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持たざる者の石拾い|【狸の短編小説】

 土を覆う黒い層の亀裂に、乳白色の石がひとつ落ちていた。

拾い上げると指が沈んで、見た目にはない質量が腕の骨を軋ませる。

それを背中の麻袋へ落とし込むと、中で硬いもの同士がぶつかる音がした。

より一層袋の重みが、肩甲骨に食い込んでいく。

街の人間は道端に石を見つけると、顔をしかめて足早に通り過ぎ、誰も拾おうとはしない。

石拾いの役目は、いつからか俺だけのものになっていた。

連中は俺の背後で何かを囁くが、その声が耳に届く前に、袋の重みが思考を押し潰す。

袋の底で最も硬く最も冷たい、最初に拾ったその石が、常に俺の肩を押さえつけているのだった。


 路地の隅で、珍しく少女が一人しゃがみ込んでいた。

その震える指先が、地面に転がるビー玉ほどの石に触れようとしては、弾かれたように引っ込む。

彼女の頬を伝う涙が、石の隣に小さな染みを作っていた。

俺は少女の前に屈んで、その小さな石を無言で摘み上げると、彼女の嗚咽が止まる。

石を麻袋に加えた瞬間、肩を締め付けていた革紐が、ほんのわずか緩んだ気がして、久しぶりに深い呼吸が、肺の底まで届いた。

少女は何も言わずに去っていった。


 石を拾い集めるたびに、呼吸は深くなる。

袋の中では石同士が触れ合っていて、互いの熱を分け与えるように微かに鼓動している。

自分の体と麻袋が限界を超えようとしていた頃、最後の石を拾い終えて、街を見下ろす丘の教会へと向かった。

重い扉を開けると、祭壇の前で祈る老婆の背中が見える。

俺が祭壇の上に、そっと麻袋を置いても老婆は祈りを止めない。

やがて、麻袋の口がひとりでに開いて、中の石がひとつ、またひとつと浮かび上がった。

石たちは空中で光の粒子に変わって、ステンドグラスを抜ける月光の中へ溶けて消えていく。

最後に残った最も冷たい石も、静かな光を放って霧散した。

空になった麻袋を祭壇に残したまま教会の外へ出ると、街は穏やかな夕闇に包まれていた。

すれ違う人々は皆、軽い足取りで笑い合っていて、石を落とした跡ひとつ、どこにもない。

俺は自分の肩に触れても、骨に食い込んでいたはずの重圧を感じなくなった。

自分の手のひらを月光にかざすと、シワとタコだけの何も宿していない皮膚が灯る。

この街でただ一人、俺の手には石が生まれなかった。

空っぽの手のひらを一度強く握りしめて、そしてゆっくりと開く。

夕暮れの最後の光が、指の隙間を静かに通り抜けていった。


🔻以前に書いた元記事はこちら


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