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デンシン2|||シン小説 no.072

その死体は、1年近くも放置されていた。

なのに、まったく腐っていない。

まったく腐っていない、というのは、少し言い過ぎたかもしれない。

死体は、マンションの一室で発見された。

そのまま放置されていれば、数日。

遅くとも、数週間で、腐敗臭がひどくなり、近隣からの通報で発見されるはずである。

ちなみに、マンションが超高級で頑強だったからではない。

よくあるマンション。
いうなれば、アパートに近い造り。

そこで、半ばミイラのようではあったが、人間の見た目をとどめて発見された。

検視の結果、死後、1年は経過していることが判明。

あまりに、怪奇であったため、マスコミには伏せられていた。

では、なぜ知っているのか。

それは、俺が発見したからなんだ。

発見したのは、先週のこと。

そのマンションの住人から、通報があった。

死体発見のではない。

「変な現象が多発している」

という、通報。

呼び出し音が鳴る。

ドアを叩く音がする。

開けても誰もいない。

そのうち、変な人影を、見た。

廊下を歩いていたのに、消えた。

幽霊なのではないか。

云々。

そういうときは、俺の出番なのである。

なにせ、俺自身、もうこの世にいないのだから。

人間は、そもそも脳からの電気信号で動いている。

詳細は、省こう。
長くなる。

なにかしら、重い思いを遺して逝く。

すると、その電気信号が、やたらと増幅され、その場に残ってしまう。

いわゆる残留思念というヤツだ。

俺は、それが『とんでもなく』重かったらしく。

大騒ぎのあげく、とある機器に収容された。

化け物は、化け物しか、倒せない。

残留思念は、さらに強力な思念と出会う。

すると、同調して吸収される。

か、負けて、打ち消される。

俺は、機器に収容されて以来、他に吸収されることも、打ち消されることもないまま。

他の残留思念を『帯電』し続けている。

気がつけば、まるで発電所のような、それなりの設備に膨れ上がっていた。

研究所のヤツらは、そんな俺を『デンシンくん』と呼んでいる。

発電所のようになってしまった俺は、前みたいに容易に移動出来なくなってしまっている。

なので、一部をスマホのようなモバイル端末に移して、捜査員と共に移動する。

強い残留思念に出会ってしまうと、対応できない。

が、捜索探索の段階では、それで十分。

話を、例の死体の事件に戻そう。

先週のことだ。

俺(モバイル)と、担当の女刑事は、マンションを訪れた。

この女刑事とも、もうだいぶ長い。

神社の生まれとかで、小さな頃から、視える子だったとかなんとか。

そのせいか、コミュ障を通りこして、おかしなところがあるらしく、巡り巡って、俺の担当になっている。

整えれば、それなりの見た目だろうに、いつもボサボサの髪、同じ服。

まぁ、コミュ障だろうが、おかしかろうが、俺には関係ない。

なにせ、俺自体がね。

おっと、また話がそれてしまった。

さてさて、と思っていると、小学生、それも低学年くらいだろうか。

女の子が話しかけてきた。

伝えたいことがあるという。

周りの大人たちに、頑張って伝えているのだが、一向に取り合ってくれないらしい。

その子が言うには、二階の一室に、閉じ込められている人がいる。

だから、助けてほしい、と。

そこに向かうと、例の死体があったというわけだ。

然るべきところに連絡して、捜査が始まった。

特に、おかしな現象も起きない。

俺は、例の女の子と話をすることにした。

どうやら、お母さんが帰ってくるのを待っているらしい。

いつも、出かけたまま帰ってこないというのだ。

何日も、下手すると何週間というときもあるらしい。

俺は、女刑事に、女の子と、その母親について調べてもらうよう頼んだ。

どうやら、とんでもないお母様らしい。

女の子が、赤子だったときに、ゴミ箱から見つかった。

青い大きな、フタをひねると閉じられる、よくあるアレだ。

たまたま、そのゴミ箱は漬物用だった。

隣のおばさんが、キムチを漬けていた。

そのおかげで、まだ息がある間に救出された。

朝晩、漬かり具合を確認する。

おばさんも、びっくりしたろうな。

キムチベイビー。

キムチは、赤子を産まない。

他にも、児相(児童相談所)に、いくつもの記録が残っていた。

どれも、まぁ、ね。

よくあることとはいえ、記録を聞いていて、あまり気持ちのいいものではない。

俺は、それはそれは、たくさんの悲惨な残留思念を取り込んできた。

そんな俺でも、これは。

相手は、まだ子供だ。

それも、まだ親の加護が必要な。

さぞ、無念だったろう。

いや、無念であることすら、わかってないかもしれない。

そう、見つかった死体は。

女の子……の残留思念は、あまりに強力だった。

生きていた頃の実体を伴うほどに。

モバイル状態の俺では、到底太刀打ちできない。

専用の機器に吸収し、研究所へ連れて行くことにした。

これで、とりあえず、このマンションの『おかしな現象』は無くなるだろう。

そうそう、死体の件。

それも気になるところだとは思う。

なにせ1年近く放置されていたのに、腐りもせずに、人間のカタチをとどめていたというのだからね。

ただ、俺の担当すべきところではない。

実体のある事件だからね。

たしか、棺桶に片足つっこんでる、元刑事がいた。

すでに認知症らしいが。

おかしな事件といえば、俺か、その爺さんの出番らしいから。




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