見出し画像

朋誠堂喜三二の黄表紙3選!ももたろうで遊ぶ江戸の戯作

大河ドラマ「べらぼう」で、<オーミーを探せ>というキーワードとともに注目を集めたのが、尾美としのりさん演じる朋誠堂喜三二。ドラマを見ていると、彼の飄々としたキャラクターに引き込まれますよね。

◎喜三二のプロフィールは下記の記事で紹介しています。たくさんあるおもしろペンネームや平賀源内とのつながり、蔦重から原稿を催促されているユーモアあふれる黄表紙のワンシーンも紹介しているので合わせてぜひお読みください。

今後も、喜三二は蔦屋重三郎の本作りに協力し、遊び心あふれる黄表紙を次々と生み出していくことになります。
今回はその中から、特に笑えてハチャメチャな代表作を3つご紹介。江戸の人々が夢中になった物語を通じて、喜三二の愉快な世界を覗いてみましょう!



朋誠堂喜三二の黄表紙3選!


『見徳一炊夢(みるがとくいっすいのゆめ)』

喜三二 戯作『見徳一炊夢 : 3巻』,[蔦屋重三郎],[安永10 (1781) ]. 国立国会図書館デジタルコレクション

<あらすじ>
浅草に「邯鄲(かんたん)の枕」を貸し出すという店がオープン。なんと、この枕を使って寝れば、夢の中でこの世の栄華を極めることができるという。金持ちの息子・清太郎は家から金を千両盗み出して、長い夢を見られるという高額の枕を借りてしまうのでした。

夢の中での清太郎は、金は使い放題。二十代から六十代までの間、鎌倉や江の島、さらには京や大和(奈良)、大坂、四国、長崎まで旅を満喫し、各地の遊郭などで遊んで遊んで遊びまくります。遊女も身請けし放題、俳諧や茶の道も極め放題で誰からの追随も許しません。

七十になったところでふと旧家を思い出し、五十年ぶりに戻ってみると、百万両の身代と言われた大店も、いまや傾いて畳むところ。借金のかたに家財ぐるみ明け渡し、清太郎は髪を剃って再び諸国修行に出ることになります。

まるで夢から覚めたようだ、まさに邯鄲の夢だと悟りきったときに、清太郎は実際に夢から目覚めたのでした。

「さてさて、不思議な夢もあるもの。夢のうちに夢をみて、五十年の栄華をきわめて、この世は夢の世と悟って出家したが、そもそも邯鄲の枕を売る店もすべて夢だったとは」

清太郎は邯鄲の枕を売る店などというものが現れた最初から、すでに夢を見ていたのです。ちょうどそこへ注文していた蕎麦が到着。実は蕎麦が届くまでの、ほんのわずかな時間の夢のお話だったのでした。

<ミニ解説>
この作品は、朋誠堂喜三二と仲がよかった恋川春町の『金々先生栄華夢』(夢の中で江戸の遊郭を楽しみ尽くす)にアイデアを得て書かれた作品です。夢オチという点では『金々先生栄華夢』と同じですが、夢の中で江戸の遊郭だけでなく諸国を旅して楽しんでいること、さらに二重の夢の中にいたこと、という点がこの作品のポイント。また同じく春町の『高慢斎行脚日記』の影響もあると指摘されています。
蔦屋重三郎刊、全三巻。
※喜三二作品の絵は春町が手掛けることが多かったのですが、この作品の画工はどうやら不明のようです。


『親敵討腹鼓(おやのかたきうてやはらつづみ)』

喜三次 戯作 ほか『親敵討や腹皷 : 2巻』,[蔦屋重三郎],[寛政6(1794)]. 国立国会図書館デジタルコレクション

〈あらすじ〉
これはカチカチ山の後日譚。
昔々、ひかげ山でうさぎがお婆さんの仇であるたぬきを殺して大手柄となりました。

しかし、成長したたぬきの子がまた親の仇討ちを計画。猟師・宇津兵衛(うつべえ)を味方につけて、たぬきやむじな、きつね、うさぎなどの化け物仲間の会合に案内して撃たせますが、うさぎにばれてしまいます。逃げたうさぎは江戸・浅草観音でわが身の安全を祈願するも、帰り際に思わず「尻喰らえ観音」など失言をしたため、願いは帳消しに。

一方で、お婆さんの息子・軽右衛門は、うさぎの生き胆が主君の若様の天然痘を治す薬と聞きますが、お婆さんを助けてくれたうさぎと知って追えません。そこへたぬきから逃れたうさぎがやってきたので助けようとしますが、どたばたの結果、うさぎは切腹。その腹から鵜(う)と鷺(さぎ)が飛びたっていきます。「うさぎ=鵜と鷺」にかけたハチャメチャ展開です。ほかに猟師に殺された狐の話も絡んで、因果はめぐるよどこまでも。

<ミニ解説>
この作品の絵は、春町が担当。喜三二作・春町画というゴールデンコンビの作品です。当時流行の料亭や、江戸中期頃から江戸名物となった「鰻の蒲焼き」の発祥譚などが出てくるので、当時の人々にとっては昔話が現代によみがえったような楽しさがあったのかもしれませんね。蔦屋重三郎刊。全二巻。

