短編小説『突風ソフトクリームチャレンジ』

突風ソフトクリームチャレンジ
さあ、やって来ました今週も!「突風ソフトクリームチャレンジ」の時間です!
ルールは簡単──風速30メートルの巨大扇風機の前で、ソフトクリームを食べきったら100万円!
ちなみに風速30メートルといいますと──屋外では立っていられないほどの猛烈な風!
電柱や樹木が倒れ、トラックすら横転する危険がある!
挑戦者のコーンを握る手は吹き飛ばされそうに震え、足は地面に縫い付けられたかのように一歩も動けない!
まともに呼吸もできない状況で、果たして完食できるのか!?
さあ、最初の挑戦者はプロレスラーのマッスル田中!
腕っぷしは誰にも負けない豪傑だが、ソフトクリームは溶けるのを待ってはくれない!
「うおおおおおッ!」
田中、暴風にあらがいながらコーンを高々と構える!
だが風圧で手ごと後ろに押しやられ、顔を近づける前にクリームは吹き飛んで空へ!
残ったのは空っぽのコーンだけ!
残念、失格~~!!

続いての挑戦者は東大の気象学研究員・佐伯博士!
彼女はなんと風洞実験用のゴーグルを装備して登場だ!
「ソフトクリームは乱流に弱い……だから、この角度なら!」
しゃがみ込み、風を逆算しながら一口を狙う!
しかし突風にあおられ、コーンが大きく揺れる!
次の瞬間、白い塊が渦に巻き上げられて鼻に直撃!
博士、無念のリタイア!

次に現れたのはお笑い芸人コンビ「ふらいんぐソース」!「俺らは風任せで生きてきた!」と豪語しての登場だ!
ひとりがソフトクリームを持ち、もうひとりが背後から支える二人三脚スタイル!
暴風に煽られ、必死に前進するものの──
「おっ、意外といけるぞ!」とボケ役が得意げに叫んだその瞬間、風にあおられて二人まとめて逆走開始!
気づけばスタート地点まで後退し、コーンにはクリームが一滴も残っていなかった!
会場は大爆笑!
だがチャレンジは失敗だ!

そして……最後の挑戦者が登場する!
小学生の少女、ハルカだ!
小さな手で必死にコーンを抱きしめるように持ち、風に背を向けてしゃがみ込む。
観客も審判も息を呑む中、彼女は震える両手でコーンを押さえ、体を風に預けながら少しずつ顔を近づける。
髪は容赦なく逆立ち、涙は風で横に飛び散る。
それでも彼女は諦めない!
口の中に一瞬だけ運ばれた冷たい甘さに、瞳がキラリと輝く。
風でクリームが削られ、次のひと口がさらに小さくなる。
だが彼女はその欠片を舌で追いかけ、逃さずすくい取る!
「がんばれ!」「あと少し!」観客の声援が会場を揺らす。
ひと口、またひと口──風と格闘しながら、彼女はついに最後の一滴まで食べきった!
数分後、ハルカの手に残ったのは、見事に空っぽのコーン!

「成・功ーーー!!!」
会場は総立ち!
司会者の声が割れるほどの歓声!
100万円のボードを掲げる審判に、少女はにっこり笑った。
インタビューでの言葉はあまりにあっけない。
「だって、風と一緒に食べたら冷たくて美味しいんだよ」
その瞬間、会場から声は消えた。
大人も子どもも、笑っていた芸人たちも、誰もが言葉を失っていた。
残されたのは、少女の笑顔と、巨大扇風機の轟音だけ。
まるで風そのものが、彼女の勝利を祝っているかのようだった。
あとがき
風まかせ文芸部お題「ソフトクリーム」に参加させていただきました。
実はもうひとつ、自分の中で裏テーマを決めてました。
それは「風」。
理由は単純で──“風まかせ文芸部”なんだから、やっぱり風を絡めたくなる。
そこで「ソフトクリーム × 風」と考えたときに出てきた答えはひとつ。
強風の中でソフトクリームを食べるチャレンジ。
YouTubeやバラエティでありそうな企画、それを小説に落とし込んでみました。
ちなみに最初は風速50メートルで書いたんですが、調べたら災害レベル。
死人が出るとんでもない数値だったので(笑)、現実的な30メートルに修正しました。
今回は挿絵も多め。
これは、飯を食いながら出力してたら気づいたら全キャラ分揃ってたので、そのまま採用しただけです。
今回のチャレンジを読んで「自分ならソフトクリームを死守できる!」と思った方、ぜひスキ・フォロー・コメントで風援(声援)いただけると励みになります!
普段は『配達員ろること2号』という連載で、バイクに乗って街を駆け回る物語を書いています。巨大扇風機は出てきませんが、タワマンやVIP優先配達など、ある意味で強風よりも過酷な戦場が待っています。
Xでは、日々のフードデリバリー話や創作の裏側、小説やAIイラストを気まぐれに発信中。風まかせに覗いてもらえれば嬉しいです。
※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
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