ショートショート『読書中毒除去手術』

読書中毒除去手術
「過剰読書症候群」──それは、想像力が暴走し、現実と虚構の区別がつかなくなる病とされた。
物語の中に現実を見てしまう。
現実の中に物語を見てしまう。
国はこの症状を「危険」と判断し、読書矯正制度を導入。
年間2000人以上が、想像力除去の外科手術を受けている。
13歳のアユミもその一人だった。
「こちらが手術室です」
白衣の医師が、薄く笑って言う。
壁は真っ白。窓はない。
その中央に、硬く冷たいベッドが横たわっていた。
「最後に、何か言い残したいことは?」
アユミは、しばし黙った。
そして、ふっと笑った。
「──ドラゴンの羽音が、まだ聞こえる」
医師の眉がピクリと動いた、その瞬間だった。
手術室の天井に、なにか巨大な影が走った。
照明が揺れ、空調が悲鳴をあげる。
「……なんだ今のは」
医師が振り返る。
だが、アユミはもう目を閉じていた。
その顔は、どこまでも静かだった。
天井の鉄板が、ギシリと鳴った。
まるで、ドラゴンの爪が降り立ったように。
その日以降、読書矯正施設の屋根に黒い爪痕が残されたという。
公式記録には載っていない。
だが、それを語る子どもたちは言う。
「想像力は、摘出できないよ。
だってあれは、翼だから」
あとがき
毎週ショートショートnoteのお題「読書手術」に参加させていただきました。
読書手術……ってなんやねん?と思いつつ、
「読書しすぎて想像力が暴走してしまう世界」を妄想してみました。
現実の中に物語が見えてしまう、物語の中に現実が入り込んでしまう──
そんな“過剰読書症候群”という名前を勝手に捏造して、
好き放題に書かせていただきました。
「想像力は、摘出できない」
これはきっと、創作をしているすべての人の心のどこかにある感覚かもしれません。
読書矯正手術のご予約は受け付けておりませんが、
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想像力でバイクを走らせる(?)配達SF連載
『配達員ろること2号』も公開中!
現実と妄想のはざまを駆け抜ける、ちょっと不思議でちょっとシュールな物語です。
Xでは、
フードデリバリーの話や、AIで生成した小説・イラストなども日々投稿しています。
空からドラゴンが降りてこない限り、たぶん更新中です。
※本作はフィクションです。
登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。
また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、
特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。
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