奨学金の金利が静かに跳ね上がっている
日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金は、大学生の約3割が利用している有利子の貸与型奨学金です。ここ数年、この金利がかなりのペースで上がっています。
どれくらい上がったのか
第二種奨学金の金利は、貸与が終了した月(多くの場合は卒業月)の利率が適用されます。利率固定方式の推移を見ると、こうなります。
2020年度卒業:0.157〜0.268%
2021年度卒業:0.161〜0.369%
2023年度卒業:0.537〜1.105%
2024年度卒業:1.110〜1.641%
2025年度(2026年2月時点):2.512%
5年前は0.2%前後だったものが、2.5%を超えました。利率見直し方式のほうも、2020年度の0.002〜0.005%から、2026年2月時点で1.700%へ。倍率で言えば数百倍です。上限の3.0%が視野に入ってきている。
「固定」と「見直し」の違い
第二種奨学金では、申し込み時に「利率固定方式」と「利率見直し方式」のどちらかを選びます。
利率固定方式は、貸与終了時に決まった利率がそのまま返還完了まで適用されます。途中で市場金利がどう動こうが変わりません。
利率見直し方式は、おおむね5年ごとに利率が見直されます。貸与終了時には低い利率が適用されやすいのですが、5年後に金利環境が変わっていれば、その時点の利率に切り替わります。
問題は、いま見直しのタイミングが来ている人たちです。2020年度に貸与が終了した人は、当時0.002〜0.005%という実質ゼロ金利で返済を始めています。その第1回目の利率見直しが2026年3月にやってきて、適用利率は1.3%に跳ね上がります。
なぜ上がっているのか
原因は日銀の金融政策の転換です。長く続いたマイナス金利が解除され、政策金利が引き上げられた。長期金利も連動して上昇し、それが奨学金の利率にも波及しています。
奨学金の利率は財投金利(財政融資資金の貸付金利)をベースに決まるため、国債利回りが上がれば奨学金も上がる。学生にとっては何の関係もない金融市場の話が、卒業後の返済額にそのまま影響してくる構造です。
この先どうなるのか
では、金利はどこまで上がるのか。
2026年2月時点で、日本の10年国債利回りは約2.15%。日銀の政策金利は0.75%です。野村證券や第一生命経済研究所などの予測では、日銀は2026年中にあと1〜2回の利上げを行い、政策金利は年末までに1.0〜1.25%に達するとみられています。
長期金利がさらに上がれば、奨学金の利率もそれに連動します。利率固定方式はすでに2.5%で、上限の3.0%まで残り0.5ポイント。2026年度に卒業する学生は、上限に近い利率で20年間返し続ける可能性がある。
見直し方式を選んでいる人にとっても楽観はできません。利上げ局面が続く限り、5年後の見直しでさらに利率が上がるリスクがあります。2020年度に0.002%で返済を始めた人が、2026年の見直しで1.3%になり、2031年の次の見直しでそれ以上になる。そういうシナリオは十分にありえます。
返済額はどう変わるか
月額8万円を4年間借りた場合、借入総額は384万円。返済期間20年で、具体的に比べてみます。

2020年度に卒業して固定0.2%で借りた人は、月々の返済額が約16,300円、利息総額は約8万円。ほぼ元本だけ返す感覚です。
2026年度に卒業して見直し方式を選んだ場合、最悪のシナリオはこうなります。貸与終了時の利率1.7%で返済が始まり、5年後の見直しで2.5%に上がり、さらに10年目で上限の3.0%に達する。この場合、月々の返済額は約18,900円から始まって最終的に約20,500円まで上がり、利息総額は約95万円になります。
同じ384万円を借りて、卒業した年が違うだけで利息の差は約87万円。月々の返済額も4,000円以上違う。新社会人にとってのこの4,000円は、決して小さくありません。
しかもこの利率は、入学時には分かりません。申し込み時に固定か見直しかを選ぶわけですが、4年後の金利なんて誰にも予測できない。いま入学する学生は、卒業時に利率がいくらになっているか分からないまま借りることになります。
知っておくべきこと
奨学金の金利には上限があり、どれだけ市場金利が上がっても3.0%を超えることはありません。また、成績や家計の要件を満たせば無利子の第一種奨学金を利用できます。2024年度からは給付型奨学金の対象も多子世帯に拡大されています。
ただ、これらの制度を入学前にきちんと理解して選べている学生がどれだけいるかは、正直なところ疑問です。大学の窓口でも、金利の仕組みまで丁寧に説明しているケースは多くない。
先日の記事でも書きましたが学費が上がり、金利も上がる。その両方が同時に進んでいることを、少なくとも知っておいてほしいと思います。
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