ショートショート『勘当ガイドブック』
「おめでとう。本日をもってお前は自由だ」
父が差し出したのは、一冊の薄い小冊子だった。表紙には『勘当ガイドブック』と銀の箔押しがしてある。
「勘当……って、本気?」
「ああ。我が家の伝統でね。二十五歳までに自立の兆しがない者は、円満に縁を切る決まりだ」
パラパラと捲ると、目次には『第一章:住民票の動かし方』『第二章:保証人不要物件の探し方』、そして『終章:法事での再会作法』と、驚くほど実務的な内容が並んでいる。
「これ、父さんが書いたの?」
「いや、先代から受け継がれ、時代に合わせて改訂している。QRコードを読み込めば、格安の引っ越し業者が手配できるぞ」
父は冷淡に見えたが、余白にはびっしりと手書きの注釈があった。
〈このパン屋の耳は安いが旨い〉
〈体調を崩したら、ここへ電話しろ。匿名で振り込む〉
「……これ、ただの自立支援マニュアルじゃないか」
僕が呆れて呟くと、父は窓の外を向いた。
「勘当とは、愛を技術でコーティングした最後の教育だよ。さあ行け。次はこの本を、お前の子供に渡すんだ」
あとがき
毎週ショートショートnoteのお題「勘当ガイドブック」に参加させてもらいました。
実は僕、妻子を捨てた失踪者なんですよ(笑)。
なので、最初はそれを活かして、失踪することを「逆勘当」と言い張る男の話を書いていたんです。
でも、ショートショートだと設定を盛り込みすぎて文字数が全然足りなくなっちゃって、諦めました(笑)。
次にお題そのまま、いっそのこと「ガイドブックそのもの」を書いてみよう!と思ったんですが……これが普通につまらない(笑)。
で、最終的にできたのが今回のお話です。
代々受け継がれた「勘当ガイドブック」を、なかなか自立できない子供に贈る究極の親バカの話。
「勘当」と「ガイドブック」の組み合わせ自体がかなり突拍子もない設定なんで、どう捻るかだいぶ難しかったですが、なんとか形になりました。
📕宣伝パート📕
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この「勘当ガイドブック」を読み終えたなら、もうあなたに教えることは何もありません。あとは自分の足で歩き出すだけです。
もし、この「マニュアル化された親子愛」に少しでも共感してしまったなら、ぜひ「スキ」を。
親の庇護から卒業して、さらに新しい物語の世界を覗いてみるなら「フォロー」をお願いします。
もし、あなたの家にも「これは勘当ものだ」と思うような変なエピソードがあれば、コメント欄でその「ガイドブックのネタ」をこっそり教えてください(笑)
現在、連載中のシリーズ『配達員ろること2号』も公開中です🚴♂️💨
今回の短編のような「システム化された家族」の形とはまた違う、現実の東京を走り抜ける男と女の、笑いと哀愁が入り混じる配達ラブストーリー。
効率を求める稼働の合間に見え隠れする、人間臭いドラマもぜひ覗いてみてください。
Xでも日々更新しています。
日々のフーデリ稼働という名の「生存報告」から、AIイラスト、小説の裏設定という名の「ボツ案の数々」まで、その時々の気分で垂れ流しています☕️📦🎨
フォローして、あなたのタイムラインにも心地よい“物語の断片”を混ぜてみませんか?
※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。
また、一部の描写は実在するXユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、
特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
いいなと思ったら応援しよう!
無理のない範囲で応援いただけたら嬉しいです。
チップはnote更新や資料費にあててます。
読んでもらえるだけでもありがたいっす。