夫は夜泣きに気づかない。僕も、そうでした。
深夜2時。
布団の中で、子どもの泣き声がした気がして、ガバッと起きました。
耳を澄ますと、隣の部屋で次女が小さく泣いています。布団から這い出して、暗い廊下を抜けて、次女を抱き上げる。背中をトントンと叩きながら、もう片方の手でミルクの準備をする。お湯を計って、粉を入れて、振って、冷ます。慣れた動作です。
30分後、次女は僕の腕の中で寝息を立てています。
——でも、6年前の僕は、こんな父親じゃありませんでした。
長女が生まれた頃の僕

長女が生まれたとき、夜泣きの対応はほぼ妻でした。
理由はシンプルで、僕は気づかなかったんです。
恥ずかしい話ですが、隣で長女がギャン泣きしていても、僕はそのまま寝ていました。朝になって妻から「夜中起きたよ」と聞かされて、「えっ、そうだったの」と返す。そういう夫でした。
「父親は夜泣きに気づかない」——よく言われる話です。
僕もずっと、そういうものだと思っていました。たぶん男性ホルモンがどうとか、脳の構造がどうとか、そういう生理的な何かがあるんだろうと。気づきたくても気づけない、そういう体質なんだろうと。
妻に申し訳ないと思いつつ、でも、変えられないものだと思っていました。
次女が生まれて、変わったこと
3年ほど前、次女が生まれたとき、僕は夜の対応をメインで担当することにしました。
正直、不安でした。長女のときにあれだけ気づけなかった自分が、急に気づけるようになるなんて思えなかったからです。
でも、次女が生まれた最初の夜から、僕は気づけていました。
明確に泣き出した瞬間、僕は目が覚めました。妻に起こされたわけじゃない。アラームでもない。次女の泣き声で、僕の身体は反応していたんです。
長女のときには、隣でギャン泣きされても気づかなかったのに。
驚きました。
そして、それは始まりに過ぎませんでした。最初は「明確な泣き声」で起きていたのが、数ヶ月もすると「ぐずる気配」で目が覚めるようになり、しまいには「ふぇ」という、たぶん1秒もないような小さな声でも反応するようになりました。
役割が変わった、その日から、僕の身体は変わり始めていました。
役割が、身体を変える
もうひとつ、面白い発見がありました。
次女のメイン担当を僕がやるようになってから、妻は、よく眠れるようになったんです。
長女のときは、僕が寝ていても妻はちゃんと起きていました。それが、次女のときは、次女がギャン泣きしても気づかず熟睡するようになったんです。
つまり、「夜泣きに気づくかどうか」は、生まれつきの体質や男女の違いじゃないんです。
役割の問題でした。
メイン担当を引き受けると、身体が変わる。逆に、役割を外れると、身体は休めるようになる。これは男女の差じゃなくて、責任の所在の話だったんです。
幻聴が聞こえる父親

次女が乳児だった頃、僕の身体は、たぶんいちばん研ぎ澄まされていました。
日中の雑踏の中でも、乳児の泣き声には反応していたんです。スーパーの賑やかな売り場で、別の家族の赤ちゃんの泣き声がすると、一瞬「うち?」と振り返ってしまう。
たまに、幻聴も聞こえました。仕事で集中しているとき、隣の部屋で泣き声がした気がする。確認しに行くと、次女はベビーベッドですやすや眠っている。空耳でした。
最初は「神経質になりすぎかな」と思っていました。でもあのときは、これでいいんだと思っていました。
気づける身体になったということは、いざというとき、すぐに動けるということだからです。
家事への見方は、変えられる

「夫は夜泣きに気づかない」は、半分は本当です。
実際、僕も気づきませんでした。そして今でも、メイン担当じゃない夜は、ぐっすり寝てしまうこともあります。
でも、もう半分は、変えられます。
「気づかない」のは、たぶん「気づく必要がない」と身体が判断しているからです。メイン担当を引き受けると、その判断が変わる。
意識が変わるんじゃなくて、身体が変わる。
これは、僕が7年の育児で見つけた、ひとつの事実です。
夜泣きの時期はとっくに過ぎました。それでも、いまだに子どもが強めに寝言を言っただけで、僕は目を覚まします。
家事への向き合い方は、変えられる。役割を引き受ければ、身体まで変わる。
そう信じてもいい話だと、僕は思っています。
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この続きで、「気づける父親」になるために 僕が辞めた3つのことを書きました。
