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ショートショート『スクショシュシュシュ』


スクショシュシュシュ

「シュシュシュ」

3歳になる息子・レンが、スマホを覗き込みながら何か言っている。

「なあに?」

「シュシュショ」

「シュシュショ?」

「シュシュショ!」

……ああ、スクショか。
どうやら“スクリーンショット”のことを言っているらしい。

画面にはレンの好きなアニメキャラが並んでいる。
「ここ!」と指差すたび、僕はカシャッと音を立ててスクショする。

「シュシュシュ!」
レンは満足そうに声をあげる。

それからは、スーパーで見つけたアイス、
電車で見かけた赤い車、
公園で飛んでいった風船……。

そして、ときどき思いもよらないもの。
壁のひび割れ、アスファルトを歩くアリの行列、
水たまりに映った雲の切れ端。

「カシャ」
「シュシュシュ!」

保存するたび、息子の世界を少し覗かせてもらっている気がした。

気がつけば、スマホのアルバムはレンの「好き」でいっぱいになった。

大人にとっては何気ない瞬間でも、
レンにとっては“宝物”のようにキラキラして見えているのだろう。

夜、眠る前。
レンが布団の中で小さくつぶやいた。

「パパ、きょうもシュシュシュありがと」

僕はそっとスマホを置いて、レンの頭をなでた。
――心のスクショも、忘れないように。


あとがき

毎週ショートショートnoteの裏お題「スクショシュシュシュ」に参加させていただきました。

「スクショシュシュシュ!? 呪文!? これは難題だぞ…」と最初は頭を抱えましたが、ふと“子どもが舌っ足らずで言えてない場面”が浮かんできて、書き出しを「シュシュシュ」としてみました。

でも大人なら絶対わからない。じゃあヒントで「シュシュショ」!
けれど、子どもならまた「シュシュシュ」に戻ってしまう──そんなやりとりを想像すると自然に物語が転がり始めました。

そういえば、自分の娘は何歳まで舌っ足らずだったかな?と記憶をたどってみたのですが、思い出せない。
むしろ娘は早くからはっきり言葉を喋っていたように思います。

いちばん古い記憶は、寝かしつけで絵本を読んでやっているときに話しかけられたこと。
3歳だったか、4歳だったか──幼稚園に入る前だったか後だったか。

当時は仕事が忙しく、娘が幼稚園に通い始めるまであまり家にいなかったな…と思い出しながら、少し寂しさも覚えました。

今回の作品は、そんな記憶の隙間から生まれた小さな一編です。


ここまで読んでいただきありがとうございます。
もし心のスクショを撮っていただけたなら、スキ・フォロー・コメントで残してもらえると嬉しいです。

ちなみに、今は『配達員ろること2号』という連載も進行中。
フードデリバリーの現場をちょっと不思議に切り取った物語です。

Xでは配達の話や小説、AIイラストを発信しています。
気軽に声をかけてもらえれば嬉しいです。

※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

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