薬価)」の違い
※症状があり、保険診療適応の3割負担時の目安。再診料・処方料等は別途。
•低用量ピル
ルナベルLD(先発):約2,500円
フリウェルLD(ジェネリック)約800円〜900円
• 超低用量ピル
ルナベルULD(先発):約1,700円〜2,000円
フリウェルULD:約800円〜1,000円
ジェミーナ:約2,600円〜2,800円
アリッサ:約1,500円〜1,600円(最もエストロゲン量が低い)
ドロエチ(ジェネリック):約800円〜1,000円
ヤーズ:約2,000円〜2,300円
ヤーズフレックス:約2,500円〜2,800円
④ 副作用の出方の違い(吐き気 vs 不正出血)
・ホルモン量が少ないため、飲み始めの「吐き気」や「頭痛」に関しては超低容量の方が出にくい。
・低用量ピルに比べると、飲み始めの「不正性器出血」の頻度が超低容量ではやや高くなる傾向にあるが、継続により落ち着くこと。
あなたに合うのはどっち?「目的別」選択ガイド
• ケース1: 確実な避妊と、生理日を旅行や仕事に合わせてずらしたい
→ 低用量ピル
• ケース2: ひどい生理痛やPMSを改善したい、副作用(吐き気)が不安
→ 超低用量ピル
• ケース3:ピルを長く飲み続けたいので経済的にも優しいものを選びたい
→超低容量ピルのジェネリック
長く安全に飲み続けるための「産婦人科医からのお願いしたいこと」
• 血栓症リスクへの正しい理解: 定期的な血圧・体重測定の必要性を知ってもらう(ガイドラインの遵守)。
• 可能なら「かかりつけ医」での対面診療: 上記の計測も含めオンラインでは難しい、身体の小さな変化をキャッチするプロセスについてもできたら大事にしてほしい。
番外編:自費ピル(避妊目的)に関して
生理痛の治療だけでなく、「自分の人生を自分でコントロールするために、確実な避妊をしたい」という方に選ばれているのが、自費診療の低用量ピル(OC;Oral Contraceptive)です。OCはエストロゲンであるエチニルエストラジオール含有量が30〜40μgと先ほど紹介した保険診療で適応されるピルよりも量が多く、避妊を目的に設計されています。
1. 数字で見る圧倒的な安心感「パール指数」
「パール指数」とは、100人の女性がその避妊法を1年間続けた場合の失敗率(妊娠数)のこと。

避妊なし:85
コンドーム(正しくない装着、破損なども含む):2-13
低用量ピル(正しく服用できた場合):0.073-0.3
超低用量ピル(正しく服用できた場合):0.41-2.98
この数字が示す通り、低用量ピルは現代において最も確実性の高い避妊法の一つです。エストロゲン量が超低用量よりも安定しているため、排卵を抑制する力がより強固に働きます。
2. 自費だからこそ、プロによる「安全」の確認を
避妊目的のピルは、病気の治療ではないため保険は適用されず、全額自己負担(1シート約2,500円〜3,000円程度)となります。
ここで一点、専門医として強くお伝えしたいことがあります。 最近はネット通販や個人輸入で安く購入される方も増えていますが、これは非常にリスクが高い行為です。
たとえ避妊目的であっても、血栓症リスク評価(血圧・体重測定)は治療目的の場合と全く同じく、絶対に省略してはいけないステップだからです。
ご自身の体質がピルに適しているか、安全に飲み続けられる状態か。それを専門医である主治医と対面でしっかり確認した上で、長く継続する薬の「安心」に繋げましょう。
まとめ:自分の体の「主導権」を握ろう
薬に振り回されるのではなく、自分の体調・ライフスタイル・目的に合わせて賢く選んで味方につけよう。
参考資料
本記事は以下の公的機関の情報に基づいて作成されています。
日本産科婦人科学会編「OC・LEPガイドライン 2020年度版」
日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)」
日本産婦人科医会「ピルと静脈血栓塞栓症」
国立成育医療研究センターhttps://www.ncchd.go.jp/kusuri/news_med/keikaku_ninshin.pdf
里井映利執筆記事「ピル(経口避妊薬)についての基本知識」https://tglc.jp/article/category-36/piru/seiri-itami-yawarageru.html
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個別の症状・治療については、必ず医療機関を受診してください。
