配達員ろること2号 第7.5話『配達員豚野郎と2号』

第7.5話『配達員豚野郎と2号』
夕方。
薄曇りの空の下、静かな公園。
背後には麻布十番の通り。店の看板と行き交う人の声が、ぼんやりと響いてくる。
2号は、ベンチに座っていた。
左手には、ろるこから受け取ったころるっくるのキーホルダー。
それをしばらく眺めたあと、無言で自分のバッグに付け直す。
そのとき──
「……あれ? 2号さん?」
聞き慣れた声が背後から響く。
振り向かずにいると、白いジャイロキャノピーが視界の端に入った。
──豚野郎だ。

「おつかれさまっす! え、今日このへんでやってたんすか?」
2号は返事をしない。ただ一度だけ、頷いた。
「あの……あれっすね、その……」
豚野郎が言い淀む。
視線は、2号のバッグに付けられたキーホルダーに向いていた。
小さな、でもよく目立つ──あのころるっくる。
(……あれ、ろるこのやつじゃなかったっけ……?)
一瞬、胸の奥がざわつく。
でも、そんな疑問は飲み込んで、笑ってみせる。
「なんか、似合ってますね! 2号さんのそういうとこ、意外と……可愛いっていうか……」
──地が出た。すぐに取り繕う。
「……いえ、なんでもないっす」
2号はスマホをいじりながら、小さく首を振っただけだった。
(……今日も、ろるこの話は出ない)
「2号さんって、ほんと変わんないっすよね。
昔から──誰にも心、見せないっていうか……」
どこか寂しげに、そう呟く。
返事はない。
「……あの頃、よかったっすよね。鳴らなくて、ただ並んで地蔵してて」
「俺が“そろそろ飯にします?”って聞くと、2号さん、決まって返すんすよ──」
「“まだ早い”って」
「……言ってくれる人、いなくなっちゃったから」

「……豚野郎」
低く、短く、遮られた。
ビクッと体が跳ねる。
2号は、ゆっくりと顔を上げた。
「──おまえは、稼げ」
それだけを言って、立ち上がる。
バイクにまたがると、エンジンが低く唸った。
豚野郎は、なにも言えず、ただその背中を見送る。
その黒いバッグに揺れるキーホルダーが、ひどく眩しく見えた。
(……ろるこ、か)
なぜか、その名前が口の中で転がる。
声に出したくなったが、出せなかった。
指が勝手にスマホを開き、
ろるこのプロフィールを開いて──無言で、いくつかの投稿に「いいね」を押す。
「……誰にも、渡したくないのに」
小さく漏れた声は、誰にも届かないまま、麻布十番の夕暮れに溶けていった。

あとがき
今回は久しぶりの豚さん登場回でした。
実は、豚さんのエピソードには別の展開を考えていたんですが──
いつもどおり、AIに今までのあらすじとキャラクター設定を読み込ませて、そこから話を作らせるところからスタート。
「よし、どうせまたボツだろ」と思っていたら(←失礼)、今回は想像以上に良かった!
そこからはもう、ほとんどそのまま採用しました。
僕が手を入れたのは、セリフをちょっと調整したのと、舞台を麻布十番に変えたくらいです。
物語のラスト、豚野郎が不穏な空気を漂わせているのが印象的でしたね。
彼が今後どう動くのか──実は僕にもまだ分かりません。
一読者として、続きを楽しみにしているところです。
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※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
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