ショートショート『隕石の伯父さん』

隕石の伯父さん
庭に隕石が落ちた。
焦げた岩の裂け目から、伯父さんが出てきた。
「ただいま。ちょっと宇宙に用事があってね」
三年前に失踪した伯父さんだった。警察も捜したが、痕跡はなかった。
伯父さんは靴を脱ぎ、居間に座った。
「夕飯、まだあるかい?」
母は一度だけ伯父さんを見たが、何も言わなかった。
父はテレビの音量を上げ、妹は箸を持ったまま、小声で言った。
「……おかえりなさい」
伯父さんは煮物を食べながら言った。
「土星の環には猫が住んでる。逆さまに歩くから、足音が空に響くんだ」
誰も笑わなかった。
父はテレビを見つめたまま、ぽつりとつぶやいた。
「兄さん、俺が子どもの頃も急にいなくなったんだよな」
伯父さんは箸を置き、笑った。
「来週また隕石が落ちるよ。叔母さんが乗ってるかも」
翌朝、伯父さんはいなかった。庭の焦げ跡も消えていた。
母が座布団を片付けようとして、手を止めた。
「隕石の伯父さん、また来るかしらね」
座布団は、ほんのり温かかった。
あとがき
毎週ショートショートnoteのお題「隕石の伯父さん」に参加させていただきました。
隕石の伯父さん……お兄さんかあ、と最初はタイトルをそのまま眺めながら考えました。
隕石のように頑丈な伯父さん、隕石マニアの伯父さん、隕石を信仰してしまう伯父さん……いろいろな発想が浮かんでは消えました。
その中で一番しっくりきたのが「隕石に乗って帰ってくる伯父さん」でした。
もしそんな伯父さんが突然帰ってきたら、家族はどんな顔をするだろう。
三年ぶりに戻ってきた人間が、よりによって隕石から現れる。
嬉しさや困惑や恐れがないまぜになった、あの妙な沈黙を描きたくて書いたのが今回の作品です。
「隕石の伯父さん」という言葉には、どこか異物感やユーモアが漂います。
その響きを大切にしながら、非日常が日常に入り込む瞬間を切り取ってみました。
またふらりと帰ってくるかもしれない――そんな余韻を感じていただければ嬉しいです。
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伯父さんが隕石に乗って帰ってくるように、創作の世界もふいに再訪してくれる読者の声で続いていきます。
連載中の『配達員ろること2号』では、隕石ではなくバイクに乗って夜の街を駆け回る物語を更新中です。
配達と共に持ち帰るのは料理だけでなく、不思議な出来事や笑えるトラブルも。こちらも覗いていただけると嬉しいです。
またXでは、フードデリバリー稼働の合間に小説やAIイラストを発信しています。
「今日も隕石は落ちないけれど、タワマン案件は降ってくる」──そんな日常をゆるくシェアしていますので、ぜひフォローして遊びに来てください。
※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。また、一部の描写は実在するXユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
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