短編小説『配達員オプチャの中の懲りない面々』#青ブラ文学部

配達員オプチャの中の懲りない面々
「うぇーい、12時間で7🥭凸
ま、ま、満足ぅ~」
──タイムラインを流れてきたその投稿に、思わず指が止まった。
投稿主の名前はモスキ。
「7万!?俺、13時間で3万もいってないのに……?」
ついプロフィールを開いてしまう。
そこには派手な宣伝文句が並んでいた。
今のフーデリ楽勝w
売上あげたいやつはオプチャに来い!
固定ポストには堂々とリンクが貼ってある。
ちょっと、入ってみるか……
名前は……2号でいいか。2号∞
2号∞さんが入室しました
コン
「あれ、2号さんってXで黒いフード被ったアイコンの2号さん?」
2号∞
「いや、違いますねw 他にも2号っているんです?」
コン
「別人ですか。お気になさらずに~」
モスキ
「2号、よろしく!」
──お、この人がモスキか。
いきなり呼び捨てでちょっと腹立つけど……。
2号∞
「モスキさん、よろしくお願いします。
あの、本題なんですがXのリザルト見ました。どうやったらあんなに稼げるんですか?」
モスキ
「稼ぎたいよな!」
2号∞
「はい!」
モスキ
「テクニックがあるんだよ。
モスキ流スーパーテクニック──略してスパテク!」
──くっそどーでもいい。
2号∞
「そのスパテク、教えてもらえるんですか!?」
モスキ
「んー、やっぱさ忠誠心って必要だよな!」
2号∞
「忠誠心!?」
モスキ
「そう、忠誠心!
俺が一言ここで言ったら即実行!
モスキート軍団って感じにしたいよね」
──厨二病か!?
2号∞
「例えばどんなことですか?」
モスキ
「いや、特にないんだけど……」
──ないんかいっ!
モスキ
「でも俺のXのポストを全部いいねするとかリポストするとか!」
──承認欲求お化け!?
モスキ
「2号!君はできるか!」
2号∞
「いや、稼ぎ方知りたいんですよね……そのためのオプチャでしょ?」
──あれ、返信途切れた……怒ったかな?
東京のラビ
「そのスパテクって要は解体でしょ?
大阪のラビさんが書いてる」
東京のラビ
「ほらこのnote」
──あ、速攻消された。
モスキ見てるのか……。
──あ、東京のラビ退出させられてる。
モスキ……器小さいのか。
他メンバー
「草」
他メンバー
「またかよw」
モチヲ
「てか、モスキさんのリザルト転載ですよね。豚野郎さんの」
──転載?豚野郎って、あの毎月100万稼いでる?
モチヲ
「今の東京でもさすがに何もない平日に出せるリザルトじゃない。
これ、先週の雨の日の豚野郎さんのリザルトでしょ?」
コン
「本当だ。豚さんのリザルトじゃん」
🐱🐱🐱!
「まじかよw
スパテクもパクりでリザルトもパクりかよw」
あ、オプチャ消えた。
「ほら見ろ、こうやって毎年毎年、新しい逸材が出ては消える。フーデリ界の風物詩や」
電話口のラビ爺は、子供がおもちゃを見つけたように楽しそうに語っていた。
「て、話があってん。おもろいやろ。なあ、2号聞いとんのか?」
「あぁ、聞いてるよラビ爺」
淡々と答える俺に、ラビ爺はますます調子づく。
「このモスキ、いったい何がしたいんやろな。
──ま、モスキもまたネタ要員や」
しばし間を置いて、ラビ爺がふっと息をついた。
「さあね。ラビ爺暇なんか?夜ピ始まるからもう切るで?」
「あ、待て……今おもろいネタあんね──」
プッ。
無情にも通話は切れた。
耳に残ったのは、短い切断音と、ラビ爺の笑い声だけだった。
用語解説
フーデリ:フードデリバリーの略。Uber Eatsや出前館など配達業界全般を指す。
7🥭:「7万超え」の隠語。単純に「7万」という意味でも使われる。
オプチャ:LINEオープンチャットの略。配達員が情報交換する場。
解体:2件以上まとめて依頼された配達のうち、一部をキャンセルして残りを配達すること。
→ その後に「追い」と呼ばれる追加依頼が入ることが多く、結果的に効率よく組み直せる場合がある。リザルト:配達の売上・件数・稼働時間などをまとめた結果。SNSにスクショで投稿されることが多い。
夜ピ:夜のピークタイム。注文が集中する時間帯で、その結果として単価も上がりやすい。
あとがき
青ブラ文学部に参加させていただきました。
今回のお題は「〇〇の中の懲りない面々」。
懲りない面々といえば──安部譲二さんの『塀の中の懲りない面々』。
懐かしいですね。今回出題されたお題もそこから拝借されたものでした。
タイトルの力が強すぎて「塀」しか浮かばない……(笑)
そんな折、配達界隈でちょっとした話題があったのでネタにしました。
最近は配達の仕事が繁忙期で『配達員ろること2号』の更新が止まっていますが、
今回の作品はその外伝にあたるものになります。
今回は「配達員オプチャの中の懲りない面々」というタイトルで書いてみました。
フーデリ界隈でよくある光景──リザルト自慢、承認欲求、軍団ごっこ……。
見ている分には面白いけど、実際に遭遇すると「うわぁ……」ってなるやつです。
もちろん、このお話はフィクション。
ただ、配達員をしていると「あ、これどっかで見たことあるな」とニヤッとする瞬間があるはず。
オプチャもXも、結局は人間模様。
稼ぎ方よりも、人間の欲や虚栄心の方がドラマになるのかもしれません。
今回ラストに登場するラビ爺は、配達界隈で話題のnote作者・らBさんがモデルです。
大阪時代の仲間で、LINE通話の雰囲気を再現しました。
ラビさんの思い出はまた本編で触れる予定です。
また、『ろるにご』に登場している猛者配達員・豚さんも、今回は名前だけの登場。
さらにオプチャのキャラクターはXのフォロワーさんに協力いただきました。
モスキさん、モチヲさん、コンさん、🐱🐱🐱!さん、そしてアドバイスをくれた皆さんに感謝します。
というわけで、懲りない人たちをネタにしてみました。
スパテクは伝授できませんが、スキ・フォロー・コメントをいただければ、
僕の承認欲求ゲージはモスキより確実に満たされます。
Xでは日々の配達ネタや小説、AIイラストなんかも気まぐれに投げているので、
「オプチャ覗くよりは安全そうだな」と思った方はぜひそちらもどうぞ。
配達界隈の繁忙期もそろそろ落ち着くので、止まっていた『配達員ろること2号』も再開予定です。
そのときはまた覗きに来てもらえると嬉しいです。
※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
いいなと思ったら応援しよう!
無理のない範囲で応援いただけたら嬉しいです。
チップはnote更新や資料費にあててます。
読んでもらえるだけでもありがたいっす。