配達員ろること2号 第4.5話『豚野郎、現る』

第4.5話『豚野郎、現る』
「ふー。今日の昼ピはまずまずだったかな…」
昼のピークが終わり、ろるこはいつもの公園へ足を運んだ。
「あれ?2号さん…?誰かいる?珍しい…」
ベンチの脇で、2号と思しき人影が誰かと話している。ろるこはそっと近づいた。
「あ、やっぱ2号さん。あ、こちらの方は…?」
「豚野郎」
2号はチラリとろるこを一瞥し、淡々と答えた。
「え?」
「だから豚野郎…名前」
「え?ええっ!?」

「はじめまして。豚野郎です」
そう言って、その男は人懐っこい笑顔を見せた。
「えええええっ!」
「豚野郎だから…」
男は柔らかく微笑んだまま繰り返す。
(あれ…目が笑ってない…)
「ろるこさん、ですよね?」
(え…私、名前言ってないよね…?)
男はそう言って、スマホを取り出し、何やら操作を始めた。

ブブッ
── 豚野郎さんにフォローされました
ブブッ
── 豚野郎さんがあなたのポストをいいねしました
ブブッ
── 豚野郎さんがあなたのポストをいいねしました
ブブッ
── 豚野郎さんがあなたのポストをいいねしました
……
「う、わ……」
ろるこは、止まらない通知の波に身震いした。
(え、なにこの人…怖……)
「あ、俺こう見えて猛者なんで。稼働のこととか色々教えられると思いますよ。参考にしてもらえれば」
豚野郎はそう言って、にっこりと笑った。
(ぜったい…参考にしたくない…)
ろるこは2号の方を見る。2号は無言で、静かにうなずいた。
ろるこはそっと2号に耳打ちした。
「ねえ…2号さん…私この人ちょっと怖い…」
懇願するような眼差しを向けると、2号はぽつりと答えた。
「心配するな」
「え?」
「やつはゲイだ」
「え?」
「女に興味ない」

「ええええええっ!?」
ろるこは豚野郎を凝視する。
「いやいや…俺ゲイじゃないっすよ?普通に女の子好きですから」
豚野郎は困ったように笑った。
「え……?」
ろるこは2号と豚野郎を交互に見つめた。
(え…なにこれ…私、担がれてる…?)
「どっちなの!?」

「じゃ、俺、そろそろ稼働戻るんで。また!」
豚野郎は笑顔のまま立ち上がり、手をひらひら振って去っていった。
── 無言になった公園。
「……」
「……」
「……2号さん…」
「……なんだ」
「本当に、あの人……」
「猛者ではある」
「そこじゃない……!」

あとがき『豚さんの思い出』
やっと、
ろること2号以外のキャラクターを登場させることができました。
実を言うと、3.5話で新キャラを2人登場させる予定だったんですが…名前の使用許可が取れずお蔵入りに。
しかもその話、挿絵まで作ってて公開直前だったんですよね…マジで悲しかったです(供養予定あり)。
で、本来なら豚さんもそこで登場予定だったんですが、当時はまだ“時期尚早”。
だって猛者配達員ですよ?配達の話しても、まだ新人のろるこがついていけない!
「解体?」「クジラ?」
──ろるこにはまだ早い。
そんなわけで、この“謎の登場回”が生まれました。
インパクト重視で、名刺代わりに豚野郎が爆誕。
ゲイなのか? ストーカーなのか?
いろんな意味で「何者なんだよ…」という怖さが滲み出てると思います。
さて。
この豚野郎というキャラ、実はろるこ・2号に続いて、現実の配達員がモデルになっています。
東京の配達員界隈なら知ってる人も多いはず。
毎月100万円近い売上を出し、
“解体”の妙技を駆使して、
どんな渋い日でも安定して稼ぐ──そんな猛者配達員です。
しかも今では、その解体技術をコーチングで教えてるので、
興味ある方は一度「豚さんのnote」、ぜひ覗いてみてください。
(※ガチで役立ちます)
僕と豚さんの付き合いも、気づけばもうすぐ1年。
1年前って、まだ調整金の時代で、「解体」がここまで浸透してなかった頃です。
そんな中、
豚さんは「解体して追いをつけると、調整金が跳ねる」っていう仕組みに気づいたんです。
──すごくない??
僕はそれを勝手に「豚野郎流・調整金詐欺」と呼びました。
もちろん愛を込めて……のつもりだったんですが……
めっちゃキレられました。
そして一時期、めちゃくちゃ疎遠になりました。
でも今では、笑って話せる関係に戻ってます。
むしろその件もネタにしてこうしてあとがきで語れるぐらいには。
そんなわけで、今後も豚さんはちょこちょこ登場予定。
どこか掴めない、でも間違いなく“強い”キャラとして、
ろること2号に新たな風を吹かせてくれるはずです。
それでは次回、第5話『待ちキャンのすゝめ』でお会いしましょう。
ありがとうございました。
※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
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