見出し画像

『合魂‼』第2話 【創作大賞2024・漫画原作部門応募作】

「さて、再開といきましょうか!」
「ぐっ⁉」
 女子の振り下ろした魂棒を超慈は二本の魂択刀で受け止める。
「へえ? 細身なのに意外と力があるのね? ますます興味が湧いてきちゃったわ……」
「俺はどんどん引いているけどな! ふん!」
「む!」
 超慈は女子の魂棒をなんとか押し返すと、距離を取る。
「はあ、はあ……」
「休ませないわよ!」
「! 速い!」
「せい!」
 女子があっという間に距離を詰め、魂棒を横に薙ぐ。
「ぐっ!」
 鋭い一撃だったが、超慈はなんとかこれも受け止める。
「やるわね! ならば連続攻撃はどうかしら⁉」
「⁉」
「おらおらおら!」
 女子が魂棒を振り回す。
「ぐうぅ!」
 超慈は二刀流を器用に扱い、連続攻撃をどうにかさばく。
「えい!」
「どおっ⁉」
 女子の攻撃速度がわずかに上回り、受け止めきれなかった超慈は最後の攻撃を喰らって、吹き飛ばされ、またもや壁に打ち付けられる。
「ふふっ!」
「や、やっぱり、パワーで打ち負けるな……」
「よくやった方だけど、もうそろそろ本当に終わりにしましょう!」
「終わりって、冗談じゃねえよ……ってか、なにがどうなったら終わりになるんだ?」
 超慈は視線を姫乃に向ける。姫乃は肩をすくめる。
「知りたいか?」
「いや、そりゃあ知りたいでしょう!」
「合魂とは魂のぶつかり合いではあるのだが、相手の持つ魂力(こんりょく)を吸い取って、自らに還元……『お持ち還り』するのも大きな目的だな」
「魂力?」
「ああ、魂の力だ」
「それを吸い取られるとどうなるんですか?」
「吸い取られ具合にもよるのだが……大体は魂道具をしばらく発現出来なくなるな」
「……と、いうことは?」
「合魂には魂道具を持って参加することは出来なくなるな」
「……それはむしろ良いことなんじゃないか?」
 超慈は顎に手をあてて呟く。姫乃は淡々と呟く。
「まあ、どのように振る舞うのかは自由だが、魂力を吸い取られると色々マズいかもな……」
「マズい?」
「例えば何らかの後遺症が残るかもしれんな」
「え⁉ マジですか⁉」
「その辺はよく知らん。生憎、魂力を完全な形で吸い取られたことがないものでな」
 姫乃が両手をわざとらしく広げる。超慈が愕然とする。
「そ、そんな……」
「お話し中のところ悪いけど、これで終わりよ!」
「うおっ!」
「ちっ!」
 女子の振るった魂棒を超慈は横に飛んでなんとかかわす。
「こ、こうなったら勝つしかないってことかよ!」
 超慈の叫びに姫乃が頷く。
「まあ、そうなるな。その二本の刀であの女を打ち倒すしかあるまい」
「……出来れば女の子に手荒な真似はしたくない!」
「ほう、この期に及んでも紳士的だな……よかろう、少しヒントをやる」
「ヒント?」
 首を捻る超慈に姫乃が説明する。
「魂択刀とは『魂を選択する』刀……相手の魂の中心、いわゆるコアの部分を見極めて突けば、与えるダメージは最小限に抑えることが出来る。魂択刀はそれが比較的容易な魂道具だ」
「見極めるって……どうやって?」
「魂択刀を使ったことが無いものでな、さっぱり分からん」
「わ、分からんって……」
「あとは……」
「あとは?」
「気合で頑張れ」
「き、気合って⁉」
「人をほったらかして、盛り上がらないでよ!」
 女子が魂棒を振りかざしながら突進してくる。
「くっ、どうする⁉ ⁉」
 超慈が思わず片目をつむるが、その瞬間、女子の体の一部分が光ったように見えた。
「うおおっ!」
「ええい! ままよ!」
「⁉」
 超慈の振るった刀が女子の体の光った部分を突いた。超慈は無我夢中で叫ぶ。
「お、『お持ち還り』だ!」
「……」
 女子は倒れこむ。魂棒も消える。超慈が恐る恐るのぞき込み、呟く。
「や、やったのか……? ん⁉」
 体育館の照明がパッと明るくなる。いつの間にか壇上にいた姫乃が大声で告げる。
「そこまでだ! 最後まで立っていた者たち……合魂部へようこそ!」
「ええっ⁉ ……な、なんか気が抜けちまった……」
 超慈は気を失ってその場に倒れこむ。


