第15話|車両基地の上に、歓声は流れ込むか。
市川市の妙典地区。
ここには、
都市にとって欠かせないのに、
ほとんど「目的地」として意識されない場所があります。
東京メトロ東西線の「車両基地」です。

電車は毎日正確に走り続け、
都市の移動を支えています。
しかし、この場所そのものに、
人が訪れることはありません。
存在すら知られていないかも知れません。
観光地でもなく、
商業施設でもなく、
生活の目的地でもない。
それでも、確実に、
都市の機能を支えている大切な場所です。
もし、この上にサッカースタジアムがあったら
想像してみます。
いつもは静かに電車が整備されているその上に、
サッカースタジアムが立っている風景を。
試合の日。
その場所には歓声が響き、
色とりどりのユニフォームをまとった人々が集まってくる。
その下では電車が都市を支え続け、
その上では人が時間を共有している。
都市の機能の上に、
都市の感情が重なる。
それは一層の構造ではなく、
二層に重なり合う都市の姿です。
インフラの上に、人が集まる
サッカースタジアムは目的地です。
人が集まり、
時間を共有し、
喜びや悔しさを分かち合う場所です。
一方で車両基地は、
都市を支えるためのインフラです。
送り出す場所と、
集まる場所。
もしその二つが重なったとき、
都市の見え方が少し変わっていくかもしれません。
世界では、すでに始まっている
実は、
こうした発想は完全な空想ではありません。
アメリカ・ニューヨークには、
「ハドソンヤード」という巨大再開発地区があります。

そこでは現役の鉄道ヤードの上に人工地盤(デッキ)を整備し、
その上に高層オフィスや商業施設、アート建築、公園などを建設しました。
列車は今もその下を走り続けています。
「都市を支えるインフラの上に、
新しい都市機能を重ねる」
という実例です。
また、フィンランドのタンペレには、
鉄道路線の上に建設されたスタジアムがあります。
ノキア・アリーナは、稼働中の鉄道線路の上空に人工地盤(デッキ)を架けて建設された巨大な複合スタジアムです。

人が集まる場所と、
都市を支えるインフラ。
一見すると同居できないものを、
重ね合わせるという発想です。
もちろん規模も条件も異なります。
しかし世界に目を向けると、
「都市の裏側を、都市の表舞台へ変える」
その挑戦は決して珍しいものではありません。
都市を立体として考える

私たちは街を平面的に考えがちです。
住宅地。
商業地。
公園。
道路。
それぞれを別々のものとして捉えています。
しかし、都市は本来、
もっと立体的な存在なのかもしれません。
インフラの上に人が集まり、
その上に新しい価値が生まれる。
車両基地の上のサッカースタジアムという発想は、
そんな都市の新しい見方を教えてくれる気がします。
普段は見えない都市の裏側が、
街の誇りや記憶と結びつく。
都市は単純な平面ではなく、
層として成り立っていることに気づきます。
“都市の裏側”という視点
都市の多くは、
目的地と通過点で構成されています。
駅や商業施設は目的地。
道路や線路は通過点。
しかし車両基地は、
そのどちらにも属しません。
乗客はやって来ず、
電車だけが集まり、整備され、また送り出されていきます。
そこは、
人の流れの途中でもなく、
誰かが訪れる目的地でもない。
“都市の裏側”のような場所です。
しかし、表には現れないけれど、
都市のリズムそのものを支えている重要な存在です。
現実に立ちはだかる壁
もちろん、現実的に考えれば課題は多くあります。
・車両基地の上に大規模な構造物を整備できるのか。
・工事期間中の鉄道運行は維持できるのか。
・安全性やコスト、
・周辺環境との調和をどう図るのか。
どれも簡単に答えが出る話ではありません。
実現には、高いハードルがあるでしょう。
それでも想像する意味
「そんなの、できっこない」
そう言うのは簡単です。
確かに、実現は容易ではありません。
けれど、
当たり前だと思っている街の景色を、
少し違う角度から眺めてみることには、絶対に意味があります。
都市の中には、
まだ目的地になっていない場所があります。
まだ価値が語られていない場所があります。
そうした場所を見つめ直すことは、
街の未来の選択肢を増やしていくことにつながります。
当たり前だと思っていた場所が、
別の意味を持ち始めることがあります。
次回予告|河原番外地にスタジアムは立つのか
そして市川には、
もうひとつの“曖昧な場所”があります。
市川市でもあり、
市川市でもない場所。
千葉県でもあり、
東京都でもあるような場所。
行政の境界線に沿って存在する、
「河原番外地」という特殊な余白です。
次回は、
「河原番外地にスタジアムは立つのか」
というテーマで、
街と街のあいだに広がる余白について考えてみたいと思います。
■ NPO法人 市川市にJリーグクラブをつくる会
私たちは、
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を目的に、
スポーツ、交通、地域交流などを掛け合わせながら、
「地域の未来をつくる」
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過去のnote
「市川・松戸広域スタジアム構想」シリーズ
0話|スタジアムを作りたい、だけではない話 (全10話)
「フットボールツーリズム編」
第11話 | フットボールツーリズムという、街を豊かにする魔法 (全2話)
