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泰夢(たいむ)のお話:100

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華恋の家に突然現れた怪しい人影……泰夢の緊張も高まります。
それでは、どうぞ!!

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 のどの所がキュウッとしまるような気がして、泰夢(たいむ)は少し息が苦しくなり、けれどもそのまま止めていることはできずに、ゆっくりと音を立てないように、口と鼻からそーっと空気をはいていく。
 キッチンのくもりガラスの向こうの人かげは、今はもうこっちをのぞいてはおらず、ドスドスという足音を立てながら、華恋(かれん)の家の前の通路を行ったり来たりしているようだった。
「…………かよ。
 ……がねぇ……だな。
 マジ……るぜ……じゃねぇぞ」
 ひとり言なのかスマホでだれかと話しているのか、そんな声がとぎれとぎれに聞こえる。
 大人の男の人の声だった。
 オバケやユウレイじゃなくて良かった……とちょっとホッとした泰夢だったが、そうなってくるとまた別の問題が持ち上がってくる。
(なんで、こんなトコに大人が来るんだ?
 ふつうの大人はみんな会社や仕事場に行っててさ、
 昼間は働いてるハズじゃんか……)
 もしかしたら、例えば電気やガスや水道なんかの確にんをする仕事の人なのかもしれない。
 それに、配送業者の人だったら荷物のとどけ先が本当にまちがいないかを確かめるために、こんな風に家のドアの前を行ったり来たりして見ることもあるかもしれない。
(でもさ、それにしては服がヘンなんだよなぁ。
 あんな色の服ってさ、フツーはどっか遊びに行ったり、
 旅行に行くときに着るヤツじゃん……)
 そういう働く人たちは、もっとしっかりとしたスーツや作業用のツナギなんかを着ていると思うのだが、そうではなくてふつうの━━くもりガラスのこちらからボンヤリと見えるかぎりだけれども、青や赤や黄色のハデな色の服を着ているようで、ちょうどそれは家族で海に旅行に行った時に、泰夢の父親が着ていたアロハシャツの感じによく似ていた━━服のようだった。
(だれなんだろう……)
 何となく、家の中にいるのを知られたらダメなような気がして、泰夢は息をひそめると、ゆっくりと音を立てないようにリビングからキッチン、そして、げんかんのドアに向かってしのび足で歩いていく。
 キッチンテーブルの所まで来た時に、ふと華恋をよんだ方がいいのではないかと思った。
 ここは華恋の家だし、近所に住んでいる人や知り合いのだれかがたずねて来たということもある。
 と、その時、ドアの向こうから声が聞こえた。
「……やっぱり、いねぇみたいだな。
 ってことは、チャンスか……」
 ドアをはさんでだったので、ハッキリとは聞こえなかったけれども、そんな事を言っているような気がした。
(━━━━?
 チャンス、ってなんだ……?)
 頭の中がグルグルとし、すーっとおなかの辺りが冷たくなった。
 ドアを開けたすぐ先にいる大人の男の人は、どうも泰夢が考えているような人たちではなく、何か別の目的があるのかもしれないと思った。
 もしその人が電気や水道などの確にんの仕事の人であれば、あまり『チャンス』とは言わないような気がする。
 物をとどけに来た配送業の人だったらなおのこと、受け取ってくれる人がいないのは、もう一度配達に来なくてはいけないので、残念だと言うのではないだろうか。
 近所の人たちにしてもそうだ。
 だいたいは何か用事があって家をたずねるはずだから、人がいないのを良い方に取る人はいないと思う。
(なんで、人がいない方がいいんだ?
 そんなのをチャンスって言うのなんてさ、
 もうドロボウぐらいしかいないじゃん……)
 うでを組んでまゆ毛をよせて、頭をグルグルと回す。
 どうやら、華恋の家の前にいるのはやっかいな人物かもしれなかった。
 そうだとしたら、華恋をよぶにしてもまずはどんな人なのか見ておいた方がいいような気がした。
 よりいっそう息をつめて音を立てないようにしながら、さっき土間にキレイにならべたクツにゆっくりとつま先を引っかけると、そーっとドアに体をよせてそこに付いているのぞきあなから外の様子をうかがう。
(…………)
 そこには、ドアの前を行ったり来たりする大人の男の人がいた。
 黒くて長いパンツと、青っぽい色に赤や黄色をした大きな南国の花がたくさんプリントしてあるシャツ━━泰夢の父親が着ていたシャツとおなじような感じなので、たぶんアロハシャツだろう━━を着ていて、後ろになでつけているかみの毛は金色だった。
(やっぱり……
 これってさ、絶対に仕事の人じゃないよな)
 レンズの前を右へ左へと歩くすがたも、せなかを丸めてポケットに手をつっこんでいて、どうも『良い人』のようには見えなかった。
 そうやって泰夢が見ている間もずっと通路を行き来し、時にはくもりガラスにハデなアロハシャツのすがたを落としながら、通路の行き止まりの方まで歩いていく。
 そこはさっき、泰夢と華恋が手すりから身を乗りだして出まどを見た場所で、もちろん何か確にするようなものもないし、荷物を置いておくようなボックスがあるわけでもなかった。
(……もしかしてさ、
 あの出まどんトコロからさ、
 こっちの部屋の中を見ようとしてるんじゃね?)
 もう泰夢の中では、そのアロハシャツの男の人は、完全にドロボウか何かのようになっていた。
 これはますますあやしいぞ……と、華恋にこの非常事態を報告しようとドアから体をはなした時、ガチャンガチャンという金属音とともに、さわっていないドアノブがグルグルとはげしく回った。
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アロハシャツを着た怪しい男……一体、何者なのでしょうか?
では、次回もお楽しみに!

小林るい


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