見出し画像

配達員ろること2号 第3話『お金がない!』

第3話『お金がない!』

昼過ぎ。風もなく、めずらしく穏やかな日だった。
ろるこは料理を配達バッグに詰め、スタンドを蹴ってチャリにまたがる。

「さて、ドロップ行こ〜。時間も余裕あるし、今回ちょっと楽勝じゃん」

スマホを手に、お届け先の情報を確認する。
そのとき、画面に見慣れない文言が目に入った。

「……支払い方法?」

なんとなく気になって、その項目をタップしてみる。
表示されたのは、『1,240円』 の文字。

「え……これ、現金!?」

心臓が跳ねた。
ろるこはあわててホーム画面に戻って、左下の“設定”ボタンをタップする。

開いた画面の真ん中には、「現金払いを受け付ける」のトグルが、しっかりオンになっていた。

「……マジか。オンにした覚えないんだけど……」

記憶をたどる。
――そういえば、誰かが言ってた。「配達50件超えると自動でオンになる」って。

「やっば……てか、オフにしたらどうなる?」

焦りながらも、ろるこはトグルをオフに切り替える。
でも、表示は変わらない。さっきの案件には、まだ『支払い方法』『1,240円』の文字がしっかり残っている。

「……やっぱこれ、今さらオフにしても関係ないパターンじゃん……」

財布を確認する。
千円札が1枚、10円玉と1円玉が数枚だけ……500円玉がない……

「……しかも昨日、ちょっと衝動買いしちゃって……小銭すっからかんなんですけど……」

「……もし2,000円とか出されたら……お釣り760円……いや、それはさすがに……」

不安が、じわっと顔を出す。

——数十分後、目的地のアパート。

インターホンを押す指先が、少し震えていた。

「ウーバーでーす!」

ドアが開く。出てきたのは、若い女性客。

「あ、ありがと〜!……えっと、現金だったよね?」

彼女が差し出してきたのは、2,000円
金額表示は1,240円。

ろるこは財布を開き、顔を引きつらせる。

「すみません……お釣り、あんまりなくて……」

「あー、大丈夫です!チップってことで取っといてくださーい!」

——チップ?……あ、そういうこと?…助かった…

その瞬間、全身の力が一気に抜けた。
安心と、恥ずかしさと、情けなさと、よくわからない感情が全部いっしょくたに押し寄せてくる。

「あ、ありがとうございます……!」

笑うしかなかった。

ドアが閉まる。
その音が、やけに大きく聞こえる。

しばらくその場に立ち尽くしてから、ろるこは小さく漏らした。

「……マジで恥ずかしいんですけど……」

髪の毛が額に張り付いて、じわっと首筋が湿ってるのがわかる。
全然走ってないのに、変な汗をかいた気がした。

——公園のベンチ。

配達を終えたろるこは、コンビニのおにぎりをかじりながら、なんとなく落ち込んでいた。
空は少しオレンジ色が混じり始めていて、近くでは鳩が砂を突いていた。

その隣に、いつの間にかあの無言の配達員が座っていた。

(あー、2号さん。てかなんで隣にいんの)

スマホをいじりながら、いつも通りの無表情。
でも、なんとなく……見慣れてきた気がする。

少し間をおいて、ろるこはぽつりと話しかけた。

「……さっき、現金案件飛んできたんですよ」
「今日が初で……ピック終わってから気づいて、しかもお釣り足りなくて……」

言ってるうちに、ちょっとだけ笑えてきた。
どうせなら、ネタにするしかない。

彼は少しだけ顔を上げて、ひとことだけ返す。

「最初は、みんなそんな感じ」

「……やっぱ、あるあるなんですか?」

返事はない。
けど、ろるこはもうツッコミも追撃もしなかった。

彼はおにぎりの海苔を静かに巻き直しながら、
まるで“次の案件まだか”って顔で、静かにアプリ画面を眺めていた。

その沈黙が、ちょっとだけ優しく感じた。

“お金がない”って、ただ財布のことだけじゃなくて。
あたしにはまだ、経験も、余裕も、対応力もない。

でもまあ、ちょっとずつ、埋めていけばいいでしょ。
今日のあたし、ちゃんとがんばったよね? ……2号さん。


あとがき:初現金案件の思い出

ろるこが現金案件でテンパった今回の話、実は僕自身の体験をもとにAIに書かせたものです。

僕が初めて現金案件を受けたのは、ろること同じく、設定でオンにした覚えがないのに勝手に現れてて、しかも「支払い方法」って文字にドロップ先で気づいたという、よりやばいやつでした。
そのときの焦り方といったらもう……ろるこの気持ち、めちゃくちゃわかる。

ちなみに当時の僕はというと、働く気力ゼロ。
貯金も尽きかけてて(今もたいして変わらないけど)、
「マジで働かないと家賃払えん」って状態でウーバー始めました。
(とか言いながら、自転車のチェーンだけは新品に交換してた)

でも、ろるこはそうじゃない。
失敗しながらもちゃんと前に進もうとしてる。
だからこそ、お金に困る理由が欲しくて――2.5話で「推しグッズに散財」ってエピソードをAIに書かせました
好きな作品のグッズを買っちゃうのは、まあ仕方ないよね。うん。

ちなみに僕がウーバーを始めた頃(4年くらい前)は、配達50件を超えると強制的に現金案件が解放される仕様でした。
それを知らずに受けてしまい、5円玉がないまま10円を渡して「これで許してくれ」状態に。
ろるこのようにチップで取っといて、なんて言ってくれる優しい人はいませんでした。

今は東京で稼働してるからか、現金案件自体は減った気がするけど、
それでも体感7〜8割くらいのお客さんは「お釣りいいですよ〜」って言ってくれます。
そういうとき、ちょっとだけ報われた気がする。

というわけで、そんな体験をベースにAIががんばって書いた3話、
「はじめての失敗」をちょっとだけ笑えるようになる、そんな話になってたら嬉しいです。


※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

いいなと思ったら応援しよう!

2号 無理のない範囲で応援いただけたら嬉しいです。 チップはnote更新や資料費にあててます。 読んでもらえるだけでもありがたいっす。