【ぺこ】ベイマックスは強い、と僕が言った夜から
この記事は、子どもの「こわい」に、毎晩どう向き合えばいいか
迷っている親に向けて書きました。
「強いから、守ってくれるよ」。
その夜、僕がぺこに渡したのは、嘘とも本当ともつかない、ひとつの言葉でした。
ぺこ(長女・7歳)は、前の日に怖い夢を見たそうです。
布団に入って、その夢を思い出してしまったらしく、「怖くて寝れないー」「また怖い夢見たら嫌だー」と、泣きはじめました。当時、6歳。
妹のもも(次女・4歳)は、その気になれば一人でも眠れる子です。でもぺこは、いまでも週に一回は「パパかママと一緒に寝たい」と言います。強がりに見えて、こういう夜は、まっすぐに弱音を出してくれる。
そういう子なんです。
泣いている子どもの前で、親にできることは、思っているより少ない。電気をつけっぱなしにはできないし、毎晩、隣で寝てやれるわけでもない。
だから僕は、言葉をひとつ、渡すことにしました。

そもそもベイマックスは、家族みんなで、家でぼーっと観ていた映画のキャラクターでした。
ぺこも、ももも、僕も妻も、なんとなくリビングに集まって、何度も観た。ぺこは感受性が豊かで、物語の途中の泣けるシーンで、声をあげて号泣したこともあります。
だからぺこにとって、ベイマックスは「知らないぬいぐるみ」じゃない。物語を一緒にくぐった、知っている相手でした。
その夜、僕がぺこの枕元に置いたのは、そのベイマックスです。
ここで、少しだけ種明かしをします。
ぺこの寝床には、ぬいぐるみがいくつかあります。お気に入りのペンギン、シャチ、子犬。可愛い系の子が多い中で、ベイマックスだけが、ちょっと違う。ぬいぐるみ達の中で、唯一、戦う描写があるキャラクターなんです。
「怖い夢を見るかもしれない」というのは、要するに暗示です。本人が自分にかけてしまった、ネガティブな暗示。
だったら、と僕は思いました。
ネガティブな暗示は、ポジティブな暗示で上書きすればいい。「強くて、戦えて、守ってくれる」やつが、隣にいる。そう思い込めたら、夢の中身は変わるかもしれない。
気合いで怖さに勝たせるんじゃなく、仕組みで安心を渡す。
それが、その夜の段取りでした。

翌朝、ぺこは言いました。
「怖い夢、見なかったよー」
それから、毎日ベイマックスと寝ています。
朝になると、ベイマックスとシャチとペンギンを、まとめてリビングに連れてきます。そして、タオルを布団に見立ててかけてあげて、それはもう、丁重に扱っている。守ってもらったお礼みたいに。
こういうとき、僕は思うんです。
僕がやったのは、たぶん大したことじゃない。ただ、言葉をひとつ、置き換えただけです。
でも子どもにとっては、その小さな置き換えが、「夜をひとりで越えられた」という、ちゃんとした実感になる。
段取りって、テクニックや時短のことだけじゃない。子どもが自分の足で立てるように、そっと支柱を一本置いておくこと――それも、段取りなんだと思います。

本当は、いつか一人で眠れるようになってほしい。そのための工夫を、これからも一緒に探していくつもりです。
でも、いまはまだ。
ぺこの要望で、寝室のドアは少しだけ開けてあります。リビングの音と、明かりが、細く廊下に伸びてくるように。無理に閉める必要はない、と思っています。
守ることと、手放すこと。
その境目は、たぶん、このドアの隙間くらいの幅しかないんでしょうね。
最後に、もし「子どもの夜に向き合う」という話を、もう少し読みたいと思ってもらえたら――
以前、僕は「夫は夜泣きに気づかない。僕も、そうでした。」という記事を書きました。
気づけなかった父親が、どうやって夜に向き合う身体になっていったか。
今日の話と、同じ夜の、もう一つの入り口です。
