中東ナフサが74%減 半導体・医療品・自動車原料の「本当の危機」が財務省統計で明らかに
昨日まで3工場の話を連載してまいりました。今日は、その原料供給の実態に焦点を当て、数字と物理的事実に基づいて補足します。
ナフサは「同じもの」ではない
原油やナフサはすべて同一品質ではありません。
中東産原油から得られるナフサと、北米産原油から得られるナフサでは、抽出できる化学成分・中間原料が根本的に異なります。
北米ナフサ → レジ袋や百円ショップ向け汎用プラスチックに適する。
中東ナフサ → 半導体フォトレジスト、自動車電子部品、医療用ポリマーなど高機能材料の原料となる芳香族系成分に富む。
これは物理化学的な事実であり、代替が効きません。
問題は「総量」ではなく「中東産の割合」
これまでの議論で「ナフサ全体の輸入量は足りている」との指摘がありましたが、それは本質的な誤りです。
重要なのは中東産ナフサがどれだけ実際に届いているかです。
なぜなら、上記の通り、非中東産では先端材料がほぼ作れないからです。
財務省貿易統計が示す衝撃の数字(5月実績)
財務省の通関資料を基に、ナフサおよび原油輸入量を以下のとおり整理しました(単位:万kl)。
区分 中東産 非中東産 備蓄分
ナフサ購入 13 180 -
原油由来換算 66 11 8.7
これに各原料のナフサ転化率(中東16%、非中東19%、備蓄15%)を適用すると、実際に利用可能な中東産ナフサは約79万kl、非中東産は約169万klとなります。

平常時(2月)比で中東産は74%減少
驚くべきは、2月の通常輸入量と比較して、中東産ナフサが74%も減少している点です。
これはすなわち、日本で製造可能な半導体原料・自動車部材・医療用中間体の最大量が、約4分の3に激減したことを意味します。
各工場への影響
昨日までの3工場のケースに当てはめると:
デュレン(フォトレジスト基材)減 → フォトレジスト生産減
PMDA(ポリイミド前駆体)減 → AI半導体・スマホ用ポリイミド減
ベンゼン(ABF基板材料)減 → 高性能パッケージ基板不足
これらはいずれも中東ナフサ由来に大きく依存しており、非中東産では代替できません。
サプライチェーンは「1個欠けても完成しない」世界
半導体産業では、必須部材が1つでも不足すれば最終製品は作れないのが、物理的な生産則です。
下流の半導体工場、さらにはAIデータセンターに至るまで、連鎖的に停止リスクが広がります。
また、代替品の存在についても既に触れましたが、現時点で実用的な代替原料は存在せず、長期間の供給途絶は回復不能なダメージをもたらします。
日本の産業競争力・安全保障・医療体制を支える「縁の下の力持ち」である中東産ナフサ由来材料の供給が、今まさに危機的状況にあります。
この問題の本質をより深く理解していただくため、以下の書籍に詳しい解説を収めております。
ぜひこの機会にご一読いただき、今後の対策検討の一助としていただければ幸いです。