『桃太郎後日噺(ももたろうごじつばなし)』

喜三二 作 ほか『桃太郎後日噺 : 2巻』,[鱗形屋孫兵衛],[安永6(1777)]. 国立国会図書館デジタルコレクション

〈あらすじ〉
こちらも昔話・桃太郎の後日譚。犬、猿、雉のほか、敵の大将・赤鬼の息子の白鬼もお供にして、打ち出の小づちほか金銀財宝をゲットして帰ってきた桃太郎。白鬼はなかなかイケメンなので、桃太郎が元服するのと同時に、角を削って人間のように元服させたのですが、これに嫉妬したのが、猿。

自分もついでにお願いしますというので、頭の毛を剃って月代を作ってみたけれどむさくるしいばかり。女中のお福はすっかり白鬼に夢中になってしまい、言い寄る猿を邪険にします。白鬼とお福はとうとう男女の仲になりますが、ねたんだ猿はこれを桃太郎に告げ口。当時は主人に隠れて使用人が勝手に恋愛をすることは禁じられていたので、白鬼は追い出され、お福と煙草屋を営むことになりました。

そんな二人のところへ、今度は鬼ヶ島から白鬼のフィアンセである鬼女姫が白鬼を探してやってきます。猿にそそのかされ、お福とバチバチに白鬼をとりあった二人は、やがて逃げ出した白鬼を追いかけて、安珍・清姫ばりの修羅場に…。

と、なりかけたところで、最後に版元・鱗形屋が登場して、「いつも本をお求めいただきありがとうございます。これからもどうぞご贔屓に」と安珍清姫のシンボルである釣鐘の中から現れてご挨拶。こんなメタフィクション(小説の中に作者や編集者が現れたりすること)も楽しめる、ドタバタラブコメディーです笑

<ミニ解説>
こちらも喜三二作・春町画のゴールデンコンビの作品です。誰もが知る桃太郎が鬼ヶ島から帰ってきた後のストーリーで、主役は桃太郎ではなく白鬼。最後のページに鱗形屋が突然現れて挨拶しだすのがかえって笑えます。こういうメタフィクションも、黄表紙の面白さのひとつ。喜三二大先生、まさか風呂敷を広げすぎてまとめきれなくなったわけではないですよ…ね?笑 鱗形屋刊、全二巻。

実はこの『桃太郎後日噺』という作品、私が黄表紙の名作を現代語訳した「黄表紙のぞき」という本に収録しておりますので、そちらで全文読むことができます。下記に試し読みとして冒頭数ページを掲載しておきますので、鱗形屋ではありませんが、続きが気になりましたらぜひ「黄表紙のぞき」をポチっとお求めお願い申し上げます。

<試し読み>

鬼ヶ島から白鬼を連れて戻ってきた桃太郎。


桃太郎の父と母に挨拶をするお供たち。下女のお福が酌をします。「見かけと違って心の優しそうな鬼さんだわ」とこの時から白鬼に恋した模様。
白鬼を父と母に紹介する桃太郎。白鬼は平伏している。
鬼ヶ島の戦利品である打ち出の小づちは、どれほど振ってもお金が出てくる。振りすぎてつかれてしまい、金にも見飽きたなどと猿が言っている。
雉は子供思いなので、小蛇をたくさんとって土産にして子供たちのところへ帰るという。
十六歳になった桃太郎は元服。ついでに鬼の角をそり、髪を黒く染め、月代も青く塗ってやる。名前は鬼の字をとって「鬼七」と名付けた。
白鬼の切り落とした角の痕が痛まないかと心配する桃太郎の母。鬼七の切り落とされた角は日本橋橘町にある薬種問屋へもっていけば珍しい品だと一本が十両ほどにもなり、これまた大喜び。これを見た猿が、うらやましがって自分も元服したいと願い出る。


猿も毛を剃ってもらうが、白鬼のように粋ではないとお福に嫌われる。猿が白鬼のようにしたがるのは、なんでも猿真似をするという意味とかかっている。


さて、ここからお福が白鬼に急接近。嫉妬深い猿がくやしがって話しはもつれていきます。
続きはぜひ「黄表紙のぞき」でどうぞ。
ぜひこのおもしろ黄表紙の世界をたっぷり味わってみませんか? 下記の記事へどうぞ👇


おわりに

以上、今回は朋誠堂喜三二のハチャメチャに楽しい黄表紙作品を紹介しました。
きっと大河べらぼうにも、こういった作品が登場してくるんじゃないかなと期待しています。
まだまだ朋誠堂喜三二の作品は黄表紙ほか、洒落本も狂歌もいろいろありますが、まずはこんなところで。

どの作品が一番気になりましたか?
ぜひコメントでおしえてくださいね♪

それでは、また~!

📚 関連記事

👉【保存版】黄表紙とは?江戸の絵本・コミック完全ガイド
あらすじ・作家紹介・作品解説など、黄表紙関連まとめ

いいなと思ったら応援しよう!

大和愛 江戸の面白ネタを掘り起こして発信中。サポートしてもらえると、さらに楽しい記事をお届けできます!