【第三十八度線の火──和平が世界を焼いた日⑧】
第七部
七月五日 — 管理された統一
中国は、朝鮮半島を併合しなかった。
その代わり、もっと巧妙な言葉を使った。
「暫定安定化」
「民族自治」
「戦争拡大防止」
「外部勢力の排除」
「人道回廊の保護」
平壌の新政権は、南北統一を宣言した。
国名は、朝鮮連邦共和国。
だが、その連邦政府の安全保障顧問団には、中国語を話す者が多すぎた。
港湾の管理には、中国企業が入った。
通信網の復旧には、中国製システムが使われた。
通貨安定には、人民元建て信用枠が提供された。
それは統一ではなかった。
それは、朝鮮半島の中国化だった。
釜山の韓国臨時政府は、これを認めなかった。
米国も認めなかった。
日本も認めなかった。
G7は緊急声明を出した。
「朝鮮半島における一方的な現状変更を認めない」
この言葉は、かつて台湾海峡で使われた言葉だった。
今、それは三十八度線の跡地に向けられていた。

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