【第三十八度線の火──和平が世界を焼いた日⑨】
第八部
七月七日 — 核拡散疑惑
イスラエルの情報機関が、ひとつの資料を米国に渡した。
それは、核弾頭そのものではなかった。
北朝鮮からイランへ渡ったとされる、設計情報、起爆関連技術、運搬技術、特殊素材、そして複数の中継企業に関する資料だった。
真偽は不明。
だが、真偽が不明であること自体が、戦争の理由になった。
イスラエル首相は演説した。
「二度目のホロコーストを待つことはできない」
イランは全面否定した。
米国は調査を求めた。
G7は非難声明を準備した。
だが、イスラエルは待たなかった。
七月九日未明、イラン国内の複数施設で大規模な爆発が起きた。
イスラエルは攻撃を認めなかった。
認めなかったことが、認めたことと同じ意味を持った。
中東和平は、二十二日で死んだ。

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