「む……」
「お、気が付いたか」
 超慈にとって聞き覚えのある声が聞こえてくる。部屋の照明の眩しさに目を細めながら超慈は口を開く。
「その声は……仁か?」
「ああ」
「ここは?」
「医務室だよ」
「そうか……お前、なんでこんなところに?」
「い、いや、そんなことはどうでもいいじゃねえか。それよりお前大丈夫かよ? しばらく気を失っていたんだぞ」
 超慈は体を半分起こしながら、片手で頭を抑えて呟く。
「気を失うなんて初めてだ……」
「いわゆる『魂の詰めすぎ』というやつだな」
「あ、部長さん……」
 医務室のベッドの近くに立っていた姫乃の存在に超慈はようやく気付く。
「魂力をまだ上手く使いこなせていないのだから無理もない話だが」
「なんか、すいません、ご迷惑をおかけしてしまったみたいで」
 超慈は頭を下げる。
「気にするな。よくあることだ」
「よ、よくあることなんですか……」
「それよりその二人にお礼を言っておけ、ここまで運んでくれたのだからな」
「え?」
 姫乃はベッドの傍らに座る仁と離れた壁際によりかかるマッシュルームカットの亜門を杖で指し示す。仁が笑う。
「へへっ、結構重かったぜ」
「全くだ、もう少し痩せろ、ナード……」
「ナ、ナードじゃねえよ! で、でもありがとな、二人とも……」
「ぶひっ⁉」
「えっ⁉ き、君は……」
 超慈が反対方向に向くと、少しウェーブのかかったロングの金髪で短いスカートをはいたギャルが座っていた。ギャルは俯いて口元をおさえながら小声で呟く。
男同士が不器用ながらも友情を育んでいく感じ……尊い……
「え? 鬼龍瑠衣さん……だよね? 介抱してくれていたの?」
「ウ、ウチは保健委員でござるから当然のことでござる!」
「ござる連発⁉」
「まだ委員を決めていないだろう……つくならもっとマシな嘘をつけ……」
 亜門が呆れたように呟く。
「と、とにかく、無事に目が覚めたようで何よりニン!」
「ニンって!」
「拙者、もといウチはこの辺でドロンさせていただくでござる!」
「え⁉」
 瑠衣が立ち上がると、両手を合わせ、両の人指し指を立てて、なにやら叫ぼうとする。
「はっ!」
「待て」
「ぐえっ!」
 瑠衣の襟に姫乃が杖を引っかけ、引っ張った。瑠衣が体勢を崩す。超慈が問う。
「だ、大丈夫?」
「や、やばたんでござる……」
「は、はあ……」
「キャラが迷子になっているぞ。まあ、その辺は勝手にすればいいが……それよりもお前らには改めて言っておくことがある」
「言っておくこと?」
 姫乃が咳払いを一つして口を開く。
合魂部へようこそ!
「⁉」
「今年は4人か、なかなか優秀だな。歓迎するぞ」
「え、えっと……」
「ああ、この入部届を提出しておいてくれ。面倒だろうが決まりなのでな」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「ん?」
 用紙を配ろうとした姫乃の手が止まる。超慈が尋ねる。
「きょ、今日は入部説明会だったんじゃありませんか?」
「ああ、そうだな」
「ま、まだ入部すると決めた訳では……」
「む……そうなのか?」
 姫乃が超慈以外の三人の顔を見る。仁たちが口を開く。
「まあ、話が急過ぎるかなって……」
「戸惑っているでござる……あっ、意味不って感じー?」
「もう少し様子を見たい……」
「……そうか、そういうことならば致し方ないな」
 姫乃は意外とあっさりと引き下がる。超慈が面喰らう。
「い、良いんですか?」
「無理強いをする気はない。ただ……」
「ただ?」
「これも何かの縁だ。全員RANEを交換しないか?
 姫乃が端末を取り出して微笑む。
「は、はあ、まあ、それくらいなら……」
 超慈たちは姫乃の求めに応じる。
「……ありがとう。今日はもう遅い。気をつけて帰りなさい」
「は、はい……失礼します」
 超慈たちは医務室を出て帰路に就く。超慈は仁と並んで歩く。仁が呟く。
「いやあ、なんていうか、怒涛の一日だったな」
「ああ、だが、華のハイスクールライフ、こうでなくっちゃな!」
「ま、前向きだな。気絶していたのに……」
「……2人だぞ」
「え?」
「中学3年間で1人しか出来なかった女子とのRANE交換! 初日でいきなり2人と交換出来たんだぞ! 上々のスタートだ! これを喜ばずしてなんとする!」
「あ、ああ……」
 超慈の言葉に仁が目頭を抑える。
「なんだ仁? ひょっとして泣いてんのか?」
「いやいや……目にゴミが入っただけだ……可愛い女子2人で良かったな」
「大分癖があるがな……この際贅沢は言わねえ。それにしても……」
「ん?」
「他の奴ら、俺が倒した女子とかはどうしたんだ? 無事なのか?」
「ああ、なんか謎の黒子衣装の集団が現れて、別の医務室に連れていったみたいだぜ」
「謎の黒子衣装の集団……深くは突っ込まない方が良さそうだな」
「そうだな……あ、俺こっちだから」
 仁が別方向を指し示す。超慈が首を傾げる。
「え? お前も学生寮じゃないのかよ?」
「俺は下宿なんだ。また明日な」
 仁と別れて寮に戻った超慈はすぐさま眠りに落ちる。そして、翌日の昼……。
「部長さんからのグループRANEだ……広場に集合……改めて勧誘か?」
「覚悟!」
「ええっ⁉」
 見知らぬ生徒からいきなり斬りかかられて超慈は驚く。
「ふん!」
「うおっ!」
 突然の攻撃を超慈はなんとかかわす。
「ちっ!」
「な、なんだ⁉」
 超慈は距離を取って、襲撃者をよく観察する。赤く光る刀のようなものを持っている。自分と同じ制服を着ていることから見ても、愛京高校の男子生徒だろう。
「……今度は外さん」
「ひょ、ひょっとして……!」
 端末が鳴る。取り出してみると、姫乃からの通話通知である。超慈は通話をオンにする。
「……お忙しいところ恐縮だ」


いいなと思ったら応援しよう!